(4)プール

 らのさんの居る神社に通うようになってから数日がたった。

 あの神社の名前も、なぜいつもらのさんがあそこに居るのかも全然知らないけれど、なんとなく、毎日あの神社へ赴いてしまう。

 インターネットを使って神社の名前を調べようとしたこともあるのだが、どうやらGoogleマップには登録されていなかったようで、その神社についてはでてこなかった。


 そういえば、今日は友達とプールに行く約束をしていたような気がする。すっかり忘れていた。

 すっかり忘れていたものだから友達なんて言ってしまったが、果たして本当に友達だろうか。少しだけ仲がいい、それだけなんじゃなかろうか。

 がしかし、そんなことを考えていては人生やっていけないような気がする。

 スマホを確認すると、その友達からの連絡が入っていた。内容は、

『今日十時に学校集合ね!』

と、こんなようなものだった。時計を見ると既に九時半だった。急いでプール用の道具をまとめて、それからいつもの鞄を持って家をでた。

 家から学校までは歩いて約二十分だ。時間はまだまだ十分じゅうぶんにある。

 主婦が井戸端会議をしていたり、小学生が笑いながら駆けていったりといったような、そんなところを通り過ぎて、学校が見えてきた。横断歩道をゆっくりと渡って、学校の前に到着した。既に一人待っていて、おはよう、と声をかけてきた。

 全員集合してプールに行って、泳いだ。なんとなく人と自分を比べてしまう自分が嫌だったが、それでもなんとなく、楽しかった。


 一時頃に家に帰ってきて、炒飯を作って食べた。少し味が薄かった。


 そのまま鞄を持って神社へ出かける。こちらのほうが、なんとなく足取りが軽く感じる。

 丘陵に足を踏み入れると、街中よりは幾分か涼しい。木々の間を縫って、少し近道をしてみようかと思う。

 大体のめぼしをつけて森の中へ入りそのまま歩くと、少し開けた草原に出た。左をみると、大きな赤い鳥居があった。

 鳥居を潜ると、らのさんが、水着を着て、小さなプールで、水浴びをしていた。

「あっ」

 らのさんは顔を赤くして、さささーとどこかへ行ってしまった。

 どうも暑くて仕方がないので、私は靴と靴下を脱いで、足をプールにつけてちゃぷちゃぷと遊んでみる。

 暫くそうしていたららのさんがいつもの着物を着て戻ってきて、

「あっ」

 と思わず声がでてしまった。同じような反応をしてしまったことに思わず笑みがこぼれ、私は持っていたハンカチでがんばって足を拭いてプールから上がった。

「な、なんか恥ずかしいところを見られてしまいました……」

 らのさんは拝殿の縁側に座ってそう言った。

「私だって見られましたし、お互い様ですよ」

 私はらのさんの隣に座った。

「水着じゃないですか! 水着!」

「いいじゃないですか! スタイルいいんですから!」

 などとこんな生産性のない、けれどとても楽しい会話をして、そしてその後本を薦めあったりして、本を読んで、そうして夕方になった。

 らのさんは、今日は「弱キャラ友崎くん」という本を薦めてくれた。また明日、買ってみようかな、と思う。

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