第8話 さらっと

 人魚の涙、リッター単位でもっている。忘れな草も999もあるし、ヴァンパイアの生き血、こちらもリッター単位。


 こんなもの何に使うつもりだったのだろう。

 調合のスキルはそれなりにあがっているけど、まだ知らないレシピだろうか。

 それとも賢者なら作れる特殊なレシピだろうか。



 この私に頼むくらいた。ユリウスはよほど欲しかった物なのかもしれない。

 調合を選び、ユリウスが言っていた材料を選んでみる。

 他にも材料がいるならアウトかと思いつつ量を調整していると。


 調合可能アイテム ??? というのが表示された。

 私のレベルが低いので、名前が表示されない格上の代物だけれど、???が表示されるということは、合成できる確率が0%ではない。


 材料だけはたっぷりあるのだ。



 怒ってばかり、いや、怒らせてばかりのユリウス。

 でも、彼は不本意かもしれないけれど、よくしてくれていると思う。


 リビングのソファーに私がくつろいでいると、近くに座ろうとする程度には歩み寄りを見せている。

 あのユリウスがねだったものを私はサプライズで作ることにしたのだ。

 きっと喜ぶに違いないと。



 何回どころか何百回試行錯誤を繰り返したところ、ついにボンっと爆発して黒い謎の塊ではなく。

 可愛らしい瓶に入った、薄いピンクの液体が完成した。



 ??薬

 人魚の涙、忘れな草、ヴァンパイアの生き血で合成された強力な??薬。

 これを飲んだ者は??に?た者の?になる。

 効果の持続時間 一?

 恐ろしい効果を持つ秘薬中の秘薬。

 この薬のせいで運命すら?ってしまうことから。

 通称 ??の?薬と呼ばれている。

 MP回復薬の色と酷似しているので注意が必要。といっても、この薬を用意できる猛者などこの世界にほとんどいない。



 鑑定は全然あげてなかったし、私のレベルよりも格上の薬だったため、説明文も?だらけだ。

 とにかくレアなものだということはわかる。



 瓶が可愛いから、リボンで軽くラッピングするだけで十分プレゼントみたいになるじゃない。

 喜んでくれるかな……。


 欲しかったのプレゼントのために作ったよと直接言うのは恥ずかしくて、簡単な夕食と一緒に、『いつもありがとう』と手紙を添えて置いてみた。

 今日は帰宅が遅い日のようで、先に風呂をいただくことにした。




 お風呂からあがるとちょうどユリウスが帰ってきた。明らかに今日は疲労困憊という感じだ。

 どういう反応をするのだろうかと、こっそりと様子を見守る。




 私の気持ちは伝わったようで、机に置いてある瓶を見るとユリウスは大事そうに手に取った。

 よかった、喜んでくれている。すごい欲しかったものなんだろうな。

 すると明らかにヤバそうなやつなのに、ユリウスは瓶の蓋を開けると飲もうとした。



「ちょっとまった!!」

 思わず飛び出してしまった。

「わっ!? いきなり飛び出てくる奴がいるか。ともかく疲れていたからこういうのは助かる。ありがとう」

 照れくさそうに、私にお礼をいうと、ユリウスは迷うことなく液体を口に流し込む。

「それ何かに使う奴じゃないの? 飲んで大丈夫なの? MP回復薬に似てるけれど違うわよ」

 私がそういうと、口に含んだまま、ユリウスは瓶に残っているやつに鑑定をしたようだ。



 ユリウスの眼には薬の効能がハッキリと見えた。


 惚れ薬

 人魚の涙、忘れな草、ヴァンパイアの生き血で合成された強力な惚れ薬。

 これを飲んだ者は最初に見た者の虜になる。

 効果の持続時間 一生

 恐ろしい効果を持つ秘薬中の秘薬。

 この薬のせいで運命すら狂ってってしまうことから。

 通称 悪魔の秘薬と呼ばれている。

 MP回復薬の色と酷似しているので注意が必要。といっても、この薬を用意できる猛者などこの世界にほとんどいない。





 ユリウスは私が今日一日頑張って用意してやっと作った薬を、噴出した。



「おまっ、お前は……なんてものをシレッと食卓に置いておくんだ。」

 しかも喜ぶどころか、勝手に間違えて飲んだ癖にいつも通り私に怒りだす。

「せっかく用意したのに……」

 確かに、注意書きにMP回復薬の色と酷似しているから注意とかあったと思うし、一言欲しがっていた薬とか書いておけばよかったのかもしれない。


「いや、その、それは驚いてしまって。というか、この薬どうやって調合したんだ……」

「鑑定はレベルが低くて何を作ったかよくわからなかったけれど。調合はそれを何とか作れる程度には上げてあったんです。すごい苦労して作ったのに、ユリウスのバカーーーーーー」

 私は相変わらずぷりぷりと怒ってばかりのユリウスに対して、苦労したこともあり怒りで家を飛び出した。




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