ファーストコンタクト

「ふぅ…これでおしまいね。」


「なにがおこったんだ…?いまのはお前がやったのか?」


「お前とか呼ばないでくれる?…あぁそっか知らないんだったわね。私は澪川…澪川巴みおかわともえよ。」


「ん?あぁすまない…それで今のは…澪川がやったのか?」


「その前にまず私の質問に答えなさい。あなたが無謀にも…そこで煙出してプスプスしてるやつに飛びかかったとき炎の玉が飛んできたでしょ?」


「あぁ…飛んできたな…」

そう言えばあの炎も澪川がいた方から飛んできたなような…まさかこいつも炎使いなのか!?


「あの時私にはあなたがその炎を手で掴んだように見えたんだけど…あなた一体何をしたの?」


「あれは一か八かの賭けで俺の炎とぶつけたのだ。あのままでは黒焦げになっていたからな。しかし、炎同士で混ざってより大きな炎になったのは驚いた…。」


「ちょっと待って…あなたの炎って…?」


「…あぁ、おれは炎使いだからな」

パチン!ーーぽっ

『よし!決まったな!』指先に炎を出してかっこよくポーズを決めた。

「自在に炎を生み出せるのだ」


「…え?なにそのちっさい火?…手品?」


「なっ!?手品ではない!!くそっ!ならば…これならどうだ!」

人差し指に灯った炎を手のひらで握りこみバスケットボールサイズの炎をだす。


「!?ほんとうに…手品じゃないのね?」

「断じて手品などではない!!」

「…そう」

すると澪川はこちらから視線を外し顎に手をあて何か考えているようだ。

数秒の間があった後こちらへ視線を戻した澪川が口を開く。

「あなたは一体何者?」

「…?だから言っただろう炎使いだと」

「…ふざけないで。…どこの組織の人間かって聞いているのよ」

「組織…だと?なんだそれは!?」

組織とはなんだ?こいつ中二病なのか?いや、そんな感じには見えないな。組織…何の組織だ?俺の能力の話をしていていきなりなぜ?

まさか…

「組織というのは話の流れから察するに能力者の組織か?…あるのか?あるのだな!?詳しく教えろ!!」

俺は澪川の肩を掴み詰め寄る。

「ちょ…ちょっと!いきなりなによ!?なんか目がヤバいわよ…ぃや、離して!怖いから近寄って来ないでよ!」

「いいから教えろ!組織とはなんだ?」

「…近寄るなっていってんのよっ!!」


おもいっきり蹴り飛ばされた。


「教えるわけないじゃない…世の中には知らない方がいいことも沢山あるのよ」

「ふっ…なにを言っている。目の前に異能力バトル展開の可能性があるというのに見逃せるわけがなかろう!」

「はぁ?なにバカなこといってるのよ。異能力バトル展開?仮に奴等のことを知って歯向かおうものなら、バトルなんて起こることもなく人知れず静かに消されるだけよ」

「そうなったとしても構わない。その程度であるならば主人公にもなれんしな」

俺の言葉を聞いた澪川が一瞬目を見開き驚きの表情を見せ、すぐにうつむき表情を隠す。

表情は見えなくなったが肩を震わせギリギリと音がなりそうなほどに強く拳を握りしめている。どうやら怒っているらしい。


「…いろいろと言いたいことはあるけど、もういいわ。とにかくこれ以上話す気ないから」

怒りを我慢しているのか震える低い声でそういうと澪川は公園の外へと向かって歩いていく。

「っ!!おい!待て!」

俺の制止も聞かずに澪川は公園の外へ去って行った。


「ワケがわからん。…というかあいつ、俺の質問には何一つ答えずに行きやがったな」


この公園に立ち寄ってから理解出来ないことが一気に起こってとにかく疲れた。

いきなり謎の生物は出てくるし…

「そういえば!あの謎の生物どうすんだよ…ってあれ?」

無い。さっきまで確かにあった謎の生物の亡骸が…それどころか地面の穴や亀裂も綺麗さっぱりと無くなっていた。

「そんな筈は…俺は夢でも見ていたのか!?なんなんだ一体!くそっ!」

とにかくこの公園にいても仕方がない。

「せめてこの公園で起こった事だけでも説明してもらわねば!」

まだ澪川が公園を出ていってから間もないし走れば追い付ける筈だ。

走って公園を出て澪川が行った方向ーー丁度俺のアパートがある方向を見る。すると五十メートル先くらいに澪川の背中が見えた。

走って追いかける。この距離ならすぐに追い付けるはず。

もう声をかければ気づくだろう距離まで迫ったとき澪川が進路を変え建物に入っていく。

咄嗟に追いかけようとして一歩踏み出すが建物を見て足が止まる。やけに見慣れた建物。


「なんであいつが…まさか…」


とにかくオートロックのドアを解錠して、アパートの中へ入る。二階建ての小さなアパートだが入ってすぐ正面の所にはエレベーターがある。エレベーターの左手奥に進めば一階の各部屋が並んでいて、右手側には階段がある。

さて、一階か?それとも二階か?

ふと、エレベーターの表示が動いたことに気づく。

「二階か!」

階段を駆け上がる。大して長くもない階段なので直ぐに二階へ着くと部屋が並んでいる方へと歩いていく澪川を見つけた。

「おい!待て!」

近所迷惑になるだろうが少し大きめの声で制止の声をかける。


「人の家まで追いかけてきて一体どういうつもりかしら…」

ゆっくりと振り向いた澪川は直視出来ないほどの怒りのオーラを纏っていた。

「た…確かに追いかけてはきたが、お、追いかけていなくてもここには来たぞ」

「…どういう意味?」

「一番奥の部屋。あれは俺の部屋だ」

「うそよ…そんなことって」

ポケットの中から部屋の鍵を取り出して澪川に見せる。

「俺も驚いたが事実だ。ちなみに聞くが澪川の部屋はどこだ?」

「…奥から二番目」

「なんというか…こんなこともあるのだな」

「…最悪だわ」


澪川が先程まで纏っていた怒りのオーラは霧散していた…がかわりに絶望の表情を浮かべその場に崩れ落ちていく。

…そこまで大袈裟に嫌がられると流石に気づつくぞ。



暫く力無くへたりこんでいた澪川がゆっくりと立ち上がり自分の部屋のドアへと歩いていく。

ポケットの中から鍵を取り出して鍵穴へ差し込む…って呑気に観察してる場合か!何のために追いかけて来たのだ!

「いや!ちょっとまて!」

「…なに?」

ギリギリと首だけゆっくりこっちに向けるな!怖いではないか!

「なに?ではなくてだな。…とりあえず組織のことは聞かないが、せめてさっきの公園での出来事の説明くらいはしてもらうぞ。…そもそもお前の質問にしっかり俺は答えたと言うのに、俺の質問には一切答えていないではないか!」

「知らないわよ。あなたが答えたら私も答えるなんて別にいってないし」

「なんだと!卑怯ものめ!」

澪川は大きく一つ嘆息する。

「…大きな声ださないでよ。近所迷惑になるじゃない。…はぁわかったわ。とにかく中に入りなさい」

ドアを開けそういうと部屋に入っていく。

入れというのはまさか澪川の部屋に…か?

迷っている間に閉まりゆくドアをあわてて止め、そっと中にはいる。

「お…お邪魔します」

「…いいから来なさい」

他人の家に上がり込むのはなれていないため妙に緊張した。

『そういえば女子の家なんて初めて入る…いや、そんなこと考えるな!』

靴を脱ぎ奥の部屋へと歩いていく。どうやら間取りは俺の部屋と同じみたいだ。キッチンの横を通りすぎ部屋に入ると中は綺麗に片付けられていた。

なるほど片付いているとそれなりにこの部屋も広いのだな…。


俺の部屋側の壁にくっつけて置かれたベッドに澪川が腰を下ろす。

「そこに座って」

言われて指された澪川の正面に位置する床を見ればかわいいピンクのクッションが置かれていた。

あれに座るのか…部屋の中を見るとかわいらしい小物やクッションがいくつか目につく。…俺がここにいていいのだろうか。


「あまり人の部屋じろじろ見ないでよ。追い出すわよ」


言われて余計な考えを振り払い指定されたクッションの上へと腰を下ろす。


「それでなにから聞きたいの?言っておくけど…組織のことは話さないから」

言われて正面へと視線を向ける。

先程まではそれどころではなかったためあまり見ていなかったが正面に座って澪川の姿がハッキリと確認できた。

腰まである長い黒髪。顔立ちは性格故か目付きはややきつい。全体的に幼さがある為に美人とは言えないが美少女ではあるかもな。多分身長も俺より頭一つ分小さかった気がする。百五十センチくらいか?…なるほど。

「…なによ。気持ち悪いからあんまり見ないでくれる?」

「ん…?あぁ安心してくれ。俺にはロリを好む趣味はない。」

「…ころされたいのかしら?」

立ち上がりこちらを睨んでくる…が怖くない。

時に認識というものは重要なのだな。部屋に入ったときは情けなくも緊張してしまったがこいつの部屋なら問題ないな。妹の部屋に入るのと大差無い気がするし。

「それよりも公園での出来事の説明をしてもらおう」

「…こんなに人に殺意を抱いたのは久しぶりだわ」

よく怒るやつだな…。小型犬ほど威嚇行動が多いと聞いたことがあるがそれと同じなのだろうか?

「まぁ落ち着け。俺が何か怒らせる様なことをしたのなら謝る。すまなかった」

「ふん…まぁいいわ。はやく終わらせてさっさと帰ってもらう方がいいしね。それでなにから聞きたいの。」

「ではまず、俺に向かって飛んできた炎と最後の光は澪川がやったのか?」

「えぇそうよ。あれは私の符術」

「符術?」

俺が疑問に思っていると澪川は懐から一枚の御札の様なものを出しこちらへそれを見せてくる。

「この霊符を使ってあなたが見たような炎を出したり、他にも風を起こしたり水を出したりできるの。ちなみにあの最後の光は炎の符術を3つ一気に発動させて火力を上げたものよ」

「炎だけでなく水や風まで!?なんだそれは?俺にも教えろ!」

「無理よ。この術は私の家に代々伝わる秘術なのよ」

「なら俺と結婚してくれ!そして教えろ!」

「なっ!?絶対にいやよっ!!…大体これはあなたには絶対使えないのよ!普通、符術っていうのはせいぜい呪い程度のことしか出来ないものなの。だけど私のご先祖様がその身を神に捧げたことでそのご先祖様と血の繋がりが有るもののみこの力が使えるようになった。だから血の繋がりがなければ使えない」

「…そうなのか」


なんてことだ。

俺の能力も決して悪くはない。悪くはないが、澪川の符術は俺のよりも…なんというか主人公っぽくないか?

しかし…血の繋がりか。こればかりはどうしようもない。

「大体血の繋がりが必要じゃないとしても貴方には絶対に教えないし。結婚なんて絶対にあり得ないわ。考えただけでも…」

澪川が小声で何かぶつぶつと独り言を呟いている。さっさと話を進めるか。

「仕方がない、諦めよう。次の質問いいか?」

「っ…意外に物分かりがいいのね。いいわよ」

「あの謎の生物はなんだったんだ?知ってるんだろ?」

実のところこれが一番気になっていた。澪川があの謎の生物に止めを指すとき『あいつらはしぶといのよ』とまるで最初から知っている様だった。

もしかするとたまたま出会ったのではなく澪川からあの生物に接触したのではないか?

それにあいつ"ら"と言うことはもしかすると他にも…

「えぇ知っているわ。あれは『鬼』よ」


やはり知っていたか。それにしても鬼とは…


「『鬼』というのはあの桃太郎とかに出てくる鬼のことか?」

「うーん…どうかしら。そうかもしれないし違うかも知れないわね」

「どういうことだ?」

「私たちの言う『鬼』っていうのは不浄な魂の塊のことなのよ。宗教が変わると呼び方も変わるし姿形も様々だけれどいずれも人を襲うことはあっても人から財宝を奪うなんていうのは聞いたことないわね」

「なるほど。鬼っていうのは幽霊みたいなもんか」

「惜しいけどちがうわね。幽霊は幽霊よ。『鬼』はそうね…言うなれば負の要素が強い幽霊が一塊になって生まれた化け物ね」

「幽霊が合体するのか!?」

「まぁ…そうね」

「ふむ…さっき私たちは鬼って呼んでるといっていたが…私たちってなんだ?」

「それは…」

澪川は答えにつまる。これも聞いてはいけない情報なのだろうか。今は無理やり聞き出そうとして澪川の機嫌を損ねてしまうよりはすんなり話してくれる情報だけでもとにかく聞き出しておいたほうがいい。

「答えれないのなら構わないが…」

「いえ…そうね、吹聴してまわらないと約束できるなら別に教えても構わないわね」

「あぁ。約束しよう」

「…私たちというのは退魔師協会に所属している退魔師のことよ」

退魔師か!ゲームや漫画などの創作物語ではよく聞く存在だか…まさか実在していたとは!

「…ははっ!退魔師協会。本当にそんなものが存在してるんだな!」

「えぇ。鬼や私たちの存在は公になるとパニックが起きるから秘密裏に活動しているわ。」

「ふむ…それでどうすれば退魔師になれるんだ?」

「…なれないわよ?基本的に退魔師は世襲制。ごく稀に後継ぎがいなくて見込みのありそうな人が任命されることもあるけど、それも百年に一回あるかないかのことね」

「なぜだ!」

「なぜだって言われても知らないわよ!そういう決まりなんだから!」

くそ!血の繋がりだとか世襲制だとか、退魔師ってものはなんて閉鎖的なんだ!

主人公として華々しくデビューできるきっかけが掴めると思ったのだが…。


いや、待てよ…。


「澪川の他にこの辺りに退魔師はいるのか?」

「…?いないわよ。この地域の担当は私だもの。だからここに引っ越してわざわざ高校も英俊にしたのよ。…別に高校なんて行く必要は無いんだけど親が高校くらい出ておけってうるさいから」

こいつ案外話好きなのか?高校どうのこうのの話は聞いてないし興味もない。それよりもこいつがこの辺の担当というのは素晴らしい…。

「そうか。退魔師にはそれぞれに担当があるのか」

「…本当は全国各地に散らばった退魔師の家々がそれぞれ決まった範囲を守るのが普通なんだけど今回はなぜか協会直々に私にここへの派遣要請がきたのよ」

「派遣要請?ここで何かあるのか?」

「…私もここを担当するように言われただけだから詳しくはよくわからないのよ。でもこの一ヶ月ここを担当して異常に思うことはあるわ」

「なにが異常なんだ?」

「鬼の数が多いのよ。確かにこの辺は退魔師の家も少ないから担当の区域も広くて手薄なのは間違い無いんだけど…」

「けど…なんだ?」

「ほらこの辺って田舎じゃない?人口だって多くないし。鬼ってさっきも言ったように不浄な魂の塊なのよ。だから自然と人口の多い所に発生しやすくなるの」

「なるほどな。人口の多い所の方が死人も多い。すると不浄な魂つまりは悪い幽霊の数も多くなるからその集合体である鬼も生まれやすいという訳か」

「その通りよ。都会なら毎日一体は遭遇するけど…田舎では普通は二、三日探し回って一体遭遇すればいいほうだって聞いたことがあるわ」

「それでここはどれくらい出るんだ?」

「…都会と同じか、もしくはそれ以上よ。この一ヶ月遭遇しなかった日は無いし、多い日には三体も遭遇したわ」

「それは確かに異常だな」

「えぇ…おそらく何か原因があるはずなんだけど…今のところさっぱりね」


確信した…やはりおれは主人公になるべくして生まれた存在だな。

澪川と行動すれば俺の力を発揮する場ができる。さらになにやら異常な事態らしいしこれを解決すればまさに主人公ではないか!

退魔師とやらはどうやら閉鎖的なお堅い連中らしいから俺の行動妨げになるかもしれんと危惧したが澪川がこの辺の担当ということは他の退魔師連中にはまず会わないで済む。

あとは澪川が同行を許可するかだが、頭は固そうだし恐らく許可してはもらえんだろうな。だが澪川と話をした感じだと…おそらく押しに弱く情にもろい。

最初は何も話さないなどと言っていたが追いかけて粘り強く説明を求めたらこうして話してくれた。

さらにおれが少ししおらしく話を聞いてやればペラペラと要らんことまで話し出す始末だ。

…間違いなくいける。

「なぁ澪川。頼みがあるのだが」

「いやよ」

「いや、話ぐらいきけよ!」

「どうせろくでもないことでしょ!もう説明はしてあげたんだからこれ以上関わらないで!」

「あぁ公園での出来事の説明をしてくれたことには感謝している。それにあの公園での出来事以外の込み入った話もしてくれてありがとう」


「え…えぇ…私が巻き込んでじゃったみたいなとこもあるしこれくらいは…ね」

ふっ!チョロいな!

「あぁ、だからこそのお願いだ。巻き込まれた事とはいえ鬼と戦うぼろぼろの澪川を見て俺も力になりたいと思ったんだ!それに何か異常が起こっているんだろ?俺にも手伝わせて欲しい!」

「…それはダメよ。これは私の仕事だもの。部外者はこれ以上巻き込めないわ」

あと一押しか?

「でももう事情を知ってしまったんだ。全くの部外者と言うわけではないだろう?」

「部外者は部外者よ。そもそも今日の戦いもそれほどピンチって訳じゃなかったわよ。あなたが来なくてもきっちり倒せたしケガだって、ほら…今は無いでしょ?結界の中でのケガはそとに出れば消えるのよ。つまりあの公園を出たときに消えたわ。そう言えばなんであなたは結界の中に入れたのかしら?普通は外から入れないようになってるのに…」

なんだ結界とは!?チートではないか!

それよりも不味いな。こいつ思った以上に頑固だぞ。

「いや、しかし俺の介入があったお陰で少しは楽に倒すことが出来ただろ!?これから力を合わせればより効率よく鬼を倒せるじゃないか!それに原因の調査だって人手が多い方がはやく解決できるだろ!」

「…?正直に言うと今日のあなたは邪魔でしか無かったわ。最後の止めをさした炎の術だけどあれはあそこに仕掛けておいたものなのよ。あなたが飛び込んで来なければあの鬼は私の炎の玉に軌道修正されながら、のそのそとあそこに歩いてきてーーぼん!はいおしまいってなる予定だったのに、あなたのせいで余計に時間がかかったわ」

なんだと!おれが邪魔だっただと!?バカをいえ!

「あくまで予定だろう!あの俺の主人公的活躍がなければ間違いなくおまえは負けていたな!これからもそうだ!このイベント間違いなく俺の為に用意されたようなものだ!俺が解決して主人公として華々しくデビューする!その為のイベントに違いないのだから!」

「…ふん!それがあなたの本音ね。急にまともなこと言い出したから、なにか怪しいと思ったらそういうことね。もう一度言うけどこれは私たち退魔師の問題よ。部外者は余計なことしないで。大体なにが主人公よ訳がわからないわ」

「なんだと!!主人公の何が訳わからんのだ!」

「なによ!ワケわからないじゃない!主人公なんて定義が曖昧なものにいつどうすればなれたって言えるのよ?まだ自分の正義を貫けばいい正義のみかたの方が分かりやすいし現実的よ」

「正義のみかたなどつまらん!もっと幅広いジャンルで中心人物になりたいからこその主人公だ!」

「ほんとに意味不明ね…まぁいいわ。もう話は終わったんだから出ていって」

「まだ終わってない!」

「終わりよ!!出ていきなさい!」

そう言うと澪川は無理やり俺を玄関まで引っ張って行く。

ドアを開け俺を蹴飛ばして外に追い出される。

ドアが閉まる直前に靴が俺めがけて飛んできた…なんてやつだ!


込み上げる怒りを抑えながらゆっくりと靴を履く。うちは隣だから距離もないし別に履かなくてもいいのだが。

澪川に同行を断られるのは想定内だったが俺の主人公への夢を意味わからんと言われて頭にきてしまった。

同行の件はまだ考えがなくはないし諦めん。

主人公の件はいつか謝らせてやる。

とはいえ…気にくわんが澪川の言うことも正しい所がある。今まで主人公になるための条件だとかなるにはどうすればと考えていたが、どうすればなったと判断出来るかなどと逆説的には考えたことがなかった。

今日の所は自分の部屋に帰ってゆっくり休みながら考えにふけるとしよう。



…そういえば俺のコンビニで買った弁当と飲み物はどこへいったんだ?

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