7.(わたし) 友情の始まり / 久闊を叙す
ナカニシは、清治おじさんの
ある夏の日、ナカニシ――当時はまだ中西だった――と清治おじさんは、家の前の道路で、ふたりで
「
「うん、暑いね、きよちゃん」
母親たちが気が付いた時には、ふたりは着てる服を全部脱いで、まっぱだかになって三輪車を漕ぎ、町内を走り回っていたという。けらけらと、嬉しそうに笑いながら。はだかの付き合いだったのだ。
ふたりは通う幼稚園も小学校も中学校も
ふたりの共通の夢は、電子工学の世界で、何かしらとても大きなことをやること。清治おじさんはネットワーク
「それはだな」
おじさんは、すいかを
「おじさんは、コンピューター同士がつながって、情報をやり取りするのが好きで」
おじさんはわたしの顔を見て、わたしがよほどあきれた表情をしていたのだろう、すいかをごくりと飲み込んだ。
「……ナカニシは、コンピューターを組み込まれて複雑な動きをする機械が、つまりロボットとか、今で言うドローンとかが、好きだったってことだよ」
わたしたちは、ナカニシがお
ナカニシはすいかに塩を振り、先割れスプーンで種をていねいに取り除いていた。昔と変わらないやり方だった。
「ドローンか。あの頃はまだクァッドコプターもWi-Fiも無かった。ラジコンヘリ、
「しんちゃんは、アウトドア派だったもんな。
あの頃俺は、先輩の
「俺だって
「はーい」
わたしは、ナカニシの話すことの半分も分からなかったけど、適当に返事した。
「……むしろ俺のほうが、だ。清治が新しいサーバーやらルーターやらあれこれ試したいと言って、買うのを手伝わされた記憶が、結構あるぞ?」
「つまりは、俺たちは持ちつ持たれつだったんだよ」
清治おじさんはナカニシと話すとき、自分のことを「俺」と言う。おじさんの「俺」を聞くのは久し振りだ。わたしは、くすぐったいような、頼もしいような気持だった。
ナカニシは、遠くを見るような眼をした。
「俺たちは……いや、俺たちでさえ、
コンピューターの
それらひとつひとつの進歩が合わさって、言わば
「その時代の訪れには、ネットワーク
おじさんが口をはさんだ。
「大量のロボットは、大量のデータを休みなしに発生させるんだから。それらを
望美は、こんな話は
「ううん。わたし、おじちゃんとナカニシが仲良く話してるの、見てるだけで楽しい」
ナカニシは
「望美は、俺たちが思ってるより、ずっと
ネットワークの話は、清治の言うとおりだ。でも、俺たちの青春時代に、それは訪れなかった。大河の
「何言ってるんだ、しんちゃん。お前の
俺は、
「そんなことはないさ」
「いや、俺は
話が
「ねえ! ナカニシは今、どんなロボットを作ってるの?」
ナカニシは苦笑いした。
「それがな……作ってないんだよ」
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