第4話 ハイドと百合の意味
ねぇ、
ねぇ、なんで質問をする。
困惑した顔で唖然と立ち尽くす、答えが聞きたい、周りが納得しても僕は納得しない、大人はまた議論する、僕を黙らせようとする。
だけど僕は黙らない、黙れない、大人たちが黙ってしまう。
ねぇ
ねぇ、どうして黙るの。
誰も答えてはくれない……
皆僕より……頭が悪い……いや僕が悪すぎるのかもしれない。
なんでも理解できない、答えが複数存在する人の意見は特にだ、別に激しい自己主張をしているわけではない。
ただ不思議なんだ、どうしてそんな答えに行き着くのか気になってしまうのだ、僕は安直な言葉しかいえない。
わかりきったような言葉しか知らない、だから面白い意見を聞くとどうしてそうなのか、気になって仕方がなかった。
皆僕を嫌った。
人は身勝手だ、貴方は気持ちがわからない、否定的すぎると匙を投げ見捨てた。
悲しかった、心はそうだった、僕だって人なのだから。
だから、人の意見が面白くて楽しくてただの好奇心だっただから聞きたかった知らないことが多いだからもっと知りたかった深くもっと深くその人を知りたかったから。
僕の家は警察、探偵、解剖者などなど変わった血筋だった、父は楽観的な人だった、母も特深く考えるしとではなかった、両親は悩むことも多いが僕を受け入れていた、母方の祖父は探偵をしていた、未だに現役の祖父は死ぬ前にとなんでも知りたがった僕に色んな事を教えてくれた。
否定ではなく質問として受け入れる祖父は優しかった。
現場にこっそりと付いていっては父に見つかり大目玉をくらった勿論祖父は気づいていたのに、横目で笑っていたそうだ。
僕の祖父は変わっている、頭がと言うのもそうだが明らかに可笑しいきっと誰が見ても父と対して年齢が変わらない容姿をしているからだ。
僕は訪ねる、何故そんなに若いのか本当に祖父と言える年齢なのか不思議だった髪は白く口調もお爺さんらしい古い喋り方確かに祖父とも言えるが……その容姿は未だに理解できない。
祖父事態も自分の姿が変わらぬ事で呪いでも受けたかと小馬鹿にしたように笑う。
だがいつも白い手袋に隠される手に触れると骨ばっている事がわかる、細い指先からは体の衰えが感じられる。
**
学校に行くのが億劫だ、面倒だ。
別に対して好き嫌いと単純に言葉つけている訳ではない皆に気味悪がられるのが嫌なだけ。
人にはそこがわからないと言われても、それかしか言えない、好きだけど面倒だと感じてしまうことはある、嫌いだからといって行かないわけにはいかない、自分だって勿論好きだだが嫌いとめんどくさいと吐いてしまう、もう自分の中でそう答えを見いだしカテゴリーが生まれいる。
自分で選んだ道なのだ、勿論嫌いな訳ではない、面倒だと嫌いと言葉を吐いても結果はやりとげている、そう言葉を返しても否定はされる、他人とわかりあえないものもあるだろう、側面しか見ずからかっているのだろう、僕はクラスの皆が苦手だった、質問ばかりする僕を頭の悪い変な子と認識しているようだ だから、その人の意見が強く結局僕の時間は同じ結果となる。
どうせこれを楽しく思っているのだろう、実にくだらない子供の戯言。
返す言葉すらも馬鹿らしい言い訳に聞こえてしまう。
近所の花屋さんのお姉さんが遊びにきた。
崖の近くに住む人たちだ、その人は僕の言葉を聞いても笑っていた祖父のように優しいのかそれともただ単純に変わった人なのか質問をするが答えはでなかった。
『ティアナ、今日もあの男の人の家に行くの?
次はどういう意味の花なの?なんで口で言わないの?
馬鹿なの?』
『もう、ちゃんとお姉ちゃんって呼びなさいっ!
ハイド君って本当口が悪いんだから……大人には…その』
そう言って口ごもる次第に声は小さくなり駄々をこねる子供のような仕草で叱られていても怖くなどない、それよりも彼女が怒る度に笑いが込み上げてくる。
馬鹿にしているわけではい、単純に嬉しいのだ、こうして接してくれる普通の子として見てくれる彼女が純粋に姉として好きだった。
言葉で伝えればいいのに、この人は不器用なのかいつもお手製の造花や本物の花束を自分の彼氏に贈っている。
こんな彼女に好かれる彼氏はきっと苦労が絶えぬだろう。
花言葉はどれも彼女らしい、恋に正直な乙女の言葉だった、まぁ子どもの僕からすれば鳥肌が立つほどになんだが背筋がざわつく。
『あれ?今日は花がない?飽きたの?別れたの?』
『ち・が・い・ま・すぅ!、明日の為に取っといてるの!』
明日……
あぁあのお兄さんの誕生日か、あまりにもノロケが尋常ではないので僕まで覚えてしまった。
花にまみれ物腰の柔らかい素敵な人だと彼女は言う、会ったことはないが為に嫌いか好きかは判断できない、だがティアナが惚れた人だきっと素敵なにのだろう。
今度僕も会ってみたい、ええっと確か名前は……『ジギルさん』と言ったかな、彼が僕を受け入れてくれるかは定かではないが……
**
天候が優れない日、祖父から教わった事の一つでもある、空がなんだが怪しかった、ティアナにも早く帰るか泊まるかを伝えておいたが彼女はちゃんと信じているだろうか……まぁこれだけ天気がいいのだ、もしかしたら僕の読み外してしまたったのだろう。
……その日の夜、天気は突然豪雨へと変わり美しい景色を次々と破壊する、窓越しに赤い傘が見えた気がした。
警察の父は現場へと向かう、皆で生存を確認するが父が向かった先は崖の下の向こう、村の人が集まりロープで父が下へと向かう。
そこには、目を覆いたくなるような現実だった、誰かが泣いた、悲しく悲鳴をあげる。
僕も叫びたかった、泣きたかった……だけど……できなかった。
母に抱き寄せられただ変わり果てた悲しい程に美しい姿の……
ティアナがそこにいた。
遺体として崖から発見された彼女はきっと僕の注意を覚えていなかったのだろうか、それても……いやいい、もっと強く彼氏の家に泊まれと豪語していればよかった。
それ以上に言葉を奪うには条件が揃ってしまっている。
ティアナの葬式後彼はどうなってしまったのだろうか……彼は悲しんでいるのだろうか、気になってしかたがなかった。
辛い思いをしているだろう、僕は瓦礫に埋まった地面を眺めながら彼女の遺体が保管される施設へ向かうが子どもは来てはいけないと追い返される、僕だって彼女の側にいたかった。
……あれから、何日か経った、以前のような美しい景色はなく潰された無惨な光景が広がる。
彼女がそろそろ埋葬されても良い頃だろう、そう大人たちが会話を続ける、これでちゃんとお別れができる。
彼女の好きな花を両手いっぱいに抱え歩く、でももうその施設には彼女の遺体は消えていた。
誰が彼女を……連れ去ってしまったのだろう。
彼氏は随分と前から行方が知れないと言う、誰が一体誰が彼女を
そのまま遺体は見つからず、空っぽの棺の中に花を敷き詰め誰もいない墓が建てられた。
僕が彼女を見つける、祖父について行き街の方に行きたい、両親も最初は反対したが祖父に説得されなんとか許して貰えた。
まだ街へ移り住んでから日が浅い頃、この街には変な噂があった、【若い女の血で染め上がった花には命が宿る。】そんな馬鹿馬鹿しい話一体誰が信じる。
箱に座り街の人達の会話を聞いていた、妙に花を抱えた幸薄そうな青年がいた。
髪はあちこち跳ね、酷い有り様だった、だけど大切そうに花を抱えまるで彼女のようだった。
声をかける、初めは驚いた顔で僕を見ていた、だけど言葉を返し目線は向こうの人達へと向けられる、その目はまるで何かを追い求めているような、悲しく見えた。
青年は微笑んで、僕の元から立ち去る、なんだが前に聞いた彼女の彼氏に当てはまる縁が多い青年だと思った、あくびをして祖父の所に帰ろうと箱から降りると足元に何かが落ちている。
あの青年が抱えていた花だ、まだこの先にいるだろうか、僕はただ花を届けようとした。
走って追いかけた、青年らしい人影が見える、よく見ると青年は何処かの少女と戯れている、声かけようとするが何か様子が可笑しかった。
風が強く吹き荒れ、思わず目を瞑る、持っていた花が舞い上がり掴もうとすると、突然目に飛び込んできたのはあの青年が少女を……無数の花びらが邪魔をしうまく見えないが確かに青年は少女を殺害している様子を目撃してしまう。
大きな声を出しただけど誰の耳にも届かない、風が邪魔をする、青年が潰れた花束とぐったりとした少女を持ち上げる、必死に追いかけるが草原に足を滑らせ後頭部を強打した。
つくづく自分の運の無さには感心するものだ、目を覚ました時街の子達が僕を見つけれくれた、なんだが青年の顔がぼやけて思い出される、ふと辺りを見渡してももうそこには誰もいない。
子ども達に連れられまた日を何度か越える、あれからもう何年経った、何日間続いた。
未だに少女は行方不明、彼女の遺体もないそれどころかあの少女が消えてから、若い少女から女性の姿が見えなくなっていった。
女性ばかり狙う犯人……きっとそれはあの青年だろう、だけどどうしても顔が思い出せない。
祖父に連れなれ最近増えた毒殺事件の心理や事件性を抗議する、まぁちょっとした雑談のようなショーが始まった。
祖父も僕も始まってから数分で飽きてしまった、まるでミュージカル俳優のように大袈裟に振る舞う人たちを眺め祖父は深くシルクハットを前に倒し僕に耳打ちをする。
『ハイド、あやつら小僧にお前の意見をぶつけれやれ』
『…いいの?僕ただの付き添い人だよ……』
『お前さんももう立派な探偵じゃ、何だって私の孫なのだからな。』
祖父の退屈しのぎに巻き込まれつつも僕は大人たちの前に立ち上がる、この話には耳を塞ぎたくなるような抜けている点が多すぎる祖父を見ているからわかる、こんな話最初っから無意味だ。
言いたいことを言い終わると周囲はざわつく、足が震えたまた余計な事をしてしまったような感覚に囚われる、間違っていなくてもそうであってもこの感覚にはまだ慣れない。
後ろで祖父が噎せながらも笑っている、性格の悪い老人だ、ふと目に入ってきた野次馬たちの中にファーのついたコートのフードを深く被り両手には持ちきれない程の黄色い水仙の花束を抱える人がいた。
妙に覚えがある、声をかけようとするがやけに背の高い黒髪の人が彼にぶつかりそのまま野次馬に下記消された。
仕方がないこの舞台から降りられないのだ、やりきれない思いを抱えたまま僕は震える足を前に突き出し大人たちにぶつけた。
『大人のくせになんで黙るの?』
そう言い残し祖父の隣に座りあくびが溢れた、舞台は終わる、祖父は未だに笑っている、深くため息をつけば祖父の帽子を被せられる、祖父は何もかもわかっているようだ。
情けない僕を家に連れ、今日のショーの延長擬きをしていた、コップに入った甘いスープを掻き回しながら祖父は言う。
案外犯人は僕らの近くにいるだろうと、冷静に祖父はいつも落ち着いている、感情的にならずもっとよく周りを見てみる事だとのべその一日をようやく僕は終える事ができた。
それからまた事件は繰り返す、今度は何処でもいるような家出少年たちが無惨な姿となって発見された、肉を無理矢理引き裂かれ綿や糸で縫われている、残酷な光景だ、もう見慣れてしまっているような感覚に僕はこの遺体を見てもなんの同情もできなかった、むしろ遺体より犯人の思考が気になって仕方がない。
誰かが不気味そうに僕に声をかける、無理もない何を探してる?
彼女について口を開くと血相変えた、実にアホらしい。
『はぁ、教会へ行こう。』
そう思い足を運ぶ。
百合の花が咲き乱れる、彼女の好きだった花だ、あの空っぽの墓に行っても意味がないここに来た方がよっぽどマシだった、少しは気が晴れるそんなに気がしたからだ、教会へ出向くのは彼女に会えるティアナと比べると似ても似つかない程に綺麗な人だ。
背はやたら高く声はかすれ気味で細身の彼女はつい最近毒殺事件でシスターが死んだばかりだった、そのシスターの代理をしている若い女性だった。
『おはよ、シスター』
彼女はティアナのようにこんな僕でも気味悪く思わずに居てくれる、どんなに質問をしようが笑って答える。
『おはようございます、可愛い探偵さん。』
『ハイドでいい……』
どうしても中々名前を呼んではくれない、だから僕はわざと彼女を呼び捨てにする、本名を言うとまるで彼女のような怒るからだ、まぁ、ティアナより何千倍もおしとやかで聖母マリアのような印象だった。
彼女はいつも厚手の服を着ている手もいつも黒い手袋を着用し一切肌が見えていなかった、声も掠れて低く聞こえる、本当に女性なのかちょっと疑った、そして、手袋つけているなら、なんとなく反抗も可能なのではないかと、彼女が男に疑惑が向くように仕向けているともしかしたらと言う一つがあったからだ。
なんでと答えるとシスターは恥じらいを見せながら、 答えてくれない。
『困りましたね……それはちょっ』
『答えくれるまで僕帰らないから…』
『でも、……』
シスターは少し悩んでから、手袋を外すそこには痛々しく赤く変色した指だった、孤児だったシスターは昔の火事で火傷をしてしまったそうだ、声も孤児だった頃に事故で負傷したようだ。
悲惨な過去のトラウマを思い出せてしまったかもしれない、シスターは無理して笑う。
『気持ち悪いでしょ……
醜い火傷は手だけでなく体のあちこちにあるのです。』
その手を僕は握る。
気持ち悪いなど思わない、それを言ってしまったら僕だって彼女異常に気持ち悪い存在だからだ。
シスターは手袋を着け直し、嬉しそうに微笑む、子ども扱いされつつも僕は真剣だった。
彼女は座ったまま花壇から色とりどりの百合から一本摘み取り僕に渡す、なんの意味があるかはわからない、黄色い百合はなんの意味がある、それを聞いてもシスターはさすがに花言葉は知らないようだ。
ただ百合は教会の聖母マリアの捧げられた花と言われているだからこんなに咲かせているようだ。
くだらない、会話をしてから、僕はまた事件の所へ向かう、彼女は微笑んだまま手を振る。
『じゃあね、カイン。』
『シスターとお呼びくださーい、探偵さーん!』
遠くから彼女の声が聞こえる、カイン……何処かで聞いたような名前だ、それと同様にもう1つ名があったような気がした。
……
その夜祖父に聞いてみた。
カインと言う名前が引っ掛かると答えは祖父は本棚から聖書を取り出す、こんな物まであったのか……
頁を捲りながら、祖父が答える。
【カイン】……それは人類最初の加害者であり嘘をついた人殺しを犯した人物。
そして、僕が思い出せなかった、もう1つの名は……
【アベル】……
人類最初の被害者であり実の兄であるカインに殺された人物。
と、聞かされ、シスターはあんなに若くして今まで悲惨な目にあってきたと言うのに悲しくも神様は彼女を弄ぶ、加害者の名前を背負って生きているなんてこんな悲劇はない。
カインとアベルそれは悲しくもわかり合うことのできない。
悲しい兄弟だ。
彼女に貰った百合の花が小さく揺れる、こんな酷い世界、加害者と被害者なぜ増える。
終わりのない、辛い現実だ。
この黄色い百合はなんという意味だろう、色によって意味が変わる花は人と同じくらい不思議で興味深い言葉だ。
****
彼はいつか僕が誰だかわかるだろう、こんな小細工はいつまでも続かない、だが幼い純粋な少年の心は美しい。
あれこそ我ら主がもたらした奇跡、あぁこの棺の中に彼という名の命を入れたい。
そして、神に我が主にこの命を捧げるのだ。
あぁ、アベル……愛しい弟よ、どうか君の手でこの僕を殺してくれ、神に愛された君しか僕は殺せない。
黄色い百合
それは、偽りを意味する。
天にも昇るような心地で君を待っているよ。
黒く神父の服に着替える、やはり僕にはこっちの方が良い、ガスマスクを装着し壊れかけたガスタンクを運ぶ、今日も貢ぎ物を用意しよう、さぁ沢山この百合の毒を吸い、我が主の元へと帰ってください。
ーENDー
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