半端者のダンス
詩一
第01話 夢見る少年が安寧に縋りつき続けた結果が今の僕で
「じゃあまず、お名前とご年齢、現在のご職業、それから自分が諦めてしまった夢と中途半端だと思える才能をいくつか教えてください」
「はい」
僕は、とある会社の面接に来ていた。
人生でおそらく二度目となる、就職活動。
とはいえ、今面接を受けているこの会社は、副業としての就職を前提としている会社だった。つまり、転職をするためにここに来ているわけではない。そんなことはできなかった。安定と安心を重んじる僕にはとうてい。
転職ができない理由などはなかった。全く勉強ができないわけでもないし、役に立つかわからない資格ならそれなりに持っている。今よりも条件のいい会社なんてたくさんあるだろう。今の仕事に誇りとやりがいがあるというわけでも、そもそもやりたい仕事というわけではない。ただ食って寝る為だけの、一人が生きていくのに必要なお金を手に入れる為だけの仕事。
しかも、これからの未来が約束されているような会社ではない。自分の生涯のパートナーと出会えるような機会があるわけでもない。
なぜ、そんな会社にずっと在籍しているのかもわからない。知っている人がいるのならば教えてほしいが、当の本人が知らないというのだからもう誰も知る由がないのだ。
だから転職できない理由はない。
その時が来たらきっとするはずのその時がきっともうずっと来ない。
来ないことに安心さえしてしまっている。
安寧に縋り付き、それが当たり前になり、そうではない生活を恐れ、変化を求めず平々凡々と暮らす。子供の頃に思い描いた将来の夢とはえらくかけ離れた生活を続けていた。
もはや、踏み出す勇気とか、そういう“あと一歩”の領域にはいない。
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