なんで…?
君はいつも家にいて、僕の帰りを待っていてくれる。だから僕は仕事が終わると急いで帰る。いや、仕事中も君に触れたくて、その可愛い顔を見たくて、とにかく早く帰りたくて仕方がないんだ。君に会いたい一心で、残業もしなくなったんだよ。誤解の無いように言っておくが、仕事を怠けてる訳じゃないよ。君のおかげで残業しないデキル男になれたんだ。
そんなわけで、いつものように家路を急いでいるとご近所の路地で僕の目の前を横切った影。小さな顔、均整のとれた身体、長いしっぽ…ん??家にいるはずの君が何故??僕は君を呼び止めた。動きを止めて振り向いた君…
まるで、知らない人を見るような目で僕を見るんだね…。名前を呼んでも答えてくれない。僕は優しく、優しく何度も呼んだ。
「ねぇ。一緒に帰ろう」
チリリリリン。首輪の鈴が遠ざかっていく。
「どこ行くの?」
もう一度、振り向いた君はやっぱり冷めた目線を僕に向ける。そこには僕の知らない君がいた。
チリリリリン。生垣の間に消えた君。
「ちゅーる、ちゅーるだよぉ」
いい歳の男が一人、ちゅーると呟きながら歩いてるなんて、変質者に間違えられはしないだろうか?
しばらく君を探したけれど、、見つけられない。戻ってきてくれると信じて、家に帰る事にした。玄関を開けると、チリリリリンと君の気配。
「いるの?」
「いるにゃぁぁぁん。ごはぁーん」
何故だ??そこにはいつも通りの甘えん坊で食いしん坊の君がいた。
何故君は家の外で会うと他人の様な顔をするんだい?僕は地味に傷ついてるんだよ?
ゴロゴロと喉を鳴らす君は答えてはくれないけれど、それが猫たる所以なのだろう。
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