第10話09話 え?この世界って乙ゲーの世界なの?
あれから周囲を巡回中だった警備隊が俺達を保護し、行く予定の町でなく近くの大きな都市に連れてこられた。
そして今も駐屯所で調書を取られている。
盗賊なので罪にならないが、俺の様な子供が無詠唱で上級魔法を使ったということで詳しく話を聞きたいみたいだ。
「いい加減にしてくれませんか? 私達は自衛をしただけで、何ら罪に問われることはないと思うんですけれど?」
ここに来てから5日が過ぎた。
いい加減我慢の限界が来たのか、母様は怒り気味で目の前の騎士に言った。
「申し訳ございません。あと少しだけご辛抱下さい」
騎士の答えは相変わらず要領を得ない。
このやり取りも何回目の事だろうか。
「何度も、何度も、あと少しあと少しって、一体いつまでここに閉じ込める気なのですかっ!? いい加減に」
バタンと急に扉が開いた。
そこには銀髪のイケメンがいた。
母様がソイツを見て、言葉を止めた。
「カミラっ!! やっと見つけた!」
銀髪イケメンはそう言って、いきなり母様を抱き締めた。
え? 何コイツ?……殺っていいかな?
「ヴィンセント様どうして此処に!?」
「ウェルザック公爵、お待ちしておりました」
「あぁ、気を利かせてくれて感謝する。ちょうど数日前にこの街に立ち寄ったばかりだったんだ。君をずっと探していた……君の眼の色は、この国では滅多にいない。それで兵達が気を利かせて知らせてくれたんだ。本当に……足止めしてくれて助かった。でないとすれ違いになっただろう」
驚く母様に、ほっとする騎士、そして公爵と呼ばれた銀髪イケメンセクハラ野郎。
足止めって……それであんなに長く待たされた訳か。
……あれ?
ウェルザック公爵? ヴィンセント様?
その名前が遠い昔の記憶を刺激する。
聞いた事がある名前だ。
それも今世でなく、前世で。
つまり……この銀髪イケメンはヴィンセント・ウェルザック?
俺はその名前を知っている。
いや、知っているというより聞いた事があるというべきか。
俺は前世で聞いたゲームを思い浮かべた。
“七ツノ大罪~貴方と私の愛の軌跡~”
このゲームはイタいタイトルの割に愛憎渦巻くドロドロで、乙女の筈なのにバットエンドは相当悲惨なものだったらしい。
そしてそのゲームの登場人物名でその名を聞いた事があった。
“ヴィンセント・ウェルザック”
たしか攻略キャラであるレイアス・ウェルザックの義理の父の名であったはずだ。
……え?
本当、に?
嫌な汗が背筋をつたった。
この身で体験しても、信じる事が出来ない。
こうして俺は気付いたのであった。
この世界は乙女ゲームの世界で、俺は乙ゲー転生してしまったのだと!
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