第12話02話 攻略キャラの息子のようです。

 

何て事だ。

転生6年目にして、この事実に気づくなんて……

というか、何で乙女ゲームなのだろうか?

俺は全くやったがことない。

……話ちゃんと聞いときゃ良かった。

あんだけベラベラネタバレしてたのに、半分くらいしか聞いてない。

クラスの奴等も皆引いてたし。

むしろ耳栓してたし。

攻略キャラの設定と大まかな流れ位しか分からないな、どうしようか。


何せ、このゲームはドロドロ設定の、人死にが出るゲームなのだ。

展開が把握出来ないなんて、恐怖でしかない。


……腐女子キモいとか思ってて、心の底からごめんなさい。

謝るんで今すぐ攻略本下さい(泣)


俺は後悔して、心の中で少女に謝罪した。


「本当に無事で良かった。ところでカミラ、もしかしてこの子は……」


俺がぐるぐる混乱していると、銀髪イケメンが俺を見て言った。


「はい……私と、貴方の子です。リュー君お父様だよ。ご挨拶してね」


母様が俺のフードを取って、背を前に押す。

だが、俺はそれどころじゃなかった。


父親ってことは……

ヴィンセント・ウェルザック=攻略対象者&攻略対象者の義父=俺の父親、という事だ。


……ヤバくね?

……俺ってモブだよね?

ゲームと関係ない筈だよね?

俺は無関係だよね?

…………でも、ヴィンセントって最愛の人を正妻に殺されるキャラだよな。

それってつまり、母様の事だよな。


無関係でいたいが、決して他人事では済まされない事実が俺に突き刺さる。

母様が死ぬなんて、冗談じゃない。


「はじめまして、私はヴィンセント・ウェルザック。この国の宰相をしている」


「あっはい、初めましてリュートと申します」


慌てて自己紹介を返す。

いけない、今は目の前の相手に集中しなければ。


「とても賢い子だな、6歳かな?」


銀髪イケメン、もとい父親が俺を抱き上げて顔を覗きこんだ。


「はい、つい先日6歳になったばかりです。リュー君は魔法が大好きでとっても頭のいい子なんですよ!」


俺の代わりに母様が応えた。

まるで宝物を披露するように、胸を張っている。


「そうか……。この子の眼は魔眼だな……」


俺の眼を見て父親が言った。


「はい、恐らく公爵家に伝わるものかと……」


「あぁ、左眼の陣は間違いなく我が家に伝わるものだな。右眼は……分からない。が、火の上級魔法を無詠唱で発動させたということは、火属性の固有魔法の可能性が高いな。家は過去に他国の王家や国内の有力な貴族とも縁戚を結んでいる。恐らく隔世遺伝だろう」


「そうですか……」


「公爵家に伝わる陣? それってどんな固有魔法なんですか?」


固有魔法の種類が気になり口を挟んだ。

ずっと気になっていた謎だ。


「あぁ、公爵に伝わるのは雷魔法だ。最後の保有者は私の祖父で固有魔法一つで小国を落としたことで有名だな」


父親がさらりと告げた答えに、俺は一瞬固まる。

想像以上の力だった。


何それ、怖い。

国って……


「どうやって……発動するんですか?」


誤発動しないよう聞いといた方がいいだろう。

うっかり町1つ破壊などしてしまったら、洒落にならない。


「開眼すれば、自然と頭に呪文が浮かぶらしい。魔眼持ちは少ない……この国で確認されてるだけでも10人もいない。最近確認された子は教会の子で7歳位だったか…」


教会の子供で魔眼持ちって……たしか攻略キャラにいたな、そんな感じのキャラ。

しかも7歳とか……てことは俺はヒロインの1歳下か。

……年近いな、シナリオとやらに巻き込まれなきゃいいけど。

俺は身内に被害がなければそれでいい。


「屋敷に帰ろう、カミラ。君達は私が必ず守る」


父親が母様に、手を差し伸べる。


「でも、この子に万が一の事があったら……」


「大丈夫だ。この子が魔眼持ちだったのが、逆に幸いだった。魔眼持ちは貴重だ。どこの国でも守られる。だから魔眼持ちの母親である君に手出しは出来ない。それはこの国で大きな力を持つシュトロベルン公爵でも同じだ。殺すなんて愚行を犯す筈がない」


「私はこの子を政治の道具にするつもりはありませんっ!」


母親は怒りをあらわにして怒鳴った。

それは母様は父親愛する人と別れる事になっても、俺を選ぶということだ。

その事に気付いて、胸が温かくなる。


「私は宰相の位に就いている。ある程度融通はきかせることくらいなら出来る」


「それでも全く制限を受けないということはないはずです!」


父親が冷静に返すのに対し、母様は納得いかないとばかりに引かない。

母様は俺を守ろうとしてくれている。

だから、俺は────


「……行きましょう、母様」


「リュー君……でも」


「いつか言っていたでしょ? 親子3人で暮らしたいって。それに僕も自由に外を歩いてみたいですし。ね? 僕なら大丈夫ですよ」


母様は本当はこの人と一緒にいたいのだ。

母様もこの人を愛しているから。

母様が思ってくれているように、俺も母様には幸せになって欲しいと思う。

それにこそこそ逃げるより、俺が立場を持っていた方が母様は安全かもしれない。

ゲームだと母様はシュトロベルン公爵家に暗殺されるのだ。

力はあればあるほどいい。

母様は俺が絶対に守る。


「ずっと隠しとおすことは出来ない。それこそ一生外に出ない限り難しいだろう。露見した時他国は勿論、様々な勢力から狙われる。ならば今国の保護を受けた方が安全だ」


「でも……」


母様はまだ決心がつかないようだ。

様々な葛藤が心の中にあるのだろう。


「……それに何より私は君達と一緒に暮らしたい」


そう母様に告げるちの目はとても慈愛にみちている。

これなら俺達を利用したりせず、全力で守ってくれるだろう。

……だからといって、俺はまだ認めた訳ではないが。


「……分かりました。お屋敷に戻ります」


「ありがとう。君達のことは私が何に変えても必ず守る」


母様はついに折れて、屋敷に戻ることを決めたようだ。


……それにしても流石ファンディスクとはいえ、攻略対象者なだけあるわ。

キラキラエフェクトが何か見えるし。


「では、行こう。馬車を用意してある」


「はい、ヴィンセント様」


父親が母様に手を差し伸べ、母様がその手取る。

そして、俺達は王都へ向かった。


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