第26話カレー店でバトル

 近所のカレー専門店がお気に入りなのだが、たまにしかいけない。

 駐車場の都合もアリ、立地が複雑なのもアリ。

 そこへいくと、いろんな文化に触れる。

 まず、上座は通路側である。魔除けだか、お国柄の絵の入った布が壁中に張ってある。

 わたくしは、日本の上座は奥の席だと思っていたから、母に壁際をすすめてしまったことがある。

 当然給仕の人が「おまえ、バカ」(片言)と思っているのが伝わってきた。


 今日なんか、一つのプレートを母と二人で食べていたら、母がタンドリーチキンを譲ってくれるというので、一つしかないのに悪いと思って二つに分けて。

「半分こしよう。好きな方とって」

 と言ったのだ。すると母は箸(あったのだ! カレー店に)でチキンをつんつんつまんではひっくり返し、あんまりよろしくない態度で応じた。わたくしは思わずマズイと思い、

「つつきまわしてないで、さっさと選んで」

 と言ったら、給仕さんチェックがすごい。

『ひどい! お母さんに優しくしないなんて、乞食になれ! おまえはどんなに地位がたかくても乞食と思う。お母さんは世界に一人。おまえにはどんな男も跪かない』

 と、片言で思念が伝わってくる。

 うん、そうだよな、父親が何人いたとしても、母親は一人、そういうものだ。

 反省はしたが、反発もする。

『私は男なんかきらいだから、よかった。跪かれたりしてなにを要求されるかわからないからな』

 とテレパシーを送ると、

『悔しい……』

 と返ってくる。

 すべては妄想だが、文化の違いがわかってよい。

 そして実際に給仕さんと対峙したわけでもないので、怪我はない。

 妄想ってこうも道徳的なのだろうか。こうしてわたくしは姿勢を正すことになるわけだが、ためになるので、またたまに行こうと思っている。

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