第9話バカは医療を越える
赤塚不二夫せんせいの伝記的番組。
『バカボンのパパよりバカなパパ』第三話で元妻の癌が笑いで完治する。
僕は常々思っていたのですが、憂鬱な気分の時に悲しい話や恐ろしい話を読んだり観たりしてカタルシスに溺れる、という行為は悪循環であると思うんです。
カッコつけてるわけでもない。ただ現実の恐ろしさにうちひしがれる時、思ってました。
「馬鹿になりたい」
と。
現実なんて打ち壊せ! 世の中バカばっかりだ。そう思うことってあると思うんです。
なにも知恵遅れと呼ばれたいわけではないですが。
うわーっと、馬鹿やって、本物のバカになれば、風邪もひかなくなるし、両親は共働きだったのですが、負担もかけずに済む。一人で遊んでても、馬鹿なんだから楽しく過ごせるなにがしかを持ってるはず。馬鹿になりたい。と……。
殺人とか、なにか世間に迷惑になることをせず、勝手にバカやってれば、世の中の人が喜んでくれて、病気も治って、八方丸く収まる。そんなバカに憧れてたんですよね。
高校生くらいになると、たいていの人は落ちついたフリくらいはできるようになります。そうらしいです。僕のまわりはそうではなかったですが、ちょっとタガが外れてておかしかったですね。受験前にゲーム感覚でテストを受けるとか。図書館でひたすら本の丸写しをしてるとか。で、前者も後者も大学受験をほぼ失敗するわけですが(まともに勉強してないから)、片や一流大学に一浪で入学し、片や留学先から強制送還されるなど、明暗が分かれました。その後も片や同人ゲーム制作にいそしむとか片やカクヨムで微妙な位置にいるとか。若い頃は馬鹿な方がいいという例かもしれない。わかりませんが。
で、何が言いたいかというと、僕の周りはエネルギーを吸いとられる方と、吸いとる方とが完全にわかれていた。馬鹿はエネルギーを吸いとられる方。だけど、馬鹿だから気にしない。
搾り取られるだけ搾り取られてふさぐ、ということがないわけです。エネルギーは循環します。偉い人が言ってました。そういった法則があると。そうであれば、馬鹿はどこかしら恩恵を受けてるはずなんですよね。人にエネルギーをとられる反面、どこかから。
人生の悲哀とか、現実の重荷や責任とか、ほぼ無意味なんですよ。どこからもエネルギーをもらえなくなるだけなんで。
だから、赤塚不二夫せんせいは、本物の心のお医者さんであると勝手に思ってます。
『バカボンのパパよりバカなパパ』は良いバカです。
「自分はムササビ」って、子供の頃やりました。顔面から着地はしなかったけれど。ふろしきを両足にゆわえて、押し入れの上段から飛んで。なんどもなんども飛んで。学ぶんです。
ああ、自分は飛べないムササビだ、って(面白かったからいいんですけど)。
でも赤塚不二夫せんせいは気にしない。病気の元妻を笑わせたい、本物のバカだから。元妻が笑ってくれればそれでいいのだ! って人だから。
この人は人生からなにも学ばないのか?
違うんです。バカは。バカやってなにがしか、感じとってるんです。
幸運なことに赤塚不二夫せんせいの元妻は癌が治ってしまう。笑いは特効薬。免疫力があがるっていうし。でもその時代ではまだ医療はそこまで明確に笑いを薬になるとはみてなかった。パッチアダムスでようやく認知度出てきたかな? 知らない人多いな? って感じでしたから。
でも、笑いの大切さを知っている人は、どこか哀しみを抱えていると思います。情緒が不安定な人も。笑ってわらって、ようやく我に返る。さあ、自分のすべきことをわきまえよう、って気になるんでしょう。僕がそうです。
これは古い時代に行われた統計ですが、小学校で一クラスに一人くらいは、日がな笑いもせずおとなしく過ごしている子がいて、そういう子は命にかかわるような病気をすることが多いんだそうです。
やっぱり、人生笑ったもの勝ちなんだなあと。思います。
僕は病気になったら、偽物の医者でもいいから、パッチアダムスに診て欲しいです。
本物であるに越したことはありませんが。笑ってわらって……死にたくはないけれど、その時には心の整理もついてるでしょうし。ちゃんとした治療もしてもらいます。
財産の格差が命の格差ってニュースで言ってましたけど。冗談じゃないです。笑いは無料ですよ? 治療費に加えたいなら、まず笑いについて確かな臨床結果を出して、本職の方に笑わせてもらいたい。だけど、現状そうはならない。笑いと医療は別。
『べろだしちょんま』じゃないけれど、笑いながら死んだら、磔刑だって怖くないんです。
赤塚不二夫せんせいの笑いはただのバカじゃない。思いやりのバカだから、その人生で多大な恩恵をすでに受けてらっしゃると思うので。
そんな途方もないバカにはならなくていいから、自分と自分の愛する人たちが幸せになれる程度の馬鹿になりたい。それが今の僕の望みです。
僕はイチバンです。真守くんには、おぼえておいて欲しい。
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