第9話 人形と人間

一つの国から三つの街……

そして村があった、一つ目は大きく色んな人々が賑わう街、もう一つは小さく珍しい人々の集まる街、もう一つは何もないただの人達の街、その他にも花に囲まれた村があった。

小さな花が枯れた時それは嵐へと変わる、毒へと変わる、堕落へと変わる、焼けた街、人を殺す意味、善人か悪人か、本当はどれもそんな対した差など存在はしない。



『あべる……黒髪のワタシの…王子サマ……』


薄暗い地下室、少女の小さなあどけない声が響く、教会の下に用意された尋問室のような部屋だ、明かりは蝋燭の光のみまぁ、それだけでも十分な明かりだ。

枯れた黄色い百合を添えて光が影を作った。

少女は何も出来ぬよう手を拘束されている、僕とその少女二人きりで話をした。

会話のままならない少女に無駄だと言われようが僕は続けた。

やっと掴めそうな予感がした、やっと彼女に辿り着けるそんな気がしたからだ。


『簡単な質問をしよう。』

『……』

『君はどの街出身かな?』

『さぁまず街ってイクツあったかシラ?』

『ただ単に気になることがあるから、君に伝えようとしたんだけどね……』


僕はため息をついた、3つに別れた街と村がいくつかある、そんなものまでわからないとなると中々面倒な事態だ。

まぁ、もし話が通じずとも彼女の髪色をみれば大体わかる、それにあの頃に奇妙な死体が存在していた。

その死体は真っ直ぐとまるで自身の歩いた足跡を残すように続いていた、途中で途切れはしたが今回で犯人にようやくたどり着けた。

だから彼女の出身の街は一番小さく人の少ない街、それは確か……


『銀色の街出身だよね?』

『ぎんいろ……?変な名前、ね、』


珍しい街だ、それは誰もがよく知っている、その町は様々な銀色の髪をした人達が集まる所、何故か皆目は青系統が多いと聞いた。

目の色は違うがそれはきっと彼女の両親どちらかが違う所から来たのだろう。


『今じゃ焼けた街なんて言われてるけどさ』

『ヤケタまち……焼けた妬けたヤケタやけた……』

『知ってるはずだよ、放火の疑いがあるんだっけね、御愁傷様。』

『……』

『まぁ、僕が何が言いたいかと言うとねぇ、その犯人知りたくない?』

『……いるの?……』


ようやく興味がでたのか、俯いていた少女は目を真っ赤にしてこちらを睨み付けた、少し間が空いてから本題に入る。

ただの推理だが彼女の言う事が正しいなら、この推理は確信に変わる、いくつか質問をする、先程から聞く髪の色に他に特徴はないか、そして何故そんなにも赤の他人へ執着をするのか。


『彼は……似てたノ…ワタシと……』


拙い言葉を並べ少女はそう言った、見た目も人と違う。

優しくしてくれた……随分と安直な言葉だった。

それでも、きっと少女には嬉しかったのだろう、毛先は白く黒と言うよりは薄めの色特徴らしき単語を述べ、壊れた人形のようにこちらを見つめた。

それだけで、十分だ。


『ふーん、それで?』

『もうないワ、全部ヨぜんぶ……』

『そっか、でも残念だね、君の王子様はただの犯罪者だ。』


そう、やはりその男は街を放火させた張本人だ。

確信と言えること黒髪なんて珍しいそんなもの他の国でしかあり得ない、少なくとも目撃者が間違いでなければかなり絞られる、もう一人のシスターはきっとないだろう。

あの指の火傷がそうだ、彼は火を恐れていた、それは本人もあまり気づいていないようだが見ていてわかった、シスターは極力火には近づいていなかった、何より教会には蝋燭がほとんどと言って良いほど置いてなどいなかったからだ。

だから、いつも薄明かりしかない、そして除外しあの時ふと見えたあの男性と目撃者の意見とぴったりと一致した、あんな特徴な色中々居るわけがない。

その青年が何を思っていたかは定かではないが少女の言葉にも嘘は見えない、本当に良い人物だったのだろう、だから僕はどうしてと聞きたくなった、だけど……もういい。

少女は固まったまま僕を見つめそして人らしく微笑んだ、その事にとっくにもう気づいていたかのように……

僕も喋るのも止めるとするか… これ以上言っても時間の無駄だ。


『……帰るとしようかな…聞きたいことは聞けたしね。』

『……貴方……ツメタイ人なのね……まぁいいわ。』


屁理屈を交え、互いに後味の悪い思いをしながら少女に背を向け扉を開ける、だけど出る前に一つ質問をする。

殺し損ねた人はいるかと、そう言うと少女はあの場から一人だけ花束を抱えた人が街から東門を先に向かったと口にした。

あの時花を血に染めていた人物の事だろう、あれだけ現場に血が流れていたのだ、それなりの深傷を負っているに違いない。

東門……次はあそこに向かうとしよう。


『じゃあね、君に会えてよかった。』


そう言って僕はその場から東の門へと向かった。



『……私は会えて嬉しくなかったわ……。』


何年経とうが私はずっと……このまま人形であり続ける……。

暗いこの部屋に一人きり……

きっと人間も人形も対して変わらないと思うの、だって形は皆一緒でしょ……。



人形の街 ーENDー



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