第33話善いと思ったことは一通りしておこう。

 妹が夫にいじめられている、夫婦仲が危うい。

 夫婦喧嘩をすると、長男が妹を庇って蹴られたりしたらしい。

 それを長女が見て、周囲の人間に言いつけるから、ほうっておけない。

 しかし、わたくしは妹宅へは出入り禁止である。

 何故だかは知らない。

 わたくしが媚を売らないせいだ。

 お世辞を言わないので、気にくわないのだろう。

 実際、妹が結婚した当時は、毎日のように家事を手伝ってくれて、妹は夫を褒めちぎったそうである。

 だが最近は褒められることがないせいで、一日にゼルダの伝説を三時間以上プレイしているという。

 仕事がないのだ。

 仕事で充実していないから、ゲームクリアで達成感を得ようとしている。

 しかし仕事にならないのは、だれもが福祉タクシーを利用したいと思う時期に限ってキャンプに出かけて散財しているせいだと母は睨んでいる。

 わたくしは、もとから妹と別れるつもりで、稼ぎを使っていれば文無しだから、養育費を支払わなくていいと思ってるんだろうと受け取った。

 妹が「もう別れる」という一言を喧嘩のときに言い放った。そのときからやさぐれどあいが増したのではと思う。


 わたくしは妹に自信を取り戻してもらおうと、励ましのつもりで手紙を書いた。

 母は「手紙なんて書いたら、旦那が見て怒る」というが心配はない。

 わたくしは妹の美点を箇条書きにしただけ。母も確認してこれならいい、と言った。だから、わたくしは今からこれを届けにいく。

 母の車に乗って……。

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