第9話 ジュリ。

キラキラと眩しく輝く風俗街が、白い冬に包まれる。


窮屈に立ち並ぶ店の前に大きく掲げられた女たちのパネルは、いやらしく笑顔を作り、この街を誘惑する性欲の捌け口。


掌で掬い上げたら溶けてしまいそうなほどの小さな雪が、あたしのミルクティー色の髪に舞い落ちて、うっすらと白いベールを作り、ただの水分に変わっていく。


今の気持ちをどれだけ探しても、言葉にする術がひとつも見当たらないんだ。


あたしは舞い落ちる刹那の降る空を見上げることも、そこに立ち止まることもなく、ただ淡々とこの風俗街を歩いている。


今夜もあたしは本名のあたしを脱ぎ捨てて、卑猥な言葉とポーズを求められ、またたった何枚かの諭吉のために心を少しずつ削っていく。


不安定な夜を戦い抜くことに、あたしはときどき胸が押し潰されそうになるよ。


眩しいくらいに輝くモノを追いかけ続けて、闇の中に突き落とされたこの身体は、ただの戦闘機でしかない。


ずっと聞きたかった答えは、きっと今夜も聞けないまま、またキラキラした眩い夜に溶けていくんだ。

あたしの生きていく理由も、あたしがここで生かされている理由も、全てはあたしの中にあることなんてもう何年も前から知っているくせに。


あたしは今夜もあたしを騙しながら、抜け出せない闇の中を生きていく。

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