act.2-4.5 “ケイ・ナカノ”への事情聴取

西暦2098年4月25日 4時30分

ジャパン ヤマガタ県ツキシマ区

ツキシマ区立病院内

(ジャパン標準時4月25日 13時30分)

“ケイ・ナカノ”への事情聴取


「クロ・エマと初めて会った時間と場所は?」

「4月21日の昼前…だったと思います。場所は、私の家の近くです」

「接触した理由は?」

「彼が私のおばあ……祖母に道を尋ねていたので、英語が話せない祖母の代わりに私が教えました」

「その内容は?」

「町まで歩いたら何分くらい掛かるかと聞かれ、歩いたら4,50分は掛かると答えました」

「そこで別れたのか?」

「いえ、私も町まで買い物に行く予定だったので、車で町まで送りました。そこで別れました」

「話した内容は?」

「えぇと、クロは観光でこの町に来ていて、道に迷っていたと。あと両親は町のホテルに居ると話していました」

「その次に接触したのは?」

「その日の夜です。私が町から家に帰っている途中に、また私の家の近くの道を一人で歩いていたので声を掛けました」

「なぜクロ・エマは戻って来た?」

「両親が仕事の都合で帰国したので、海沿いでキャンプをする為と言っていました」

「その後は?」

「キャンプ道具を持っているように見えなかったので、泊まる場所が無いなら私の家に泊まれば、と聞きました。それから昨日まで叔父の農作業を手伝いをしてもらう代わりに、うっぐ……家に、泊めていました……」

ケイ・ナカノが泣き出す。

取り調べは続けられると判断したため続行。

「その間、クロ・エマが一人で外出したり、他の人間と接触したりしていたことは?」

「……特に……。あ……24日の朝から急に図書館に行きたいと言われたので、ツキシマ駅まで車で送りました。大きな図書館が良いと言っていたので、中央区立図書館の場所を教えました……。昼過ぎに帰ってくるまで何をしていたかは、分かりません……」

「……図書館から帰ってきて、何か変わったことは?」

「……特に」

「分かりました。一緒に過ごしてきた中で、変わった言動等は?」

「……えと……」

ケイ・ナカノは言葉を詰まらせる。

「……分かりません」

これ以上有益な情報は出てこないと判断し、取り調べを終了する。

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