第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
第11話01話 とある腐女子によるネタバレ①
『キーンコーンカーンコーン』
4時間目が終わり昼休みに入ると、今日もアイツが教室に入って来る。
招かねざる客人だ。
「よりちゃーん! 一緒にご飯食べよーぉっ!」
そう言って教室に入って来たのは、ボブヘアの可愛いらしい少女、須藤 由奈。
容姿だけならこの高校でも5本の指に入る。
しかし彼女は決してモテない。
なぜなら……
「聞いてっ! ナナツミのファンディスクが昨日届いたのっ!! しかも」
「ハイハイ、落ち着いて由奈。まずナナツミが何か分かんないから」
興奮気味の少女を制したのは、眼鏡をかけたこれまた美少女。
彼女達二人はとても仲が良く、毎日昼御飯を一緒に食べていた。
「えー?! 前にも話したことあるよ? いつもちゃんと聞いてないでしょー?」
由奈は頬を膨らませ抗議する。
見た目だけなら、大変可愛らしい。
見た目だけなら。
「キイテル、キイテルッテ」
「棒読みじゃん!! もー、もう1回言うから今度は覚えててよ? てか、ゲーム貸すから! まじで貸すからっ!!」
「え……やだよ、メンドイ」
眼鏡の少女、為永 依子はこれにすげなく返す。
「ナナツミはね、乙女ゲームなんだけどRPG要素もあってね。勉学、魔法、剣術、礼儀作法、芸術の5項目をレベ上げしないと、攻略キャラによっては攻略できないの!」
「うわー、人の話聞いてないよ」
依子に構わず、由奈は熱く語り出す。
「攻略キャラは全部で7人なんだけど、今回のファンディスクでは、なーんとっレイアス様のお義父様であるヴィンセント様も攻略出来るようになったの!!」
「へー、ソウナンダー」
「ナナツミは人間関係がドロドロなゲームなんだけど。絵もキレイだし、キャラの声がメッチャイケボなんだよー!」
「へー(モグモグ)」
もはや完全に由奈の話を聞き流して、弁当に集中している。
「攻略キャラは皆トラウマ持ちで、それを主人公が癒すんだよ! レイアス様とヴィンセント様のルートはクリスティーナが悪役なんだけど、こいつがヴィンセント様の唯一愛していた人を実家の力を使って暗殺してしまうの。これにはヴィンセント様は勿論、初恋の人であったレイアス様も憎悪して、ヴィンセント様のルートだとヒロインと協力して死刑台送りにするんだよ!」
「死刑台って……乙女ゲームなのに過激じゃない?」
依子が食べるのを中断してツッこむ。
乙女ゲームで人死にが出るというのに、引っ掛かりを覚えたのだろう。
「結果だけ見るとねー。でもプレイする側としては、気持ちが分かるってゆーかもっとやれやれってなるよ? しかももっとヤバイルートもあるしね、うふふっ」
「何それ、怖い」
「やればよさが分かるよ! 特にヴィンセント様は仇を討つ為に、ウェルザック公爵家を継いで宰相にまで上り詰めて力をつけるんだから!」
「……それ、ヒロインいらなくない?」
「いるよ!? だって悪役は七つの大罪にまつわる悪魔と契約してるから、女神の加護を受けた強い光属性の適正を持つヒロインじゃないと浄化できないんだよ!」
「ふーん」
由奈はどんどんヒートアップし、周りを気にせず大声で話続ける。
「同人もたくさん出ててね。昨日もネットで注文したやつが届いたの! しかも私一押しのヴィンセント様×レイアス様のカップリング!! 他カプも勿論おいしいケド、義理の親子の禁断の……フフ腐!」
そう、須藤 由奈は腐女子であった。
アニメやゲームのヲタ話はまだ許せる。
だが周囲に男子がいる状況でところ構わず大声で腐った話をする由奈は、男子に全く人気がない。
今日も彼女の腐トークが始まりだした辺りから、ちらほらと席を立つものが出てくる。
残された女子生徒達も気まずげだ。
リュートの前世である瀬永 龍斗もまたその1人であった。
龍斗も他の生徒と同様に、早々に昼御飯を切り上げ教室を出ていく。
「あーでも、レイアス様の攻めもありね! それでー」
今日も彼女は教室から気まずげに出ていく男子生徒達を気にせず語り続けた。
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