9.(わたし) ペンテスターとは何か / 怒りの爆発
「ペンテスター? 何だそれ」
「ああ、俺たちの
わたしは、突然飛び出してきたその言葉に驚いた。ハッキングと言えば、よくは知らないが、悪いことではないか。
「ハッキング! ナカニシ、ちょっと待って! 何やってるの!」
「心配するなって。
俺たちは雇い主に、ネットワークのどこがどう弱かったかを教える。その情報を
これは立派なお仕事なんだよ。
「そうだ、思い出した……わたしが幼稚園の頃、ナカニシはおじちゃんのパソコンのふた、遠くから開けたり閉めたりしてたよね……全然触ってないのに、不思議だった」
ナカニシはにやりと笑った。
「そうだ。当時は趣味の
「めでたくなんか、ない」
わたしの声は小さ過ぎて、ナカニシの耳に入らなかったようだ。
「そうか……しんちゃん、抜け目ないな。サイバーセキュリティは、業界の
おじさんは、ひとまず安心したようだった。
「良くない」
わたしの声は、またしても届かなかった。
「旬というか、『待った無し』なんだよ」
ナカニシは、
「すいかまだ残ってるぞ。望美、俺の分も食べていいよ。
……何が待った無しかっていうと、アメリカが、
北朝鮮は、
かつてイタリア北部が、南部の犯罪組織『マフィア』に
北朝鮮が経済マフィア国家に成長したら、
そうなったら、周辺諸国、とりわけ日本に対するサイバー攻撃は、
わたしは、胸一杯に空気を吸い込み、腹の底に力を
「ここに、俺たちペンテスターの
わたしは叫んだ。
「
ナカニシは驚いて言葉を止めた。おじさんは、半分立ち上がりかけて、びっくりした顔をこちらに向けた。窓ガラスは一瞬、確かにびりびりと震えた。
わたしは叫び続けた。
「ナカニシはなんで、夢を
だめだ、だめだ、こんなことを言ってしまっては……!
本当のことを言ったら、友情は終わり……昔聞いた、おじいちゃんの忠告が、わたしの心をよぎる。わたしは、
「ごめんなさい、大声出したりして」
ナカニシとおじさんは、一言もしゃべらない。目を真ん丸に見開いて、わたしをうかがっている。
「ナカニシ、今日はうちに
「あ、ああ……清治が良ければ」
「も、もちろんいいよ」
「良かった! わたし、
ごちそうさま!」
わたしはふたりと目も合わせずに、食卓から駆け出した。背後で椅子がばたんと倒れる音がしたが、知ったことじゃなかった。
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