第31話21話 誕生パーティー ② ~邂逅~
王様の言葉に周囲はざわめいた。
「魔眼持ち!?」
「教会の子供以来じゃないか?」
「では、次期公爵は彼が……」
「これで、またウェルザック公爵が力をつけるな」
「すでに宰相職にあるのに……」
「公爵家の固有魔法は強力だ!」
「他国に攻めいれるんじゃないか?」
「戦争だなんて……」
周囲の反応は様々だ。
俺が魔眼持ちである事を歓迎している者も多くいるが、ウェルザック公爵家が力をつける事を危惧している者もいた。
「……これはこれは。こんな重大な事実を隠していたなんて……大問題ですよ、ウェルザック公爵?」
シュナイザは父様を責めるように言った。
視線を俺へと固定したまま。
俺も負けじと視線をぶつける。
「俺は公爵から
王様はハッキリ否定した。
これは事実だ。
父様は王都に戻り次第、すぐに報告に登城している。
「……では、そちらの夫人が隠蔽したと? その子供や夫人はつい最近まで失踪していたとお聞きしましたが?」
俺から視線を外すと、シュナイザは母様に目を向けた。
母様はその鋭い視線に、一歩後ずさった。
「故意に隠蔽した事実はない。それに……貴殿がそれを言うか?」
父様は母様を庇い、シュナイザと向き合った。
確かに母様は知っていて、国に報告しなかった。
けれど、そもそも母様が屋敷を出ることになったのはそもそもシュナイザの娘であるクリスティーナ、ひいてはシュトロベルンが原因だ。
シュトロベルンが母様を責めるのはお門違いだ。
「……そういう問題ではないのですよ。魔眼持ちは貴重だ。この国の宝と言っていい。それを隠すとは、どんな事情があろうと許されることではありません」
シュナイザはなおも言い続けた。
父様達も厳しい顔をしている。
「そう難しい顔をしないでください。私はこの国の為に言っているのですよ? 陛下、貴重な魔眼持ちをこのままウェルザック公爵の元に置いておくのは、如何なものかと思います。私も同じ魔眼持ちですし、シュトロベルンで預かりましょう?」
絡み付くような不快な視線を俺へと再び向ける、シュナイザ。
シュトロベルン公爵が魔眼狂いというのは、噂通りのようだ。
「貴様!! ふざけるのも大概にしろっ!」
シュナイザのふざけた提案に、とうとう父様が声を荒げた。
そんな要求を認める訳にはいかない。
「ふざけているのは貴殿では? 魔眼持ちの隠蔽は重大な国家反逆罪だ。そこに魔眼持ちを置いておける訳がないでしょう?」
シュナイザも今までの作り笑いを完全に消し、冷めた目で父様に言った。
「いい加減にしろ、シュトロベルン公爵。夫人は命を
王様がシュナイザと父様の間に入って、母様を擁護した。
「しかし」
「これは王たる俺の決定だ。この件でウェルザック公爵を罪に問うことはない。よってシュトロベルンに預けることもない」
シュナイザはまだ食い下がろうとしたが、王様が遮った。
反論を許さない程の圧力。
流石は大国を治める王だけある。
「……いいでしょう、陛下がそう仰せならば今は従いましょう……では私はまだ挨拶が済んでいないので、御前を失礼いたします」
シュナイザは頭を下げると、俺達から離れていった。
気味の悪い男、それが俺のシュナイザ・シュトロベルンへの印象だった。
シュトロベルンの固有魔法は、公にされていない。
ただ、闇属性の魔法だと噂されているだけだ。
闇属性は謎の多い属性とも言われており、使い手もまた少ない属性だ。
……俺が対抗出来るものだといいんだけど。
シュトロベルンといずれ敵対する以上、情報は少しでも欲しいところだ。
「リュート、今日の主役である俺の息子を紹介するから、彼方に移動しよう」
王様が指差す方向にいるのは、大勢の人に囲まれた1人の少年。
ミルクティー色のふわふわの髪に夕焼けのオレンジ色の瞳を持つ、この国の第3王子であり、また攻略対象者のエドワード・ライト・ユグドラシアだ。
遠目から見るに、王様より顔は王妃様に似ている気がする。
俺達が近付くと自然と、周囲は道を開けた。
「エドワード、こいつが前に言ったリュート・ウェルザックだ。お前の1つ下だな」
王様がエドワードに俺を紹介した。
「で、これが俺の息子で第3王子のエドワード・ライト・ユグドラシアだ。大人しいやつだが、仲良くしてやってほしい」
俺とエドワードのくりっとした目が合う。
すると、エドワードは途端に頬を赤く染めた。
最近では見慣れた現象だ。
「はっ初めまして、僕は第3王子のエドワード・ライト・ユグドラシアです。今日は僕の誕生祝いにお越しいただき有り難うございます!! 兄上や父上から話は聞きました。是非僕とも仲良くしてくださいっ!」
少し緊張した様子で俺に挨拶をしてくれた。
「今宵はお招き頂き有り難うごさいます。リュート・ウェルザックです。こちらこそよろしくお願いします」
「有り難うございます!」
俺達は握手を交わした。
エドワードは余程嬉しかったのか、握った手をブンブン振るった。
周囲はその様子を微笑ましく見ている。
そんな和やかな雰囲気の中、俺を射殺さんばかりの目で悪役令嬢リリス・ウェルザックが睨んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます