婚約破棄、当日

「ん・・・・・・。」

 目が覚めた。

 体はまだ重い。

 外はまだ暗く月明かりが窓からさしてくる。

「喉が渇いたわ・・・・・・。」

 私はベッドから起きて立ち上がった。

 ちょっと頭がクラッとするが私は部屋を出て厨房へと向かった。

 深夜ともなるとメイドや執事達も既に寝ている。

 『自分の事は自分で出来る限りする』が我が家のモットーなのでたかだか水を飲みに行くだけに起こすのも申し訳ない。

 厨房について私は水を飲む。

 冷たい水が私の喉を潤していく。

 少しだけ気分が良くなった。

 私は部屋に戻ろう、としたその時、玄関の扉が開いた。

 お母様達が帰ってきたみたいだけど、その時、違和感を感じた。

 今はもう深夜でパーティーは既に終わっているはず。

 なのに、この時間の帰宅。

 パーティーで何かあったのだろうか。

「お母様、お父様、おかえりなさい。」

「ミリア、起きていたの?」

 帰ってきたのはやはりお母様だった。

 しかし、顔色が悪い。

 風邪をひいている私よりも顔色が悪い。

「喉が渇いたので水を飲んでいたんです。お母様、何かあったんですか?」

「えぇ・・・・・・、まさか・・・・・・、レモンドがあんな愚かな事を・・・・・・。」

「お兄様が何かやったんですか?」

「・・・・・・貴女の耳にも入る事だから、聞いておいた方が良いわね。今日、卒業パーティーの場で第一王子が婚約破棄を宣言したのよ。」

「・・・・・・はい?」

 第一王子というのは『パトリック・ハルミナ』様の事、我が国の王族であり将来の国王である。

 その婚約者は『マリアル・メイカード』様で、その立ち振舞いは正に『淑女の鏡』というぐらいの学院に通う女子の憧れの存在です。

「なんでパトリック様は婚約破棄を宣言したんですか?」

「別に好きな子が出来ちゃったみたいなのよ。相手は男爵令嬢の『ミッシェル・カンバーニ』、ミリアも聞いた事があるでしょう?」

 そういえば、よくパトリック様と一緒にいる所を見た事がある。

「その事がお兄様と関係があるんですか?」

「レモンドは事もあろうに、第一王子と共にマリアル様を断罪したのよ。」

「だ、断罪?」

「マリアル様は勿論冤罪よ。どうもレモンドはパトリック様と共にミッシェル男爵令嬢の虜になってしまったみたいね・・・・・・。」

 えぇ~・・・・・・。

 私、軽く目眩がしてきました。

 どうして、お兄様がそんな事を・・・・・・。

「更にレモンドは取り返しのつかない事をしてくれたわ。」

「余り聞きたくないんですけど、何があったんですか?」

「フェリア様が咎めたんだけど、フェリア様に対して婚約破棄を宣言しちゃったのよ・・・・・・。」

 ・・・・・・何をやってくれてるんですか?お兄様。

  

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