第20話男は至高なんかじゃない

 :ブッダは「女は男にならなければ、悟りをひらけない」と言ったそうだ。

 何と含みをもった言葉だろうか。

 女は男になれない。だから、悟りをひらくのは無理、と解釈した。

 ただ、男性性を理解し、適宜身に着けられるならば、宇宙と一体化するのも不可能ではない。


 :男は女を政治から引き離し、邪魔にしてきた過去がある。

 日本では今もって男性社会が、女を中途半端におかしくしている。

 男社会をおかしくしているのが女だと思っている。

 しかし、女は男性社会をぶち壊すのに必要である。女が今するべきことは、男性社会をぶち壊した後、次にどうするのかを考えること。


 :結論から言えば、女は女性性を捨ててはいけない。

 女が形作る社会というものを、理想を捨ててはいけない。

 男に邪魔もの扱いされるくらいでないと、世界は形作れない。

 男がくじけそうになった時に、一番近くにいるのが女であると平和的だ。

 そうでない男は、独りで勝手に死ぬだろう。


 :男は一人ではなんにもできない生き物だ。

 大人になって社会を見てくると、男性同士固まって何だか知らないがごちゃごちゃやっている。そういうやり方しかできないし、通用しない社会に呑みこまれてきた。

 彼らは犠牲者である己を、ほうったらかしにして、次なる犠牲者を生み出そうとしている。

 女性はそんな男を見張っておかなくてはならないのだ。


 :女が強くなっても男性社会は大人の男の世界だったから、男女同権の意味を深く考えない男女が溢れて、婚期がどうの、少子化がどうのと、不都合が出てきた。

 女が男並みに社会参加することは、女性性を犠牲にする形になってしまったのだ。

 今ならおそくない。女性は「母になる権利」「一家をまとめる権利」を捨ててはいけない。

 男性社会に「男性」と化して、末席に座っていればいいのではない。セクハラに耐えてちゃダメだ。女性が産み、育てる性であることを社会に受け止めさせなくては。

 女は「母」となり「社会人」となり、社会性を高くもって貢献できることを示さなくては。


 :わたくしは体があまり丈夫でない。鍛えてはいたが、大病をした。体力ががくんと落ちた。

 これと同じことが、産後の女性にはおこる。母になった人にはわかると思う。

 こういうとき、わたくしは頭を働かせ、労働が効率化できるしくみを考える。

 最底辺のわたくしができたことだ。大丈夫。世の女性にはまだまだできることがある。

 できないことを男にやってもらえばいい。女は女にできることをやっていけばいい。


 :女性社会というものを形成することを考えることが必要なのではないか?

 SFでは男と女が別々に社会を形成していたが、そのくらいしなくては、女性は救われない。

 考えてもみて欲しい。女性が「子」を産まず、「家庭」を持つことを全拒否したならば、男女同権など滅びへの階段を転げ落ちるようなものだ。


 :バイオテクノロジーで「人工子宮」「体外受精」「クローン」がおし進められ、子孫繁栄万事抜かりなし、となれば、こんどは育児を社会でどうするか、という問題が生まれよう。

 少女漫画では早くからネタにされてきた問題だ。

 人工羊水につけっぱなしにして、子供の脳が育つわけはないから、問題は解決してないが。


 :動物は植物とは違う。

 人間には草や樹木のように、実をつけ広めるためのシステムができあがってはいない。

 赤子は未熟なまま産まれてきて、外界に順応すべく育成されていく。男性性も女性性もそのときの文化背景によって生まれる。

 ということは「育成機関」は必ず必要なのだ。


 :人間の子も狼に育てられれば狼の子として成長するし、子猫も犬の乳でそだてば、犬のように育つ。

 人間を人間らしく育てるには、人間が育てる必要があるのだ。機械に任せてはおけない。

 水栽培じゃあるまいし、栄養漬けにしておけばよいというのでもない。

 それを「母」にのみ任せるのでは、社会の混乱のもと。社会全体が子育てをする必要がある。

 それには定年退職した男性や、子育ての終わった女性などが適任だと思う。


 :それでなくとも、ご老人は、幼子のあしらいかたが上手だ。

 知恵もあるし、こどもの「なぜなに」攻撃に耐えるだけの人材だ。

 健康寿命も延びてきているし、子育てとして適役ではないかと思う。

 子供といると、忘れていた「世界へのときめき」を思い出せるだろうし、それが引き金となってボケ防止につながったり、平均寿命が延びるかもしれない。


 :女性にロマンチックな想いを抱く男性は、好きになった人の女性性を否定してはならない。

 なにせ、女性性があるから、女は異性を好もしく覚えるのだから。それを否定したら、モテなくなること必至である。

 男性が女性性の敵になったならば、女性は「この男といたら、自分は不幸になる」と思って相手にしなくなるだろう。そんなあなたを好きになったんじゃない、と。


 こうして書くと、男性社会を真っ向から否定しているようだが、女性性を否定し続ける男性社会を認めることができない。

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