第24話エンドレスリピート

 いろいろ複雑なんである。

 頭の中に複数のキャラを飼ってるせいか、思考がおぼつかない。

 暑さのせいだろうか、イライラしがちで、混乱気味だ。


 祖母が片手で持てる荷物を持っているから、受け取ろうとしたら、ツイッとよけられて。そんなに器用なことをしてくれるのに、そのときのいいわけが祖母、

「上にこれが乗ってるけん」

 ……水トラブルの請け負いナンバーの、マグネットだ。

 そんなものが上に乗っているから何なのだ。その矢印が上向きに曲がっているマークの段ボールはわたくし宛の荷物に決まってる。

 かまわず受け取るとさっさと部屋へ。

 荷物? CDだ。『はたらく細胞』の。ゆっくり開ける。手の垢をつけないように気をつけて。だけど、デッキがリビングに置きっぱなしだった。

「今日も暑かったね~~」

 声をかけてリビングに行くが、母は録画番組を消化していて夢中になっている。

 祖母が

「そうね……」

 と応える。

 外から帰ってきたとき、クーラーのスイッチを入れておいたのだ。母はのんびりとソファでくつろいでいる。扇風機がモーター音をさせながら首を振っている。

 キッチンでバナナを食べていたら、喉が渇いた。冷蔵庫から牛乳を出して、湯呑をとろうとすると、祖母の着ている柔らかい布地が背中に触れた。

 おっとアブナイ。気をつけよう、と思いながら、湯呑に牛乳を注いで冷蔵庫に戻そうと開けたら、また! 背中に祖母の服が触れる。何と言ったらいいのやら。

 ないまぜである。

「邪魔だなあ」

 と表層意識では思うのだが、疑問や、動揺や、怒りや、イラつきがないわけではない。

「なんでまだそこに立ってるの?」

「おっとっと、アブナイアブナイ。ケガをしたら大変だ」

「目は前についてるはずなのに、なんで避けないかな」

「体に何か触れるのは不快だなあ」

 そんな感覚がもやっと浮かぶ。

 ヒヤッとして、いっぺんに感情がざわつくので、人には触れないようにしているのに、祖母は自分から寄ってくるので迷惑なのである。

 言い換えよう。わたくしの感情を逆なでしないでほしいのだ。ストレスだ。


 冷え性なんだといってはいきなり、わたくしの手を握ってきたりして、いいわけがこれまた変なのだ。

「あたしは手が冷えとるけん、他の人は暖かいんだろうと思って」

 は!?

 そういう理屈は子供が言うもんだ。なにを大正生まれが、カマトトぶって。

 という感想は後で生まれたもので、動揺させられた反動で怒りが顔を出す。

「冷え性なのね? 私もちっちゃい頃冷え冷えだったよ。寝る時お布団がちっちゃくて足が出るの。で、秋の初めから春の終わりまでずっとしもやけだったよ。とあるときは足の裏がパンパンに腫れて歩けないから、保育園を休んでね……」

 という話をしたと思うのだが、祖母、それでも

「あたしは手が冷えとるけん、他の人は暖かいんだろうと思うとたい……」

 繰り返すんである。

「そういえば妹も冷え性って言ってたなあ。お母さん、妹のために冷え性特集をTVで録画してたよ。おばあちゃんも観たら?」

 といっても、

「他の人はあったかいんだろうと……」

 イラッとくる。

 こういうところが子供じみててうんざりする。合わない。かみ合わない。どうにもならない。


 こういうことを思い出しながら、聴いている歌は『ミッション! 健・康・第・イチ』をエンドレスリピートしてたり。

『今日も雑菌 排除排除』がたまらない。『細菌ウイルス 出て来いやぁ!』♪『絶対逃がすな 遊走遊走』♪♪

 白血球さんが超クールでさぁいこう! なのだ。キラーT細胞さんもワイルドでいい。

 声優ファンの方にアピールするとすれば、作詞作曲のゆうまおさんが、井上喜久子さんが歌うと聞いてテンションアップしたそうだ。

(CV:井上喜久子)さんは物語中ではマクロファージという、白血球の一種で、御掃除人なのだ。ニコニコしながら鉈や鈍器をふりまわす、うっとりするほどギャップの面白い(恐ろしい?)キャラ。確か、血管の中では単球なのだが、血管を出るとマクロファージさんになる。白いメイド服? が特徴で、骨髄で血球細胞の育成もしている。謎多し。

 声優「井上喜久子」! と聞いてテンションアップするってすごいなあ。そういう感じの存在になりたいものだ。声優さんになりたいわけではないが。ネタになるほどすごいんだと思って……。井上喜久子さん。実はよく知らなかったりする。有名人とは聞いてるが、お声は初めて聴いた。イメージが鮮明でとてもいい。男だったらひとたまりもないな。うん。

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