004  細胞障害の機序とその修復Ⅲ

D.組織修復・再生とその機構

 1.組織修復と再生、繊維化

  ・再生脳が高い臓器;肝臓ー高度の障害も繊維化を残さずに再生。

   再生脳高い)肝、皮膚

   再生脳低い・無い)骨格筋、心筋、中枢神経


  A.創傷治療 wound healing

  ①血管透過性亢進によるフィブリンの滲出

  ②炎症細胞(好中球、リンパ球、組織球)の遊走

  ③繊維発芽細胞や血管内皮細胞の遊走・増殖

  ④肉芽組織の形成(血管新生、細胞外基質の沈着)


  B.再生医療 regenerative medicine

  ・肝細胞を分離・培養し、目的とする細胞に分化させた後に、傷害部位移植す

   る。

 2.細胞の増殖と運動

  ・組織修復では細胞増殖の制御が適切に行われる必要がある。

  ・細胞増殖制御異常は、過形成や腫瘍の原因となる。

  A.細胞周期

  ・細胞増殖を制御している機構を細胞周期と呼ぶ。


  B.細胞運動の機構

  ・炎症細胞以外にも線維芽細胞、上皮細胞などの様々細胞が走化性を示す。

  ・細胞質の伸縮;アクチン、ミオシン

  ・基質への接着剤;インテグリン等の接着分子


 3.創傷治療、再生に関する分子

  a.増殖因子

  ・細胞増殖、分化、遊走などの生物活性をもつ低分子蛋白質あるいは糖蛋白質

  ・増殖因子は標的細胞の細胞膜にありキナーゼ活性を持つ受容体(レセプタ)

   に結合し、情報を伝達する。

  ・PDGF;線維芽細胞の増殖や運動に関与。

  ・VEGF;血管新生に関与。

  c.細胞外基質

  ・HE染色標本では概ね好酸性に染色され、線維性~無構造な物質として観察さ

   れる。

  ・特に基底膜は上皮細胞や内皮細胞に裏打ちするように存在し、多様な役割を

   担っている。

  ・コラーゲン;Ⅳ:基底膜

  ・糖蛋白質;ラミニン

  d.プロテアーゼ

  ・細胞外基質の分解は、発生、組織修復、癌漫潤の様な現象に関わる。

  e.接着分子

  ・カドヘリン


E.ストレス、刺激に対する細胞・組織の適応

 1.肥大

  ・細胞の大きさの増大によって、形状を維持したまま臓器・組織の大きさが増

   す現象。

  ・狭義の肥大;細胞の数的増加を伴わない。

  ・広義の肥大;細胞の数的増加に伴う。

  ・機能の負担に対応するための肥大で、「生理的肥大」と呼ばれる。

  ・高血圧症や心筋症で見られる肥大は「病的肥大」と呼ぶ。


 2.過形成

  ・細胞の過剰な増殖により組織の大きさが増加する現象。

  ・胃・過形成性ポリープ:胃腺窩上皮あるいは腺上皮の過剰な増殖。

  ・エストロゲンにより細胞増殖が亢進

  ・子宮内膜の過形成は特に「子宮内膜増殖症」と呼ばれる。


 3.萎縮

  ・細胞の数的現象あるいは容積減少により臓器・組織の大きさが減少する現象

  ・閉経後に萎縮

  ・長期臥床などで萎縮

  ・慢性腸炎で萎縮


  消耗色素、リポフスチン

  ・萎縮した臓器の細胞にはリソソーム系で消化されない褐色の脂質酸化物の蓄

   積がしばしばみられる(リポフスチン)

  ・内眼的に褐色に見えるので、褐色萎縮と呼ばれる


 4.化生

  ・分化した組織・細胞が他の系統の細胞に変化する現象。

  ・禁煙者の気管支:扁平上皮化生

  ・子宮頚部;扁平上皮化生

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