第105話12話 仁義なき戦い

 

「……騎士? ……ユーリア、他にも適任者はいるのだ。お前の望みは叶えてやりたいが、リュートの負担をこれ以上増やすことは出来ない」


腐王女の突飛な発言に対し、王様意外そうな顔をした後、すぐに真面目な顔でそう諭した。


「(そうですよ、急に何故そんな事を?)」


俺も急にそんな事を言い出した腐王女が理解できずに、小声で尋ねた。


「(だって婚約者は嫌なんでしょう? 専属の騎士なら、一緒にいても不自然でないし。それにコレも私の死亡フラグ回避に重要な事なの。……本来、私に付けられる筈の騎士は、攻略対象者なのよ。続編のだけど)」


王女が俺の疑問の答えを小声で言った。


は? 続編?

マジかよ……。

そう言えば、前世でファンディスクがどうのこうの言っていた気がする。

父様もメインではないが、攻略出来るようになるとも。


「(攻略対象者でも別に問題ないのでは?)」


会う手間も省けると俺は言った。


「(死亡フラグって言ったでしょ! 私、その人に殺されるエンディングもあるから!)」


俺が面倒臭がって適当に言っているのに気付いたのか、腐王女少し怒ったようにそう説明した。


殺されるって……。


聞く限り、ゲームの・・・・王女の性格では殺される要素は見当たらないのだが。

ゲーム内では、性格も良好で非の打ち所のない美少女だと聞く。


……ユーリのシナリオと同様であれば、あり得ないことでもないのかもしれないけれど。


「おいおい、俺達をおいて2人で仲良く内緒話か? 本当に仲良いんだな……やっぱり婚約しないか?」


「しません!!」


俺はすぐに否定した。

王様は俺達2人のやり取りを微笑ましげに眺めながらも、今は少し意地悪げに笑みを浮かべている。

ニヤニヤというやつだ。

両陛下の前で、少し話し込み過ぎたみたいだ。


……でもまぁ……やっぱり情報交換の場はある程度必要だ。

流石に俺から外に引っ張り出しといて、放置するのも可哀想か…………腐ってはいるが一応は王女だし、一応は。


「こほん! ……王様達の前で、話し込んでしまい失礼しました」


「いや、全然気にしてないぞ。ユーリアは、今まで友人も1人も居なかったからな。親としては喜ばしい限りだ」


俺の謝罪に対し、王様はニヤニヤするのを止めて鷹揚に笑った。

友達0人とは、前世の俺も似たようなものだが寂しいな。

今は同年代の友人に囲まれ笑っている分、余計にそう思う。


それにしても。先程の腐王女の事を心配していた事といい、王様は随分と子煩悩なようだ。

俺と腐王女をくっ付けようとするのは、本当に余計なお世話だけれど。


「ありがとうございます。……それで先程のお話ですが、王様がお許しになるのなら僕は引き受けたいと思います」


……不本意ではあるけれど。

婚約よりかは幾分かましである。


「本当にいいのか、リュート? 俺達に気を使う必要はないぞ? それにユーリアは命を狙われる身だ。刺客も送られて来るだろう。……それでも引き受けるのか?」


「私達としてはありがたい話ではありますが、これ以上貴方の負担を増やすことは出来ません。ユーリアの我が儘に付き合う必要はありませんよ?」


王様と王妃様は俺が気を使っていると思っているのか、断っても構わないと言ってくれた。

2人とも、真剣に俺の事を心配してくれているのが分かる。

そんな2人の為にも、俺は腐王女の矯正を頑張ろうと心に誓った。


「いえ、気を使っているわけではありません。婚約は嫌ですが、騎士という立場は僕にもメリットがあるのです。だから、お受けいたします」


「……リュート、面倒をかけてすまないな。王としても父親としても、どうかユーリアを頼む」


王様は席を立ち上がり、俺の頭をワシワシと撫でた。

喜んでくれているのは分かるが、髪がボサボサになるのでやめて欲しい。


「ユーリアも我が儘を言ってはいけませんよ」


「はい! お許しいただきありがとうございます!! リュート君には、学園・・での警護を頼もうと思っています。あまり迷惑はかけられませんし、お城には沢山の騎士達がいるので、安全は確保出来ますから。でも学園での警護となると、本物の騎士を連れていては、目立ってしまいますから。その為にお願いしたのです!」


王妃様に腐王女はピシッと手を上げて無邪気に応えた。


……んん?


今聞き捨てならない事が聞こえた気がした。


「ユーリア……貴方、学園に行くことを決めたのですね……確かに、学園内の警護では同年代でも特に力のあるリュートが適任でしょうね」


王妃様が、納得したように言った。


は? 学園??

ちょっと待て!


俺を置いて進んでいく話に困惑する。


「え? 確かに王女は来年通える年齢になりますが、僕はまだ7歳なのですが……」


俺は猛烈に嫌な予感がしながらも、僅かな可能性を信じてそう言った。


「奨励している年齢はな。だが、従者なんかは主の学年に合わせているから、飛び級くらい出来るぞ? 特にお前は優秀なのだから、何も問題ないだろう」


「い、いやそれは……」


王様が大丈夫だと優しく声をかけてくれるが、俺はそれに素直に頷けない。


……王女と同学年?

それはつまり……、ゲーム開催時に


第3学年 オズ様、兄様


第2学年 攻略対象者3名、腐王女+俺?


第1学年 ユーリ、エド様、リリス、ヒロイン


になるって事だよな!?


今まで、俺はゲーム開催時期はヒロインが高校一年生である1年間だと考えていた。

だから、その時中等部にいる俺は蚊帳の外だと思っていたのだ。


「…………………………」


「リュート君と学園に行くの、とても楽しみです! (1人だけ逃げられるなんてさせないからね!)」


腐王女は可愛らしい笑みを浮かべながら、本音を小声で溢した。

腐王女は初めからそれが目的で騎士の話を持ち出したのだ。


や、やられた!!?

この女、俺を嵌めやがった!!

暢気に笑いやがって、てめぇ後で覚えてろよ!?

絶対、絞める!!


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