第五十節 戦歴と、士紅の行き先。
「聞いたぞ
「校内新聞も号外出してたねー」
「すごーい! おめでとうッ」
「
硬式庭球部部長・
地区大会予選前に、重ねた戦績を受けての事だ。
「全国大会の緒戦である地区大会予選が始まるのは、来週の公休日からだ。練習試合の勝ち点など数に入らん」
自席で眉間に
「堅いな
「あははっ、言えてるね」
青一郎とメディンサリの反応に、言いたい事を山のように不満を積もらせる様子の昂ノ介。だが、同級生も混じる手前、
「お~、
「すっかり庭球部の集合場所よねー」
「だよねだよね。良かった! 一年五組で」
同級生が口で差す通り、
「悪い、在純。これから抜ける事になった。監督には連絡済みだから、安心してくれ」
「そうなんだ。分かったよ」
「では、放課後までに」
「ねェねェ、丹布くゥん。良い匂いするけど、どこの香水付けてるのー?」
「わァ、本当だー。良い匂いー」
間近にいる制服を着崩した女子達に、士紅は言葉を切られてしまった。
話しの内容を聞いていない女子達から助けてやるべきか。そんな気配を立てている様子の仲間が決めかねていると、士紅は対応してしまう。
「香水なんか付けないよ。校則違反だろう」
「えー、でもするよね」
「うん。するするー」
機会を得たと言わんばかりに、女子達が士紅に
「だから違う。あぁ、これかな」
何かを思い出したのか、
「わァ、カワイイ!」
「この鈴、聞いた事ない音がしたねー。どこで売ってるの?」
「残念、売り物ではないんだ。身内が作ってくれたから」
士紅は、まったく残念そうな顔ではなかった。言葉と端整な顔が一致していない。もはや、お決まりになっていた。
「えー、あたしも欲しいー。丹布君からお願いしてよー」
「一応、尋ねてみるが物凄く気難しい相手だから、期待はするなよ。では、また後で」
最後は、仲間に断りを入れた士紅が素早く退場する。女子達の標的は、残る庭球組に向けられるが、本鈴が響き救われる事になった。
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