第97話04話 ご指名は王様で

 

どうしたものかな……。


俺は王女と接触する方法を考えていた。


手っ取り早くやるなら、手紙だけど……。


相手の性格や目的が分からない限り、一方的に此方が転生者と知られた上に、自分は黙秘を決め込まれる可能性もある。

相手は王家の人間だ。

友好的な態度だったらいいが、敵対的立場に立つのは非常にマズい。

それに加えて、王女は鬼札ジョーカーでもある。

絶対的に不利な状況に追い込まれても、その窮地を固有魔法1つで引っくり返せるこの国の切り札。

反則技もいいとこだろう。


……やっぱり、どうにかして直接会えないかな?


相手の反応を見つつ対応出来る上、白か黒か判断出来る。

誰に頼むべきか。

父様とは接点が低過ぎて、会うのは不自然な上断られる可能性が高い。


兄様とは……絶対会わないだろうな。


兄様とシナリオ通りにいくのは、断固してでも避けたいようだから。


となると、王様やオズ様に頼むか……エド様はもれなく厄介なのリリスがついて来そうだし、王妃様はゲームであまり良い印象ではないようだから、2人に頼むと避けられそうだ。


それに俺と王女の婚約話を進められても困る。


やっぱり、王様……かな?

……頼むのであれば。


オズ様も攻略対象者だから、もしかしたら避けられるかもしれない。

その点、王様はゲームでの出番は殆どないらしいから安心だ。

流石に嫌がっていても、王女がそれで魔法をぶっ放す何て事はないだろう。

王女に拒絶されたら、また別の策を考えればいい。




「父様、王様とお会いすることは出来るでしょうか?」


俺はすぐに行動に移した。

こういったことは、後回しにしない方がいい。


「陛下に? ……明日の昼なら少し時間を取れると思うが」


「お願いします」


明日か、予定が空いていてよかった。

思ったよりも早く事が進みそうだ。


「陛下に会ってどうするの? そんなに王女の事が気になる? ……僕もついていこうかな」


兄様は、今一納得がいってないのか不満げだ。

俺の目的が王女だと分かったみたいだ。


「……兄様は学校があるでしょう。ずる休みはよくありません。それに、本当にそういった意味ではないですよ」


父様曰く、王女は変人らしいし。


「む……くれぐれも気を付けるんだよ。見てくれに、惑わされてはいけないよ?」


兄様は俺の正論にぐうの音も出ないのか押し黙ると、最後にそんな忠告をしてきた。


「惑わされるって……兄様、流石にそれは失礼ですよ」


相手は変人だろうと、一応は王女だ。


でも兄様が、見た目を評価するのは珍しい。

余っ程の美少女なのだろうか。


「ははっ。念の為、だよ」


「はぁ……」


全く悪びれる様子のない兄様に、苦笑いが溢れる。


本当に、この人はブラコンだな。

王女もこの姿を見れば、シナリオ通りにいかないって分かるんじゃないか?







◆◆◆◆◆◆◆◆





──そして、翌日







「急に俺に会いたいって、どうしたんだリュート?」


久しぶりに見た王様は、相も変わらずカリスマオーラを身に纏って輝いていた。

父様は仕事がある為、席を外している。

この部屋には俺と王様の2人きりだ。


「今日は態々ありがとうございました。それで、王様にちょっとお願いがございまして」


「お願い?」


俺は今日の目的について切り出した。


「はい、ユーリア・ライト・ユグドラシア王女殿下について」


「ユーリア? 何でまた?」


やはり、昨日の父様と同じく王様も怪訝な顔をした。

今まで話したことも、興味を持っているようにも見えた事もない。

それがいきなり会いたがるなんて、不自然もいいところなのだろう。


「同じ魔眼持ちとして、1度お会いしてみたくて」


俺は父様にも言った通り、当たり障りない理由を説明した。

乙女ゲームが何ちゃら言うより、余程納得出来る理由だ。


「うーむ、お前の頼みなら聞いてやりたいもんだが、難しいぞ? あいつ……ユーリアは誰とも会おうとしないからな」


俺でさえな、と王様は顔に暗い影を落とした。


「そこを何とかお願いできませんか?」


嫌がっても、一目見るくらいなら出来る筈だ。


「お前の頼みは聞いてやりたいが、それは出来ない」


しかし、王様はハッキリと俺の頼みを断った。


……何故だ?


元々駄目もとではあったが、王女に話くらいは持っていってくれると思っていた。


それが王女に聞くまでもなく、断られるとは……


王様の様子からして、何か理由があるに違いない。


「……何故ですか?」


「……ユーリアは今は変人などと、皆から陰で言われているが、それは俺達のせいなんだ」


そしてもたらされた王様からの回答は、俺を更に混乱させるものであったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る