第5話 【新婚生活(仮)】~君島沙耶花の場合~

 あたしの名前は、君島沙耶花っていうの。


 お兄ちゃんといつか結婚して、幸せな家庭を築きたいなって思ってるんだぁ♪

エヘヘ☆


 でもぉ・・・お兄ちゃんってば、いつまで経っても、プロポーズしてくれないんで、ちょっと強引な賭けに出ることにしたの。


 命がけの、ね・・・あはは・・・。

どんな内容かは、見てのお楽しみよ♪


~出社前~


「行ってらっしゃ~い★」


沙耶花は言った。


 俊彦:「・・・・・・・。」

      ・

      ・

      ・


~帰宅後~


「おかえりなさ~い★“お兄ちゃん”」

「・・・・・・ただいま」


「どうしたの?何かお仕事で嫌なことでも??」 


沙耶花は心配そうに尋ねる。


「沙耶花・・・お前なぁ~いい加減“結婚”でもしたらどうだ?」


俊彦は言う。


「えっ?い、いいの??ホントに???」


沙耶花は嬉しそうだ。


「へ?あ、ああ・・・出来るなら構わないぞ??」


俊彦は、呆気にとられた。


「やったー★えへへへ♪嬉しいな~★」


沙耶花は喜んでいる。


「な、なんだよ!相手が居たんならそう言えよな」


俊彦は、安堵の表情だ。


「明日からは、もう・・・“お兄ちゃん”って言わなくてもいいんだね?ポッ♪」


沙耶花は、妙なことを口走った。



「えっ?」


俊彦は、言ってる意味が一瞬分からなかった。


「あ・な・た・♪なんて、きゃ―――♪きゃ―――♪恥ずかしい~~~★(真っ赤)」


沙耶花は照れながら言う。


「ちょ、ちょっと、待て!!一体“誰”の話をしている?」


俊彦は焦った。


「や、やだな~!もうっ!!惚けちゃって!!!もしかして、照れてるのぉ?」


沙耶花は、言う。


「ま、待て!!話が見えない・・・い、いや、見えてるんだけど、認めたくないというか(汗)いや、そうじゃない!」


俊彦は混乱している。


「ねぇ?どこで結婚式を挙げる??」


沙耶花は、舞い上がっている。


「いい加減にしないか!沙耶花!!」


俊彦は、一旦、沙耶花をたしなめる。


「ご免なさい・・・ちょっと一人で舞い上がり過ぎちゃったね。一緒に盛り上がらないといけないよね?」


沙耶花は、反省する。


「い、いや、そうじゃなくてだな・・・」


俊彦は、なんともいえない気分だ。


「ハネムーンは、どこにしようか?」


沙耶花は、言う。


「沙耶花・・・あのな?兄妹は、結婚出来ないんだよ!」


俊彦は、沙耶花に現実を教える。


「何よ?男でしょう!男なら言動には責任持ってよ!!」


沙耶花は、ご立腹だ。


「持ってるよ!」


俊彦は、キッパリと言う。


「じゃあ、さっきの“プロポーズ”を誤魔化そうとしないでよ!!」


沙耶花は、強気だ。


「はぁ?ぷ、プロポーズぅ??俺がいつそんな言葉を発したんだよ?」


俊彦は、すっとんきょうな声を出して、沙耶花に言う。


「もう、そろそろ、結婚しろって言ったじゃないの!」


沙耶花は、強引である。


「それは相手が居れば、そうしろって言ったんだよ、相手は俺じゃねぇよ!」


俊彦は、つっぱねる。


「あたしの相手は、お兄ちゃんしか考えてないよ!」


沙耶花は、言う。


「オイオイ!誰か何とかしてくれよ~~~(泣)」


俊彦は、呆れた。


 「往生際が悪いよ、お兄ちゃん!」


沙耶花は、むくれている。


「あのなぁ・・・さっきも言ったけど、兄妹は結婚出来ないんだよ!」


俊彦は正論で沙耶花に伝える。


「でも、”血は繫がってない”んだよ!お兄ちゃん!!」


沙耶花も正論で俊彦に言う。


「(´゚ω゚):;*.':;ブッ」


俊彦は、鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をした。


 「ね?問題ないでしょう??」


沙耶花は言う。


 「大ありだ!!!」


俊彦は反論した。


 「なんでよぅ?」


沙耶花は、少し涙目になった。


 「な、なんで、お前、突然、そんなこと言い出すんだよ?」


俊彦は、少しドモって言った。


 「だってぇ・・・お兄ちゃんがぜ~んぜん、プロポーズして来ないんだもん」


沙耶花は、すねている。

 

 「あ、当たり前だろ!兄妹として生活してるんだから!!」


俊彦も必死だ。


 「もう、兄妹ごっこは、飽きたの!」


沙耶花は言う。


「飽きたって・・・あのなぁ・・・?」


俊彦は、呆れてる。


「とにかく、血の繫がりがないあたしたちは、結婚出来るの!文句あんの?」


沙耶花はキレ気味に言う。


「あるよ!」


俊彦も負けじと言う。


「なによ?言ってみなさいよ!」


沙耶花は、キレている。


「妹としか見てない相手に結婚だ?フザケんな!」


俊彦もキレ始めた。


「ぅえっ・・・ひ、ひどい・・・お兄ちゃん・・・」


沙耶花は泣き始めた。


「お前、お兄ちゃんに戻ってるぞ!」

俊彦は冷静に突っ込む。


 「うるさいっ!ムキー!! ヾ(`Д´*)ノ 」


沙耶花は、逆ギレした。


 「はいはい、うるさいなら、俺はあっちへ行くわ」


俊彦は、沙耶花から離れようとした。

 

 「逃げんなし!」


沙耶花は、俊彦に言う。


 「逃げてねぇし!」


俊彦は、言う。


 「責任取れし!」


沙耶花は、言う。


 「何の責任だよ?」


俊彦は聞く。


 「告白の・・・」


沙耶花は、照れる。


 「告白ぅ!?」


俊彦は、言う。


 「あたしね?知ってるんだよ!お兄ちゃんが、あたしのこと好きなの」


沙耶花は自信持って言った。


 「はあ???おまえ、なに言ってんの?」


俊彦は、身に覚えがない。


 「録音してあるんで、聴いて!」


沙耶花は言った。


 「な、なに!?録音だと?」


俊彦は、焦った。

 

 「いくよ?」


沙耶花は、録音のスイッチを入れて俊彦に聴かせる。







 【俺は、沙耶花のことだ好きだ!大好きだあああああああああああああ!!】







 「エヘヘ♪改めて聴くと照れるねぇ~」


沙耶花は嬉しそうだ。


「なっ!?なにぃいいいいいいいいいいいいい???」


俊彦は、自分の声だが、全く身に覚えがない・・・と一瞬思ったのが?

いや、あるぞ、これ?確か・・・??


俊彦は、以前の記憶を探っていくと、あることを思い出したのだった。

あれは、確か・・・・・何年か前・・・。


~回想シーン~


確か、沙耶花との約束をうっかり、すっぽかしてしまったときに、いつも以上に、ピ―ピ―泣き喚いて、収拾がつかなくて、なんかやりとりしたときのことだ。


 「ひどい!お兄ちゃん、約束したのに!!」


沙耶花は、怒った。


 「悪かったよ、ほら!お前の好きなもん、買ってあげるから勘弁してくれよ」


俊彦は、いつも通りのご機嫌取りでいけるだろうと思ったが、沙耶花は折れない。


 「いつもいつも、そんな同じ手にミスミス引っかかってあげるあたしじゃない

 よ!」


沙耶花は、言った。


 「(いつもはこれで泣き止むのに!)じゃあ、どうしたら機嫌直してくれるんだ

 よ!」


俊彦は、聞いてみた。

 

 「あたしのこと好き?」


沙耶花は言った。


 

「はあ?なに言ってんの??おまえ・・・」


俊彦は、戸惑った。


 「あたしのことが嫌いだから、いつも約束すっぽかすの?」


沙耶花は周囲に聴こえるような音量で、少し大きめの声で言った。


 「いつもって言うなよ、たまたま今回だけじゃねぇか!」


俊彦は、沙耶花にしか聴こえないような、小さめの声で言った。


 「うわぁああああああああああああああああああああん!!!(号泣)」


沙耶花は結構なボリュームで泣いた。


 「なんだなんだ???」

 「男が小さい女の子を泣かせてるぞ!」

 「じ、事件か?」

 「け、警察に電話だ!」


ここは往来の通り、行き交う人々が色々な憶測で俺たちを見ていた。


 「いい!?ちょ、さ、沙耶花、で、でけぇ声で泣くんじゃねぇよ!(焦)」


俊彦は、ビビった。


 「うわぁああああああああああああん!だ、誰かあああああああ!!!(号

 泣)」


沙耶花は、オーバーアクションを取った。


 「お、おい、助けを呼んだぞ!」

 「ヤバくね?これ」

 「警察はまだか~!?」


周囲のざわつきは酷くなっていく。

 

 「どうかしましたか?」


警察官がやって来た。


 「ちょ・・・マジか・・・?(汗)」


俊彦は、警察官に職質された。


 「い、いや、いもう・・・」


妹が・・・と言おうとした時、事態が急展開した。


 「うわぁ~~~~~ん!おまわりさ~~~ん!!(泣)」


沙耶花は、警察官の足に抱きついた。


 「ど、どうしたんだね?き、きみ」


警察官は、事情を聞こうとする。


 「こ、この人が、あ、あたしを・・・あたしのことを・・・うううっ!」


沙耶花が胸のあたりを押さえて苦しんでいる。


 「は!?さ、沙耶花、まさか、心臓発作か??」


俊彦が沙耶花に駆け寄ろうとしたとき・・・声が聴こえた。


 「危ない!」


・・・と近くに居た男性が言った。


 「警察官は、待ちなさい」


・・・と言って、俊彦を制止した。


 「な、なんだよ、どいてくれよ」


俊彦は、沙耶花の様子が心配で、立ちふさがった警察官を押しのけようとした。


 「なにをする?公務執行妨害で逮捕されたいのかね??」


警察官が俊彦に言った。


 「ちげぇよ!心臓発作かもしれねぇだろ、どいてくれ!!」


俊彦は、沙耶花のほうへ行こうとするが、警察官がそれを阻止する。


 「な、なにぃ!?そんなところまで貴様が追い込んで苦しめたのか!!!」


警察官は状況をみて、そう判断した。


 「なっ!?なに言ってんだよ!!ちょ、マジどいてくれよ!!!ぐいっ!」


俊彦は、ちょっと、力を入れて警察官をどかせようとした。


 「くっ・・・応援を・・・容疑者らしき人物が暴れている、至急応援を請う!」


警察官は、肩からかけている無線機でそう言った。


 「誰が容疑者だ!こら!!」


俊彦はキレる。


 「周囲に居た方々で、状況を知ってる方、居ましたら、情報提供お願いします」


警察官は、周囲に人々に、そう言った。


 「よく分からないんですが、言い争いはしてました」

 「口論の末、突然、女の子が泣き出して、苦しみ出しました」

 「男が女の子を突き飛ばしたように見えました」


そんなことを言っていると・・・?


 「ふっざけんな!俺は、そんなことしてねぇよ!!」


俊彦は激高する。


 「皆さん、ありがとうございます、詳しくは署で聞こう、来るんだ!」


警察官は、俊彦を拘束しようとする。


 「は、放せよ!」


俊彦は抵抗する。


 「こら!暴れるんじゃない!!」


警察官が言った。そんなとき、誰かが足早にこちらに走って来る。


 「どうした~~~!」


別の警察官がやって来た。


 「おう、すまない、こいつが暴れるんで、確保してくれ!」


 「任せろ」


もう1人、警察官、また1人と警察官がやって来て、俊彦を羽交い絞めにした。


 「や、やめろっ!は、放せよ!!」


俊彦は、暴れる。


 「こら!大人しくするんだ!!」


1人の警察官が言う。


 「俺は何もしてねぇ!!」


俊彦は言う。そんなとき、沙耶花が静かに口を開いた。


 「あたしのこと、嫌いだから、こんなことしたの?」


・・・と、沙耶花は言った。


 「こんなことってなんだよ、何のことだよ!」


俊彦は、怒っている。


 「こら!暴れるんじゃない!!」


警察官は複数で、俊彦を押さえつけている。すると、周囲からこんな声が飛ぶ!


 「おい、どうなんだよ?」

 「そんな小さい子、イジメて、楽しいのかよ?」

 「嫌いだから泣かせたのか?暴力振るったのか??」

 「おい、答えろよ、犯罪者!」


 「な、なんだとぉおおおおおおお!!!」


俊彦は、警察官に羽交い絞めされながらも、もがきながら振りほどこうとする。


 「どうなんだ?答えなさい」


警察官の1人がそんなことを言った。


「(冗談じゃない!どいつもこいつも変な勘違いしやがって!!)」


そんなことを思った俊彦は、ふと、沙耶花を見る。すると・・・?


 「 !!!???!?!?!?? 」


俊彦は、確かに、見た!沙耶花が、小悪魔的笑みで俺を見ていたのを!!!


 「なに黙ってんだよ!」

 「早く答えろよ!」

 「これだけ大勢の人間が見てんだよ!言い逃れ出来ねぇぞ!」


周囲の人たちが俊彦にそう言葉を投げつけた。


 「わかったよ、言うよ(言うしか無ぇのかよ?こんなシチュエーションで

 か??)」


俊彦は、静かに口を開いた。


 「( (ミ´ω`ミ))ジイィィーーー」


沙耶花は俊彦をじっと見つめた。


 「沙耶花、聞いてくれ」


俊彦は言った。


 「う、うん・・・」


沙耶花は、返事した。








 「俺、お前が、沙耶花のことが好きだ!大好きなんだあああああああ!!!」







 これでいいんだろ!この場を収拾するには、このセリフしか選択肢が無いんだったら、言うしかねぇし!これで満足かよ、沙耶花め、家に帰ったら覚えてろよ~。


 「うん!ありがとう☆あたしも好き!!大好き!!!」


・・・と沙耶花は言って、警察官の足から離れて、俊彦に抱きついて言った。


 「え?」

 「な、なんだぁ??」

 「あの2人、デキてんのか???」

そんなことを言う周りの人々。


警察官複数は、ぽか~として、少し、羽交い絞めが緩んだ隙に、俊彦が自由になる。


 「沙耶花(もう、やけくそだ!)」


俊彦は、そう言って、沙耶花を抱きしめた。


 「俊彦!(ああ~☆一度言ってみたかったの~これぇ♪)」


沙耶花はそう言って、抱き合う。


 「んだよ~!!」

 「痴話ゲンカかよ~~~!」

 「まったく、人騒がせな!」

 「なんなんだよ、その展開はよ~~~!!!」


周囲の人々がぼやいている。


 「ちょ、ちょっと、き、きみたち!説明したまえ!!」


警察官の1人が、我に帰って、沙耶花たちに言った。


 「ごめんなさ~い☆おまわりさ~ん・・・彼が最近冷たいから、ちょっと本心が聞きたくてぇ・・・」


沙耶花は、警察官の1人に言った。


 「なっ・・・なんて、人騒がせな!!!」


警察官は、怒っている。


 「すみませんでしたぁ☆ペコリ(o_ _)o))」


沙耶花は、周囲の皆さんのほうを向いて謝り始めた。


 「ったくよ~~~」

 「はあ・・・アホくさ、行こうぜ~」


そんなことを言って、周囲の人々が去り始める。


 「苦しいのも演技かね? ( →_→)ジロ! 」


警察官は、沙耶花に言った。


 「い、いえ、心臓発作は、本当です、m(。・ε・。)mスイマセ-ン」


沙耶花は、申し訳なさそうに、おまわりさんに言った。


 「そうか・・・心臓は、もう大丈夫なのかね?」


警察官は、心配そうに、沙耶花に言った。


 「はい、さっき、携帯用のお薬飲みましたから・・・ご心配おかけしました」


沙耶花は、答えた。


 「まったく、今度こんなことしたら、わかっているね? ( →_→)ジロ! 」


警察官が言った。


 「(。・ω・。)ノぁぃ♪ 」


沙耶花は返事した。


 「今回は、厳重注意で済ますけど、2度とやらないように、いいね?」


警察官は、そう言って立ち去って行った。


回想シーン終わり。


 「思い出した?”俊彦”」

 「呼び捨てにするんじゃねぇ!こら!!」

 「2つしか違わないんだから、別にいいじゃない(○`ε´○)プンプン!! 」


沙耶花は、ケチケチすんなって感じで、膨れっ面になる。


 「確かに、あのときは、ああ言った・・・いや、言わされた!」


俊彦は、言う。



 「言ったのは事実だからね、消せないよ」


沙耶花は、言う。


 「で?その録音がなんなんだよ??まさか、それが告白とでも言うつもりか

 よ?」


あんなの告白でも何でも無ぇ!そう思う俊彦であったが・・・?


 「そもそも”俊彦”が約束破ったから、悪いのに、逆ギレですかぁ?」


沙耶花は、冷静だ。


 「だ~か~ら~呼び捨てにすんな!!」


俊彦は、怒る。


 「これ、警察に持ってっちゃおっかな~♪」


沙耶花は、小悪魔的笑みをしながら、そんなことを言った。


 「はあ???そんなことして何の利点があるんだ?」


俊彦は、馬鹿馬鹿しいと思って、聞いてみた。


 「証拠能力があるかどうか、確かめるの」


沙耶花がそんなことを言う。


 「あるわけねぇだろ!そんなもんに!!」


俊彦は、言った。


 「あれだけ大勢の前での告白だよ~!立派な証拠でしょ?」


沙耶花が、言った。


 「行きたきゃ、勝手に行け」


俊彦は、言った。


 「今度また同じことしたら・・・って、おまわりさん、言ってたよねぇ・・・(´∀`*)ウフフ 」


沙耶花は、再び、小悪魔的笑みで、俊彦をけん制する。


 「うっ・・・・・・・・・・」


俊彦は、ちょっと想像してみた。


 「それじゃ、行って来るね♪」


沙耶花はそう言って、出かける準備をした。


 「ま、待て!」


俊彦は、沙耶花を呼び止める。


 「なぁにぃ?」


沙耶花は、振り返って、返事をした。


 「ちょっと、ここに来て、座りなさい」


俊彦は、抑揚のない声で、そう言った。


 「嫌で―す♪」


沙耶花は、そう言って、玄関開けて出て行った。


 「あ、こら!待て!!ちぃ!!!逃がすか!」


俊彦は、慌てて、沙耶花を追いかける。

玄関を出たら、沙耶花の姿が見えた。あれならすぐに追いつく、そう思った。


 「はぁはぁはぁはぁ・・・・はぁはぁはぁ・・・・はぁはぁ・・・」


沙耶花は走って逃げている。しかし、顔色が悪い。


 「さ、沙耶花、止まれ!お前、そんなに走ったら、心臓が!!」


俊彦は、必死に沙耶花を追いかけながら、言う。よし、沙耶花が失速した。


追いついたぞ!捕まえたぞ、沙耶花!!


 「はぁはぁはぁはぁ・・・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


沙耶花の呼吸は速くて荒い、いつもの心臓発作と違う気がする?


 「お、おい、早く、クスリを飲め!沙耶花!!」


俊彦は、沙耶花の携帯用の発作用のクスリを取り出し、沙耶花の口に入れた。


 「げほっ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


だが、沙耶花は、クスリを吐き出し、チアノーゼみたいな症状が出ている。


 「お、おい、沙耶花!しっかりしろ!!くそっ・・・あ、タクシー!!」


俊彦は偶然通りかかったタクシーを呼びとめ、病院に向かった。

救急車を呼ぶか悩んだが、タクシーのほうが早いと判断した為であった。


 「はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・お兄ちゃん?はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


沙耶花は、そう言って俊彦を見た。


 「な、なんだ?」


俊彦は咄嗟に話しかけられて、びっくりした。


 「あたしね・・・あたし、ずっと、お兄ちゃんのことが好きだったの・・・はぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


沙耶花は、目に涙を溜めながら、そう言って来た。


 「もういい、喋るな、もうじき病院に着くから!頑張れ!!」


俊彦は、いつもと違う沙耶花の症状に焦っている。


 「あたしね、お兄ちゃんと結婚したくて、げほっ・・・げほっ・・・げほっ・・・(涙目)はぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


沙耶花は苦しそうだ。

 

 「運転手さん、急いでください」


俊彦は、そうタクシードライバーに言った。


 「はいよ~」


運転手さんは答えた。


 「お、お兄ちゃん・・・あ、あたしと、け、結婚して・・・お、お願い・・・はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・はぁはぁはぁはぁはぁ・・・」


沙耶花の脈が途切れ途切れになってきた、やばい!


 「さ、沙耶花・・・」


俊彦は、覚悟を決めた。


 「し、死ぬ前に、ね、願いを、か、叶えて・・・はぁはぁはぁはぁ・・・・・・・・(泣)」


沙耶花の目が虚ろだ・・・。


 「わかった・・・結婚しよう、沙耶花」


俊彦は迷わず言った。


 「嬉しい・・・ありがとう・・・幸せになろうね・・・・・がくりっ」


そう言って、沙耶花の身体は力なく、だらんとなり、静かに目を閉じた。


 「お客さん、着きましたよ、無線で連絡しときやしたんで、出迎え来てますよ」


運転手が言った。


 「助かる!お釣りは要らない」


俊彦は、万札渡して、沙耶花を抱えて、病院から出て来たストレッチャーに乗せた。


 「発作はいつ起きた?」

 主治医が俊彦に聞いた。

 「10分くらい前です」


俊彦が言った。

 

 「すぐ緊急オペに入る、お兄さんは、手術の承諾書にサインを!」


主治医が言った。


 「はい」


俊彦は迷わずサインした。






そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・









オペは、無事成功した。

沙耶花は助かった。


退院後、俊彦と沙耶花は、結婚式をあげた。


俊彦は、最初、抵抗を試みたが、「あの場のノリでそう言った」だけと言ったが、沙耶花には通用せず、”あんな状況下”ですら、沙耶花は決定的な俊彦のプロポーズを”録音していた”のだった。それを武器に、俊彦は何なく折れた。


ココにも平和な夫婦が1組、この世に誕生したのであった!

                                   完

最凶主婦降臨!

第6話 【新婚生活】~高梁麻美の場合~へつづく。

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