第10話 セツナ。

ギラギラと眩いネオンがあたしを睨みつける。

出勤をする店までの大通りを歩くあたしを、もうどこにも行かせはしないのだと、あたしの身体と脳内を縛りつけては嘲笑っているように見えた。


凍えたアスファルトには、鋭くあたしのピンヒールの靴音が響く。

あたしは歩んでいた足を止め、暗闇に埋もれていくオレンジ色の太陽を見上げた。


こんなに空っぽの胸を張れるほど、あたしは強くは生きられない。


望んでもいない夜が、今日もあたしの身体を包んで、心を少しずつ殺していく。


無機質なヘーゼル色のカラコンの奥が、じわじわと疼くのを感じている。


あたしがいくら泣き叫んでも、あたしがいくら喚いても、こんな街で助けてくれる人間なんて、たったひとりもいないのに。


この場所で生きていく理由?

そんなのあなたはあたしよりもよく知っているくせに。


もうひとりのあたしが笑う。


アイデンティティだけが売れ残るこんな街で、行き場を失くしたこの感情に転がり落ちるのは、何枚かの諭吉という紙切れだけ。


あたしがずっと求めていたものは、なんだったっけ?


もう歩けない。


もう歩けないよ。

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