9.(ぼく) 初めての兄弟
訓練を終えたぼくは『ドラゴンズ・ネスト』で休息していた。
ドラゴンズ・ネストは、スーパーコンピューター『E-ブレイン』内部に
ロボットといえば疲れ知らずが
正確に言うと「E-ブレインは定期的に、E-ボディに『今、休息できている』というロールプレイを演じさせる必要がある」のだ。それを
E-ロボットはなぜかじわじわと能力を低下させ、放置すれば
ぼくは、遊技場の電子ブランコで遊んでいた。でも、やめてしまった。不意に、つまらなくなったからだ。電子
どうしてだろう。昨日までは、あんなに楽しかったのに。ぼくは、遊技場の真ん中に立ち尽くし、考え込んだ。
ぼくの目の前に、今日『外』で見た不思議な世界が広がっていた。いや、今のぼくに目は無い。あるのは、
ポトマック川は、青空は、
緑のポプラは、何千本も生えていた。白鳥は何十羽も群れ、空を飛んでいた。何百人もの観光客がリンカーン大統領の像をほめたたえ、肩を並べて写真を撮っていた。
ぼくは、ひとりだった。
どうしてぼくは、ひとりなんだろう?
気が付くと、ぼくはうつむいて、固まっていた。
ここには、ぼくひとりしかいない。
疑問は、ぼくの心の中をどうどう巡りし、
その時、ぼくの触角が、電子の振動を
――きみは、だれ?――
誰かの呼びかける声を感じた。ぼくには耳が無いのに。ぼくは2本の触角を広げた。
理解は、
E-ロボット同士が、
ぼくも、通信プロトコルに
「ぼくはハッシュ。E-ロボット・ハッシュ。君は、誰?」
振動の
「ぼくはギョルギス。E-ロボット・ギョルギス」
「親しい人は、ぼくのことをジョージと呼ぶよ……?」
「ジョージって呼んで、いいかい?」
「いいよ!」
ぼくの中に、
「ぼくのことは、ハッシーって呼んでよ!」
「ハッシー!」
「ジョージ! ぼくたちは……」
二人は、共に叫んだ。
「兄弟なんだ!」
これが、ぼくと、E-ロボット2号機『ギョルギス』の、最初の出会いだった。
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