小説のタイトル長くするのは後で面倒になるから気をつけて

 6月2日、12時00分。そう、俺は必修授業「政治学I」の講義を受けていた。


『・・・えー、だからして、今回のアメリカにおける大統領選挙は大方の予測と全く反した結果となった。それを社会学的分析によって検討すると・・・』

 大教室の講義室のクソでかい机に座って、延々と教授が虚空を見つめながらしゃべっている。




 皆さんは、「LINE」というスマートフォンアプリをご存じだろうか。

 いうまでもなく、「LINE」とは日本中を席巻し、いまやあれなしにはコミュニケーションをとることもできないといわんばかりの普及率を誇るソーシャルネットワークサービス(SNS)のことである。それは主に若者世代にインフルエンザの100倍近くの感染度で広まり、それに感化された(というか「お母さん、ラインじゃないと連絡めんどくさいんだからラインスマホに入れておいてよ」「しょうがないわねえ」「お、じゃあお父さんも入れておこうかな」「お父さんはいれなくていいよ」「・・・」という会話が全家庭で行われたものと思われる)親世代に普及し、その真っただ中にいる大学生にとってはもはや三種の神器(他の二種類は読者の想像に委ねられたい)といっても過言ではない代物だ。

 なぜこんな話を延々と語っているのかというと、



『・・・えー、だからして、この分析を用いて考えれば、今回の大統領選がいかにイレギュラーな結果か、ということがわかるのであって・・・』

 ちょっ、教授がうるさい。それさっきと言ってること同じだし、っていうか「だからして」多くね?

 すまない、気にせず話を続けよう。



 なぜこんな話を延々と語っているかというと、そこにはまっとうな理由がある。


 俺はこのアプリが心底嫌いなのだ。


 なぜかって?当り前さ、コミュニケーションが簡単になりすぎたんだ。

 絶え間なく表示される通知。誰かと思えば3日前に語学のクラスで一緒になったやつからの「よっす~」という暗号解読班もこればかりは解読できないであろう謎の暗号。

 こんなんで会話が成立すると思っているのだろうか。

 その後の絶え間ない通知に嫌気がさし返信をしなくなってしまった俺のLINEは、いまやその右肩に赤い丸を付けること叶わず、ホーム画面で一点の濁りなき御姿をさらしている。



 と、くだらない話をしている間に授業が終わったようだ。

『よし、じゃあ今日はここまで。明日は今回の選挙について合理的選択モデルでの読解を試みようと思う』

 来週もか。合理的選択モデルを選択するのならまず授業を行わないという合理的な選択をしてみてはどうだろうか。



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