第6話 リサ。
朝と夜の境目が混ざり合う高すぎる空。
柔らかなグラデーションが今日という24時間を終わらせる。
瞬く間も無く殺されていく星に、ほんの少し切なさを感じたあたしは眼球の奥が疼くのに、たった一粒の涙も流せずに立ち尽くしている。
風俗街の真ん中。
ゴールドとブラックで統一させられた店の外に大きく掲げられキラキラした笑顔のパネルの中のあたしは、性を売り物にすることを身体に染み込ませて、矛盾だらけの頭の中を麻痺させながら、今日も生きていた。
タクシーを拾い、無駄なハイテンションを放り投げてくる運転手に苛立ちを殺しながら、少し蒸し暑い夏のアスファルトを転がっていく車内。
窓ガラスに映るあたしはとても滑稽に見えて、聞こえないように静かに嘲笑った。
いくつもの性欲を解放させた今日1日ぶんのギャラは、乱雑にバッグの中に押し込められ、その必要性のない紙切れは行き場を失っている。
どんなに叫んでも、あたしはこの暗闇から、逃れることはきっと出来ない。
骨が軋んで折れるように抱き締められたこの身体は、夜を終わらせる毎に、空っぽになっていく。
振り解くことの出来ないリアル。
夢を与える暗闇の世界からあたしは脳内を溶かして、また今日という1日を始める。
ゆっくりと空が作り出していくグラデーションがオレンジ色に染まり、誰にも気付かれぬように、そっと、夜が朝に温度を奪われる。
「愛してるよ。」
「世界で一番大切だよ。」
ああ。あの人は嘘を吐いたのだろう。
もう、わかんないよ。
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