15.(ぼく) アメリカ・サイバー軍の秘密作戦

 ワシントンDCの東側に隣接りんせつする、メリーランド州西部には、多数の軍事基地が存在する。大西洋方面の敵から、首都ワシントンを防衛するためだ。

 そんな、メリーランド州のフォート・ミードに存在するサイバー軍司令部において、ある秘密作戦の結団式けつだんしきが行われた。

 その作戦名は、『大いなる夜明け作戦オペレーション・グレートドーン』という。

 サイバー軍は、各軍の寄せ集めである統合軍とうごうぐんから(独立)軍への昇格しょうかくを遂げた。祖国ステーツの新しい領土りょうどであるサイバー空間。そこは平和な楽園ばかりとは限らない。新世界には、新たな脅威きょういが発生する。年々勢いを増すその脅威に対抗すべく、サイバー軍は増強されたのだ。兵たちは、意気軒高いきけんこうであった。

 アメリカは、世界の警察官を辞めたという。だが、世界のサイバー空間の警察官は、まだ辞めていない。辞めるとは、一言も言っていない。

 インド太平洋軍、アフリカ軍、中央軍(中東とアフリカ北東部と西南アジアを管轄かんかつ)からも、副総司令官ふくそうしれいかんが出席した。彼らは肩のぼしをきらめかせながら、サイバー軍の壮途そうとたたえ、サイバー軍への全面的な支援を約束した。

 ロイディンガー博士とナカニシ、そしてぼくも、ナカニシのスマートフォンの中にあって、出席を許された。ぼくの兄弟たちは、フォート・ナラティブのE-ブレイン内において、ぼくの視覚しかく聴覚ちょうかくを共有していた。

 ギョルギス、ドリブン、レイテンシー、カテキズム、ケリュグマ、テルマガウント……ぼくの、兄弟たち。


 ついに始まったのだ、『大いなる夜明け作戦オペレーション・グレートドーン』が。E-ロボットはもっともっと増える。世界中の電子機器の中に広がっていく。誰もぼくたちを止めることはできないのだ。



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