第31話 海の家 ~序~
俺は、零と久しぶりにアレをして朝を迎えようとしている。しかしながら、俺の今の体制はどうしてこうなったと言わんばかりに特殊である。ベットでのアレを終えてそのまま抱きしめる形で寝たのは覚えているが、今はどうだろうか……なんと俺は今、零の抱き枕状態。頭をがっちりホールドされて、俺の顔は零のマショマロ的双丘に埋まっている。さて、どうしたものか……まぁ息はできるのだが……。
「あぁ~ん、涼さんに…愛してもらってる~、もっと、もっと奥に……」
あぁ~、だめだ。アレの後にありがちな零特有の寝言が出てる……。普段はきちんとしてるけど、旅先とかアレの後だと零ってなんか人格変わるんだよね。俺の鼻腔をくすぐる女の子特有の甘い匂いと少しの汗の匂い、そろそろ限度があるので、背中を少し強めに叩いて、零を起こそうとする。
「あれ…、もう朝ですか?どうして、涼さんが胸に?」
「うん、とりあえず離れて、そろそろ苦しいから。」
「え、あ、すみません。汗臭かったですよね?すぐにシャワー浴びて来ますので…。」
起きてくれたは良いが、事態を把握すると顔を赤くしてあたふたしている。下の下着は付けているのに、なぜか上は付けていないためにピンク色の可愛らしい点が双丘とともに丸見えであり、隠そうともしない。この場に俺しかいないことが唯一の救いだと思う。
「待って、とりあえず、上を付けて。丸見えだから…。」
「あ、すみません。ベットの下に落としたままで……。」
零は素早く、赤い下着を見つけて、胸につける。とは言っても、下着姿で男の前にいるという甘美な状況に変わりはないが……。
「涼さん、ほんとにすみません。私ったら、あの後から涼さんをずっと抱き寄せてたみたいで……、汗臭かったですよね?すみません。」
「いや、それ言ったら、俺もアレのあと何もしてないから…。俺もシャワー浴びないとな……。」
「では、一緒にどう……ですか?この部屋にもお風呂がありますから……。」
その申し出に断ることは出来ずに二人でガラス張りの風呂に入る。零の場合は堂々と隠さずに入るので、どうしても目のやり場に困る。そして、俺は零によって全身洗われ、湯舟ではこれでもかと密着してくる。
朝から凄いことだが、それも終わり、朝食会場へ向かい、葉山や雅を合流し料理を楽しみつつ、最終確認を行う。
今日も今日とて快晴、海日和に開店である。急遽、雅の用意した黒ベースにGrand Blueと金色の刺繍が胸部分と背中部分にあるTシャツを着て、みな持ち場についている。雅は客商売には向いてそうなので誰も文句は言わない。男性陣は、Tシャツとハーフパンツに黒のソムリエエプロン。零は、Tシャツにショートパンツに普通の青いエプロン姿だが、雅はTシャツの裾を上げて、へそを見せており、零とお揃いのショートパンツも開け放ち、下の白い水着を見せるスタイルであった。
「なぁ、零。雅だけ何か違うくないか?」
「夏の海と言ったらこうでしょと言ってました。」
「あー、なんといか雅らしいな。」
そんな会話する暇があるのも束の間で、予想をはるかに上回る客足が入り、てんてんこ舞いである。イケメンの店員、美女がいると噂になり、店先の宣伝もいらない程である。
「涼さん、すみません、手伝ってください。私だけじゃもう無理です。」
「おっけ―、今行く。」
「萩原君、零ちゃん、お好み焼き5個と焼きそば4人前!」
「おーい、レモネード3つとこっちも焼きそば5人前な。」
厨房の前から葉山と雅によるオーダーが告げられる。まったく誰だよ、売り上げなんて気にしないって繁盛しない空気出した奴はよ……。
「おう、分かった。じゃあ、零はレモネードを作ってくれ。んで、それが終わったら焼きそばとお好み焼きの仕上げをやってくれ。その一歩手前まで俺が作る。」
「はい!」
女性一人に作らせるにはかなり多い、だが零の味を俺は出すことはできないため、これが最善だろう。鉄板を無駄なく且つムラがないように気を付け、工程をスピーディーに行う。集中しろ……
………我を忘れるほどに集中し、見てみると、客足もめっきり減った。時計に目をやると午後3時を過ぎたあたり。まぁ、当然か……。
「涼さん…涼さん…」
「えっ?」
「あの…お客さんもいなくなりましたので休憩にしませんか?」
ここで、一気に我に返る。そこには、暑いためなのか少々、頬を赤くしている零の姿があった。
「あ、あ~そうだな。なんか一気に疲れてきた。」
「涼さんは、席で待っていてください。今、焼きそばとレモネードを作りますので……。」
「あ、そうか、じゃあそうさせてもらう。」
俺はそう言い残し、客で溢れかえっていたが今は誰もいない客席に座る。疲れは残っているが、なぜか零と厨房にいた記憶が残っていない。
今日、私はまた涼さんの凄い所を発見しました。仕込みである程度は用意していましたが、それを超える注文に尽きてしまいました。涼さんは注文を聞くと、凄まじい速度で包丁を操り、コテを操り、鉄板での焼き加減を完璧にして、本当に最後の味付けだけの部分で私に回してくださいました。これで、失敗する方がおかしいとまでに完璧な状態でした。しかも、たまに私に命令口調気味に指示をする際のカッコよさと言ったら、たまりません。今度は夜にもそういう口調で攻められてみたくなってしまいました。まぁ、今日の包丁さばきをこっそり動画に保存しましたので、また見ようと思います。カッコ良すぎ……。
「涼さん、出来ましたよ。さぁ、どうぞ。」
「おー、ありがとう。いただきます。」
そして、俺は零の作った焼きそばを食べる、うーーん最高に美味い。レモネードも……この酸味が疲れに効いてくる。
「あー、やっぱり一から零が作った方がうまいな。俺ももっと頑張るか……。」
「えー、そんなことは…。」
「んで、葉山と雅は?」
「二人はかなり疲れたみたいでホテルに戻りましたよ。」
「そっか、まぁそうだな。俺たちも戻るか、疲れたし…」
「はい!」
ホテルに戻り、疲れをいやすことにした。夕食会場で葉山や雅と合流すると、今日のことで色々と盛り上がった。だが、イマイチ俺にはピンとこない。そして、おかしなことに暇があると、零はずっと携帯で料理の動画…らしきものを見ていた。
「なぁ零、さっきから何見てるんだ?……あー早切りかぁ。」
「あ、すみません。カッコいいなぁって思ってたらハマってしまいまして……。(やばい、涼さんに見つかっちゃう…)」
零はやっぱり料理とかそういうのが出来る奴の方が良いよな……。
「はぁ~、俺も包丁の練習するか……。」
「えっ?、これ以上?」
「あっ?」
「い、いえなんでもないです。」
凄すぎるあまり某動画サイトにアップするともうすでに5万回再生されていました……。まぁ、私はもう100回ほど見ましたけど……。これが私の旦那様なんて……誰も思わないよね、惚れちゃう。あ、もう、惚れてましたーー、指輪も貰ってるし…こっそり涼って印字したのは内緒ですけどね♡。
「ねぇ、勇人、この動画ってさ、絶対萩原君じゃない?」
案外、近くにいるようだった。
「あー、この指輪はそうだな……。零って印字してんだから……。東雲さんには内緒らしいけど……」
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