第4話スカウト
その瞬間シュンは目を見張ることとなる。しっかりと縛っていた縄が風に吹かれたような軽やかな音とともに、いとも簡単に落ちていったのだから。シュンは今まであの縛り方で、縄抜けをできた人間は知らなかった。
「君はとても今、混乱しているね。」
「え、何を」
謎の女は自分の右手を差し出した。
「ねえ、私の旅を手伝って」
「は? 」
「大事な水を他人に分け与えられる人間だ。そんなお人好しは私を見捨てられないだろう? 」
「いや、断る」
そんな面倒なこと、とシュンは思った。それに彼女は特に女の中でも面倒な類に入ってくるだろう。そんな面倒は御免だ。
「ほう? 」
「なんだよ」
「いや、君は表面的は優しく善良的でありながら、その実伸ばされた手はあっさりと放すんだな。」
「何が言いたい」
「簡単なことさ。釣った魚に餌はやらないのはいかがなものかと思うのだがね」
乗りかかった船だと言わんばかりのアーテの剣幕に、シュンはふときっと彼女に勝つことはできないのだろうなと思う。
「分かったよ、君の旅の手伝いって何が目的でどこまで行くんだい」
「ありがとう。目的は簡単さ。私は人間について知りたいんだ。安心してくれ、君の食料も水も私は全く必要のないものだ。君のそのオートモービルの後ろに私を乗せて、それで何処かへ行ってくれればいい。」
「君はいったい」
「私はアーテ、人間ではないが、それについては追々話していくよ。よろしくね」
シュンはアーテの右手を力なく握り返した。
「僕はシュン。よろしく」
「んー。シュン人は何処へいるんだい」
「少なくとも、数日オートモービルを走らせないとないよ」
こうしてアーテという謎の少女と、シュンの奇妙な旅は始まった。
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