第十四節 御曹子達の、お気に入り。 その一
「部活がないと、どうも落ち着かんの~」
参考までに。屋根は、今時にしては珍しい天然スレート製。青黒色が示す所は、粘板岩から成る事を表している。
壁は、海岸地層の特徴から切り出された石灰岩が、表層を飾っていた。
また中庭を挟んだ西側には、四年生から六年生の同じく、六階層教室棟。要するに、
「……身体を休めるのも、競技者として重要な事だぞ」
窓を背にする
「そりゃ、そうかもしれないけどさぁ~」
教壇に腰掛け、
放課後は庭球部活動。そんな日常が定着しつつあった。この日は、冬場とあって冷えはするが、陽も射す良い天気の放課後。
一年五組の教室。窓際、最前列の
誰が決めた訳でもなく、何かあると真ん中の数字の組に、自然と集まり出していた。他愛もない会話で間を
気付けば。会話の輪から、いつの間にか外れ、ケータイで通話中の
校則では、自己責任の上で持ち込みは可能だ。授業中以外なら使用可能だが、会った日から士紅のケータイ姿は目立っていた。
使用中は皆から背を向けている場合が多い。見えていたとして、その不動の表情から内容は読めず、それ以前に判別不可の異郷の言葉。
数カ国の言葉を操る彼らの耳には、三種類以上の言語を繰る様子が分かるようになっていた。
本音は気になっていたのだが、生まれ育ちによる性質が邪魔をして、気軽に通話内容を聞く事は出来ないらしい。
そのうち、士紅の通話が済んだ。気が強そうな濃い眉を軽く上に一つ動かし、ケータイを畳む。
珍しい仕草に隙を
「
「ん?」
「おっと、まだ電話を
蓮蔵の話しの内容に、興味を示したメディンサリと都長が飛び付いた。
「オレも、丹布の番号知りてぇな」
「やった~、教えてくれんの?」
「待ってくれ。教えてやりたいが、特殊な仕様になっているから無理だ。こちら側からは誰にでも繋がるが、大元で着信指定が掛けられている。皆に番号を教えても、私には繋がらない」
丁重に断りを入れる士紅の様子に、礼衣が話しを振った。
「……要するに、お前は普通のケータイは持っていないのだな?」
「う~ん。そう言う事になるのかな」
「あ、じゃあさ、これから丹布君のケータイを皆で買いに行こうよ。俺も、そろそろ新しいケータイと交換しようと思っていたんだ」
「それイイじゃん! 丹布、今、学生証と身分証明は持ってんだろ」
「あぁ、大丈夫だ」
新しい興味の対象に、メディンサリが目の色を変える。
「決まりじゃ。行くぞ」
目的が決まり、千丸は立ち上がった。
「……ならば、セツト駅構内のモールはどうだ? 各企業の直営店が、一つの店舗に収り品揃えが充実しているし、現地解散にも適している」
「そうだな。異論はない」
礼衣が話しを
「よ~っし! では出発~!」
都長の元気な誘導の合図により、一同は荷物を手に取った。それぞれが借りていた椅子を戻し、会話を途切れさせる事なく移動を開始した。
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