第21話11話 勉強は大切です①
夕食を食べた後、俺は部屋に案内された。
とても6歳児に与えるような部屋には思えない広さだ
貴族だと6歳とはいえ、1人部屋を与えられることが多いらしい。
「リュート様、何かご入り用が御座いましたら何でもお申し付け下さい。専属の従者やメイドの方は只今探しているところですので、もう暫くお待ち下さい」
「従者……ですか。僕は自分の事は自分で出きるので大丈夫ですよ」
むしろ自由に動くには、いない方が都合がよさそうだ。
「申しわけございませんが、リュート様は公爵家の御子。対外的にもいないのは、貴族の面子にも関わってしまうでしょう」
セルバさんは子供の戯れ言だと切り捨てる事なく、ゆっくりと丁寧に理由を俺に説明した。
そうだよな……父様や母様に恥をかかせるわけにはいかないか。
「そうですね。我が儘言ってごめんなさい」
「リュート様が頭を私なんかに下げる必要はごさいません。従者の方は候補を絞り次第、旦那様が直接お選びになる形になりますね。リュート様は何かご要望はございますか?」
「いえ特には……そうですね、なるべく同い年の子がいいですね」
子供の方が誤魔化しはきくだろうし、一般的な基準が分かるのでその方がいいだろう。
「畏まりました。そのように手配致します。それと、先程仰っていた本をお持ちいたしましたので、此方に置かせていただきますね」
「ありがとうございます」
数十冊の本が机に並べられた。
本当に仕事が早い。
子供らしい色とりどりの絵が表紙のものから、俺が頼んだ勉強用の分厚い装丁のものまで様々な本が用意されている。
キタキター!
やっと活字が読めるよ!
口元が自然に弛むのが、自分で分かった。
「では、失礼いたします」
「あっ待ってください!」
入ってきた扉から出ていこうとするセルバさんを、俺は慌てて引きとめた。
「何かありましたか?」
「本をもっと持ってきてもらっていいですか?」
俺は追加で本を持ってきて貰えるようにお願いした。
「希望のものが無かったのですか?」
どうやらセルバさんは俺が本の内容が気に入らなかったと、勘違いをしたようだ。
「いえ、僕は読むのが早いのでもっと欲しいんです」
俺は速読と瞬間記憶能力を持っているので、この程度の量であれば一時間もかからない。
折角の
時間もあるのだし、読めるだけ読みたい。
「左様でございましたか。すぐに用意いたします」
セルバさんは少し驚いた顔をしたが、すぐに了承してくれた。
このくらいなら、そこまでの違和感は与えないだろう。
「では失礼いたします」
今度こそセルバさんは出ていった。
俺は扉が完全に閉まりきるまで、笑顔でそれを見送る。
ではでは“
誰も居なくなった室内で、俺は机の上の本を手に取る。
本の種類は礼儀作法のものから、王国史、貴族名鑑、地図、魔法書、絵本まで様々なものまである。
絵本は気を使ったセルバさんからだろうが、後は俺の要望したものだ。
まず、近々で必要な礼儀作法の本から読み始めた。
これは両親に恥を欠かせないためだ。
3日後には謁見もある。
礼儀作法もろくに出来ないようだと、母様達が馬鹿にされてしまう。
フムフム、あまり前世の知識と相違ないな。
まぁ、日本人が作ったゲームだ自分自身の知識や常識をもとにしたんだろう。
無駄に時間を使ってしまったが、同じって分かっただけでも読んだ価値はあるな。
次は王国史と貴族名鑑、地図。
この国、ユグドラシア王国は緑豊かな大国であり一部海に面しているので水産資源も豊富。
軍事面でも強国の1つに数えられるみたいだ。
おっ、例の魔眼持ちの曾祖父の名前が……
本当に小国ではあるが、タルタムって国を落としてる。
しかもたった1人で……これは魔眼持ちが、重要視されるのがわかるな。
魔眼持ちは科学兵器にもひけをとらない。
そして、3日後に謁見する予定の今代の王は第78代目であるギルベルド・ライト・ユグドラシア。
今は28歳で父様の3つ上か、若いな。
皇太子の名前は……オズワルド・ライト・ユグドラシア。
此方の名前には聞き覚えがある。
傲慢ルートの攻略対象者で兄様と同い年の親友。
そして同腹の弟、嫉妬ルートの攻略対象者であり、リリスの婚約者の第3王子エドワード・ライト・ユグドラシア。
俺の1つ上で、芸術面で優れているのとか。
今度謁見の時に会うかもしれない、此方も要注意人物だ。
他にもゲームキャラのフルネームや、有力貴族の名前を覚えていった。
そして、魔法書だ。
これは特に指定しなかったからか、初級者向けのものばかりだな。
それでもパラパラと読んでいくと、知らない魔法も結構あった。
最後に絵本に手をつけたが、これは他とは別の意味で面白かった。
母様から寝物語に聞いたお伽噺の絵本だったのだが、これが聞いた内容と微妙に違う。
俺が聞いた話は大分アレンジがきいていたらしい。
並べられていた本は、あっという間になくなってしまった。
ここまで読むのにジャスト一時間くらいか。
次の本が来るまで暇だな……
『コンコンコンッ』
全て読み終わり足をふらつかせていると、扉をノックする音が聞こえた。
「リュート様失礼いたします。続きの本をお持ちいたしました」
セルバさんが本を持ってきてくれたようだ。
ナイスタイミングだ。
流石セルバさん、出来る執事!
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