第11話 ルリ。

今夜もあたしを無視するように、この暗い街は眩しいくらいのキラキラと輝くネオンに包まれ、あたしというひとつの存在価値を簡単に埋め合わせしていく。


いくつもの鋭く研いだナイフのような視線があたしの身体に突き刺さって、皮膚を抉られていくような痛みだけが残る。


ベッドサイドに置かれたゴミ箱に放り込まれた使用済みのコンドームと、ぐちゃぐちゃになった苺のショートケーキ。


望まない愛は捨てるだけ。


ねえ、あたしはなにが欲しいの?


決して言葉にはならない答えに、あたしは今日も飲み込まれては黙り込む。


透けて見えてしまいそうな嘘を重ねる度に、心のどこかがバラバラに砕けていくの。


音も立てずに砕け散る頭の中で、今でもずっと鳴り止まない夏のノイズ。


今日はひとりでいたくない。


誰か、あたしの頭の中全部を麻痺させて動けないくらいに、愛してよ。


あたしの千切れてしまいそうな願いは、今夜も虚しく煙草の白い煙が浮かぶ空中に混ざり合って、ふわふわと消え失せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サッド ナイト ガール。 後藤りせ @riseeee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ