第9話 ジュリ。
キラキラと眩しく輝く風俗街が、白い冬に包まれる。
窮屈に立ち並ぶ店の前に大きく掲げられた女たちのパネルは、いやらしく笑顔を作り、この街を誘惑する性欲の捌け口。
掌で掬い上げたら溶けてしまいそうなほどの小さな雪が、あたしのミルクティー色の髪に舞い落ちて、うっすらと白いベールを作り、ただの水分に変わっていく。
今の気持ちをどれだけ探しても、言葉にする術がひとつも見当たらないんだ。
あたしは舞い落ちる刹那の降る空を見上げることも、そこに立ち止まることもなく、ただ淡々とこの風俗街を歩いている。
今夜もあたしは本名のあたしを脱ぎ捨てて、卑猥な言葉とポーズを求められ、またたった何枚かの諭吉のために心を少しずつ削っていく。
不安定な夜を戦い抜くことに、あたしはときどき胸が押し潰されそうになるよ。
眩しいくらいに輝くモノを追いかけ続けて、闇の中に突き落とされたこの身体は、ただの戦闘機でしかない。
ずっと聞きたかった答えは、きっと今夜も聞けないまま、またキラキラした眩い夜に溶けていくんだ。
あたしの生きていく理由も、あたしがここで生かされている理由も、全てはあたしの中にあることなんてもう何年も前から知っているくせに。
あたしは今夜もあたしを騙しながら、抜け出せない闇の中を生きていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます