第85話20話 バレてます!? sideスール
リオナさんの妹が誘拐されたと聞いた次の日、僕らはいつも通りに陛下からの仕事をこなしてすぐ行動に移した。
まず、リュート様が気分転換に街を歩きたいと言い、護衛の方達を連れ街に寄ってもらった。
リュート様は年齢より大変大人びており、大人達からの信頼もある。
リュート様の希望はすんなり通った。
護衛の方達を撒いて、手紙に指定されていた場所へとリオナさんと2人で向かう手筈だ。
僕は体調が悪いと言って、馬車の中で待機だ。
僕にはリュート様に頼まれた役目があった。
成功はすぐに分かった。
リュート様達は人混みや魔法を利用して、予定通り護衛方達を巻いたようだ。
先程から外で護衛の方達が騒がしく動き回っている。
彼等の焦った顔を見ると、本当に申し訳なく思う。
リュート様は化け物と呼べる程の天賦の才がある。
あの方が本気で行方を眩ませようと考えたら、誰にも阻止なんか出来ないだろう。
護衛の方達を責めることは出来ない。
彼等は決して無能ではない。
しかしリュート様がそう言って庇っても、全くお咎めなしとはいかないかもしれない。
今回の事はリュート様に非があるとはいえ、彼等が監視を緩ませたのも事実。
有能な旦那様はそれらの事は考慮に入れるだろうが、ある程度の叱責は免れないだろう。
巻き込まれてしまった彼等には心底同情する。
だけど、僕も人の心配をしている場合ではない。
もし計画がバレたのなら、僕も確実に叱責されるだろう。
どうして未然に止めなかったのか? と。
簡単に推測出来る未来に、僕のお腹がキリキリと痛んだ。
外を見ると、まだ護衛の方達の懸命な捜索が続いている。
本当に申し訳ない……でも僕があの方に歯向かえる訳がない。
レイアス様に初めて会った時に感じたあの悪寒、あの時のリュート様からも同じものを感じた。
血が繋がらないとはいえ、あの2人は兄弟なのだとひしひしと感じた瞬間であった。
そうして僕が罪悪感で更に胃をキリキリさせていると、優秀な護衛の方達が目撃証言や見つからない現状から、誘拐の可能性が高いと判断して旦那様に命令を仰ぐ為に使いを送り出した。
流石公爵家に雇われているだけはある。
極めて迅速な判断だ。
そして、ここまでは予定通りだ。
これから、どうなるか…………。
リュート様、リオナさんどうかご無事でいてくださいっ!
でないと、僕達の首が物理的に飛びます!
僕は掌を強く強く握りしめた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
僕の乗っている馬車も公爵家に向かい、先に出した使いから数十分遅れて到着した。
これから僕の口からも、状況を説明しなければならない。
出来るだけ……出来るだけ穏便に、そして自然に説明しなければ……反応もまだない……
僕は手に汗握りながら、屋敷に足を踏み入れた。
そして──────
「それで? 何でリューは
────バレました。
というか、既にバレていました。
流石レイアス様です。
重度のブラコンですもんね、はい。
……まぁ、確かに普段のリュート様を知っている方なら、リュート様が誘拐されたなんて信じ難いですよね。
誘拐犯、返り討ちに出来ますもんね。
無理がありますよね。
「リューは一体何を考えているんだい? 無策でこのような事をした訳ではないんだろう?」
と、いうわけで、今僕はレイアス様に問い質されています。
怖いです。
レイアスは笑っていらっしゃいますが、目は全く笑ってません。
背後にブリザードが吹雪いてます、とても寒いです。
凍死しそうです。
ここで僕が嘘をつこうものなら、拷問してでも吐かせようという考えが伝わってきます。
とても、9歳の子供には見えません。
まるで魔王のようです。
「えっと……その、」
「因みに自分は知らないは無しだよ? 君も関わっているよね?」
言い訳を考えて何とか誤魔化そうとしましたが、その前に潰されました。
疑問符が語尾に付いてますが、僕が知っている事を確定事項としておっしゃっています。
これでは何を言っても、無駄でしょう。
元々の計画にあった“そういえば……リュート様がもし自分に何かあったら、これを渡せと……”と言って、あくまで僕達やリュート様は無関係ですよ、知らなかったですよアピールをしつつ、リュート様の救出方法を伝えるというのは実行出来そうにありません。
「早く話した方が身のためだよ?」
「……………」
追い打ちをかけるように、レイアス様が僕に微笑みながら問いかける。
そこらの令嬢達が、一瞬で恋に落ちてしまいそうな美しい微笑みです。
そしてこれが、最後通牒でしょう。
「実は────」
ですので、リュート様。
申し訳ありませんが、全て話させて頂きました。
決して権力に屈したわけではありません。
ただ……リュート様が絡んだ
「ふふふっ! ……僕からのお仕置きは何がいいかな?」
「………………」
僕は何も聞いていません。
今回の計画を全て聞いたレイアス様が、何やら黒い笑みを浮かべておりますが、僕は何も見てません。
僕はそっと離れたところにいるリュート様に向かって、心の中で手を合わせた。
リュート様、リオナさん、全てが終わったら一緒に平謝りしましょう。
……そして早く帰ってきてください。
この方と2人きりなんて、恐ろしすぎます!
僕を助けてください!!
僕は心の底から、神に祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます