第四十九節 コートでの正装とは。
五月。手入れの良い
園芸委員会や用務員の維持と手間は、ここ
南側に抜ける空間から、青々とした葉桜の並木を眺めていたのだが、手前の屋外練習場の風景を目に入れ、
「随分、数も減ったよな~」
「一六四人から、四三人になりましたからね」
「
雨天は、特別教室を押さえての会合か、「男も厨房に立って奥さんを助けよう!」との、顧問・監督の
当然、
急な天候による変更でも、蒼海学院自慢の購買施設〝
「うんうん。良い仕上がり具合です」
灰色の記録用ファイルを抱えた、二年生部員のイレイユ。ソバカスが目立つ彼の顔が、不安そうな表情を浮かべる。
「でも監督。ここ最近、練習試合が多過ぎませんか。平日、公休日問わず入りますよね。
「ふっふっふっ。甘いですよ、イレイユ君。彼らの運動量と努力は、練習試合当時のそれではありません。まして、手の内を全て
「は、はい!」
深歳とイレイユの会話が耳に入り、改めて防護柵の向こうへと、蓮蔵は眼鏡越しの視線を転じる。
「確かに、対外戦を重ねるたび現地での目もありますが、他校からの視察も増えましたね。無許可の方も、いらっしゃいますし」
「観客だと思えば良いじゃん~。俺は気にならないけど」
「それは頼もしい! 試合が進めば人目は増え続けます。どのような視線の中にあっても、思う力量を発揮しないと日々の積み重ねも、出し惜しみで終わりますからね」
会話に入って来た深歳を見た都長は、ある事を思い出し、言葉で捕まえる。
「あ~! 監督、はいはい! 試合って事で質問です~!」
「はい! 何でしょう、都長君!」
「俺達、一応、蒼海学院中等科の男子庭球部の、代表じゃないですか」
「一応ではなく、立派な選抜組ですよ」
「もうすぐ地区予選ですし、試合着って、どうなってるのかな~と。この間、練習試合なんですけど俺達の学校指定の体育着見た相手校に、からかわれて少々悔しい思いをしました」
話しを聞きつけ合流した、
「下らんな。体育着も学校の誇りを
「でもよ、オレ達の体育着、桃色だぜ? やっぱさぁ、こう、せめて
「私は結構気に入っていますよ。普段は選ばない色ですから」
蓮蔵が、肯定的な感想を出す。未だ見ぬ試合着について、桃色の体育着姿の強化組が意見を交わす風景がある。そんな彼らを見ながら、深歳は白衣を着用した背を丸めて笑みを浮かべていた。
頃合い通り。需要と供給が果たされる嬉しさを
その深歳の様子を別角度から、それぞれ眺める
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