第43話10話 女子力は死んでるようです。
「じゃあ、作ってみるか?少年よ」
俺の呟きが聞こえたのか、ジョディーがそう聞いてきた。
「本当ですか!?」
俺は食い気味に詰め寄った。
「あっあぁ、近い、近いぞ少年!?」
「わーっ!」
ジョディーが俺を困惑気味に押し返すが、俺は気にせずぐいぐい詰め寄る。
やった!
魔導具!!
興味あったんだよね。
「嬉しそうだね、リュー。そんなに喜んでいるのを見ると、僕も連れてきた甲斐があったかな」
そんな俺の様子を、兄様が微笑ましく見守る。
「……喜んでいるとこ悪いが、初見で成功は無理だぞ? 私が手伝うとしても、大したもんは期待するな。」
ジョディーは俺の様子に呆れ顔で見てそう言ったが、俺の耳には全く入らない。
俺は目の前にある、魔導具作成という餌にすっかり夢中だ。
「……話を聞いてないな少年」
「聞いてますよ。それに僕の名前はリュートです。少年じゃありません!」
「すまん、すまん。じゃあリュート、準備するから店の中でも見てな」
「はい!」
俺の返事を聞くと、ジョディーは奥の部屋に入っていった。
待っている間、俺は店の中のを動き回る。
「これはカメラですか? この間母様達が使ってた……」
俺はついこの間見た魔導具を手に取る。
「そうだよ。光の魔法を応用したものだね」
兄様が横から解説を入れてくれた。
「これは……コンロ?」
「そう、そしてこっちが水の浄化装置。こっちのは懐中電灯だね」
「へーぇっ! 面白いですねっ!! そういえば、回復用の魔導具とかはないんですか?」
光の適正があるならありそうだが、それらしきものはない。
俺は疑問に思ったことを兄様に聞いてみた。
「あぁ、光の適正があると言ってもその中で回復魔法を使えるものは稀なんだよ。ジョディーは使えない筈だよ」
だから此処にはないんじゃないかなと、兄様は続けた。
でも、適性を持つ者が少ないだけに需要もありそうだ。
「そうなんですね……、あっこれは何ですか?」
「それは──」
俺達はジョディーの準備が終わるまで、店内の魔導具を見て回った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「よし、準備出来たぞ! 入って来い!」
「はいっ!!」
ジョディーの呼ぶ声が聞こえ、俺と兄様は奥の部屋に入る。
そこは──
「なっ何ですかコレっ!? なんゴホゴホッ、きたなゲホゲホっ!?」
先程とは比べ物にならないくらい汚かった。
店内はまだマシだった。
ここは汚く、埃だらけな上に悪臭がする。
臭い。
とにかく臭い。
息が出来ない、苦しい……。
「くっ、うぃ“ウィンド”!」
俺は耐えきれず、魔法で空気の入れ換えを行う。
兄様も横で咳き込んでいるのが見えた。
「ほぉ、見事な風魔法だな」
「「ほぉ、じゃないです(よ)!? 死ぬかと思いました(ったよ)!!」」
俺と兄様はハモって抗議をした。
2人揃って少し涙目だ。
悪臭のせいか勝手に涙が出てくる。
コレは、この悪臭はヤバイ。
一応紛いなりにも女何じゃないのか!?
子爵家の出なのに……この生活に耐えられるのか?
こんな場所で生活出来るなんて、ある意味尊敬ものだ。
「大袈裟だなぁ、これくらい研究職なら普通だぞ?」
「「大袈裟じゃないです(よ)!?」」
ハハハッと笑うが冗談ではない。
此方は一瞬本気で意識が飛びかけた。
笑えない。
「そんなことはおいといて、始めるぞ!」
「始められる訳ないでしょう!? 掃除です、掃除しますよ!!」
ジョディーは始めようとしたが、そうは問屋がおろさない。
この空間に長時間耐えられない。
俺は割と綺麗好きなんだ。
そうして俺達は掃除に取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます