第32話ビバ! 祭!!
地区のお祭りに行った。
わたくしは大部分の時間を甥っ子のKくんと一緒に過ごした。甥っ子は下から二歳~七歳まで、四人いる。姪っ子も一人いるのだが、こちらは砂場で安全に遊んでいるので問題はない。
かといってKくんに問題があるわけではないのだが……広場の一角にある噴水と人工の小川で、葉っぱを流して、浅瀬でひっかかるたびに身を乗り出して葉っぱを拾い、またスタート地点から流す、ということをしていて、親でさえつきあわない遊びにわたくしはつきあう。
やれ、「大きな葉っぱがいい」「平べったいのがいい」「小さいのが途中でひっかからない」「粉々にしたら流れる」「ボートみたいなのがいい」と一回一回、研究しながら何度も繰り返している。小川を流れてきた花びらをギリギリまで体を乗り出して拾おうとするので、わたくしはそのたんびにKくんの体を後ろから抱くようにして押さえていた。
なにせ、Kくんは左腕を骨折して三角巾でつっているのだ。
それでも快活なKくんは、クリスマスリースの手作りに挑戦。わたくしも便乗。しかし、帰り際にビーズの人形やら手作りのカゴやらを欲しがられてもわたくしはお小遣いがすでにない。理由は後で話すが、そうおもしろいもんでもない。
なんにも知らない人に、子供にわいせつ行為をしていると思われたらいやだな、とは思ったけれど、母も妹たちも、わたくしを子守り要員として連れてきたのは明白だった。
なにせ、誘われたのが当日だ。ゆっくりしようと思っていたのに子守りに狩り出されたわたくし。
二人の妹たちがやれ友達が舞台でけん玉を披露する、と舞台にさそう。甥っ子は小学校へあがってからというもの会えなかった幼馴染を見つけてはしゃいでいた。
出し物はUSAで踊りながらけん玉をするというもの。流行りの曲に詳しくはないが、ダ・パンプがTVで歌っているのを見た。アメリカに媚びてるのかと思ったけれど、ふりつけが楽しい。しかもけん玉を落さないように踊るのだ。これは愉快だ。
さて、出し物を見てから一同は屋台に並ぶのが常だが、わたくしはお腹がすくと見物どころでない上に、並ぶのが好きでないために、祭りに到着した時点で準備が整いましたと期待して呼ぶ声にさっと並んでほぼ一番乗りをする。この時点でお小遣いは底をついたのであった。
しかし例外はあるもので、広場のほぼ中央でそろいの上着を着た中学生が「炊き込みご飯いかがですかー!」と声を限りに叫んでいるのを見ると、がんばってねと応援の意味で買ってしまう。かわいいのう。
「ずっと立ちっぱなしなの? いい顔してるね。ありがと、どうもね」
言って、食べ終わった後、
「おいしかったよー」と10M離れたところから挨拶する。
ところで、わたくしはここ数年、クリスマスには新しいリースやトップスターやツリーを買うのだが、その催し物では手作りできるリースが三百円で売っていた。
これはと思ってKくんの後をついていって、自分も参加した。
土台になる木枠はできていて、赤や青、金色のリボンがまいてある。それに金銀やラメ入りのマツカサや金銀のスプレーを施したどんぐり、あとボタンなどが提供されたので、木工用ボンドを使ってくっつけてアレンジしていく。
片腕が不自由な状態のKくんはなかなかセンスがあると見えて、そのできばえは売り物のようだった。でもわたくしも負けてはいなかった。ボンドがうまくつかなかったところは、ワイヤーで補強してもらった。大層気に入った。早速部屋に飾った。
家に帰ったら、Nくんが、わたくしのコルクの蓋のついたメイドインイタリーの、茶葉いれをもって、
「ほしいなー、これほしい!」
と六歳児らしくいうので、だめ、それわたくし気に入ってるの。とは言わず、
「ほしいほしいといっていればなんでも手に入ると思わないほうがいいよ」
と言った。親戚の子供たちが集まっている場所で、おおっぴらに、
「お目が高いね、いいともNくんにあげよう」
とは言えず、実は他の子がいない場所でおねだりしてほしかったのだが、示しがつかないので説教になってしまった。
そうしたら、その場に居合わせた下の妹が、
「そうだよ!」
と強く同意した。その妹は、子供たちに質素倹約を説き、しつけているから子供がかしこい。
Nくんは見かけが大人びてはいるのだが、中身が年相応に幼いので、周りへの影響が考えられないらしい。
まあ、ビンはスペアがあるので(さすがにスペアのスペアはないが)飴玉をつめて、クリスマスプレゼントにでもするか、考え中である。こっそりね!
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