婚約破棄、当日2

 私はお母様の言葉にちょっとした目眩がした。

 風邪では無く、別の目眩。

「なんで、そんな事を・・・・・・。」

「私もわからないわ・・・・・・。更にミッシェル男爵令嬢との婚約を宣言したのよ。」

「嘘でしょ・・・・・・。」

 私はじんわりと冷たい汗が出てきました。

「王子の取り巻きの他の子息も一方的に婚約破棄を宣言して、完全に修羅場になってしまったのよ。」

 お母様は今にも泣きそうにしています。

 何せ跡取りとして、育ててきたお兄様が大衆の前で一方的に婚約破棄を宣言したのですから。

 この婚約にお母様達がどれだけ苦労してきたのかを見てきた私はお母様の落胆ぶりが凄くわかります。

 更に言えば、シューバルト家とローグナー家の力関係にも原因があります。

 同じ伯爵家でも、ローグナー家の方が王族と親しい間柄で、どの貴族もローグナー家との繋がりを求めています。

 お父様やお母様は努力の果てにフェリア様との婚約を取り次げたのに、完全に水の泡です。

 面子を潰されたローグナー家は黙っていないでしょう。

 きっと、これから大変な事が起こる事になります。

「ただいま・・・・・・。」

「お父様、お帰りなさい。あの、お兄様は?」

 お父様が疲労困憊な顔をして帰って来ました。

 お兄様は・・・・・・、おりません。

「あいつは、城の牢屋に入れられているよ。王子の他の取り巻きやミッシェル男爵令嬢と共に。下手したら勘当するかもしれないから覚悟をしておいてくれ・・・・・・。」

「勘当て・・・・・・、あの子は跡継ぎなんですよっ!」

「・・・・・・ミッシェル男爵令嬢は『魅了』の魔法を使っていたんだ。」

 その言葉を聞いて私達は固まりました。

「先祖代々『魔法騎士』である我が家の跡継ぎが魅了の魔法にかかっていたんだ。気づかずにだ。」

 はぁー、と溜め息を出すお父様。

 我が家は『魔法騎士』という魔術師でもあり騎士でもある、ちょっと変わった生業をしています。

 言ってみれば魔法のプロフェッショナルでもある我が家が魅了の魔法にかかってしまった。

 これだけでも我が家の名を落とす事が出来ます。

 とりあえず、全ては明日から、という事で私達は床につきました。

 我が家ははたしてどうなってしまうんでしょうか・・・・・・。 

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