第29話おばあちゃん……じょぼぼぼぼ!

 祖母が作業中に階段下から名指しでわたくしを呼ぶので、手を止めて階下に向かって叫んだ。

「シャワーが出んとたい」

 可能性は、給湯器のスイッチが入ってない、が一番多い原因。

 なんど、同じことで呼ばわれたかわからない。

 風呂場に行って見ると、案の定だった。

 しかしスイッチを入れてもシャワーが出ない。

 カランとシャワーのつまみが中途半端にひねってあるので、いけない、と思い、カランにひねったら、水が出た。

 なんだ。思いっきり水道栓がひねってあるぞ?

 しかも思いっきりひねったようで、栓が動かない。

 しかたなく、つまみをシャワーにしたら、ノズルが床に放りだしてあったので、なんと、わたくしのワンピースの中に放水。

「くっくっく」

 笑い声がするので、祖母をふりかえると、笑みを浮かべながら、

「笑ってない」

 という。信じられるか! パンツの中まで濡れました!

 結局、湯の栓は固く締められていたが、水の栓が全開になっていて、閉じるのに一苦労した。

 もちろん、ぐしょぬれになりながらだが、祖母はにたにたしながら、

「ありがと。ごめん」

 と言っておしまいなのだ。

 しかたなく、服を脱いで洗濯機に放りこんだ。

 わたくしは、普段ろくに口をきかない祖母に、このように使われているのである。

 ひどい目に遭った。

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