Conference,0

つまらない小説の主人公はだいたい思弁的かつ表層的な物言いしかしない

平凡大学生は異世界転生の夢を見るか? いや、見ない。

「では、私と来ますか?向こう側の世界に」


黒のワンピースに胸元には赤いリボン。風になびくショートカットの髪は、見とれるほどきれいな黒に染まっている。

そして、緋色の目。

まるでカラスの化身のような漆黒の美少女は、そう言って俺の目の前に現れた。







読者の皆さんは、ここで納得するかもしれない。

「そうか、最近はやりの異世界モノか」と。


うん、導入がこれなら誰だってそう思うよな。俺だってそう思う。こんな導入の小説を投稿サイトで見たら、「トラック先輩、転生のお務めご苦労様ですゥ~<(_ _)>」ってコメント打ってる。


おれは常識的で現実を見ている人間だから、そんな異世界転生みたいなことが実際に起こるなんて思っていないし、そんなことを妄想する世代もとっくの昔に卒業した。当然トラックに轢かれて転生みたいなことはないし、そういうことを妄想で言うやつにはしっかりと『そんなものはないのだよ』と断じることのできる人間だ。

だからこそ、ここで俺は皆さんに言わなければならない。



ここは大学の敷地内だ。



異世界転生なんてしていないし、まして俺は大学生。ここは大学のキャンパスで、俺たちは、とちゃんと知っている人間たちだ。

これで、俺がいかにおかしい状況にいるかをご理解いただけたと思う。



それでは、なぜこんな状況になったのかを、順を追って説明していこう。

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