第30話 グランブル
夏に海で彼女と遊ぶというなんとも甘美な思いを経験した者はそう多くは存在しないように思う。しかしながら、俺は、高校2年生にして、それを経験しようとしている。なんてことを思いながら、零に抱き着かれて幸せの悲鳴を上げている左腕を羨ましく思いながら、先ほどまでいた砂浜へと戻る。
まずは、パラソルを葉山とともに準備して、俺と葉山はその日陰で椅子に寝転んで、真っ先に海へと行き、水遊びをする零と雅を見物する。
「なぁ、涼、東雲さん、髪色変えたのか?」
「あぁ、ちょっと前に変えてたな。もとが美人だから似合うよなぁ~。」
「さっそく惚気か?」
「仕方がないだろ、事実なんだから。そっちはどうだよ、零とは違ってお洒落目な恰好の彼女がいるだろ。」
「あぁ、雅ね。雅はね、学校だとギャルみたいだけど、家だとホント可愛いんだよね。」
「他人の事言えないだろ、お前も……。にしても、いい眺めだな。」
「なんだ、雅に見とれてるのか?」
「だったらどうする?」
「全力でつぶしにいく。」
「おーそれは怖いな。大丈夫だよ、零しか見てないから。それに人の許嫁に手が出せるほどの甲斐性を持ってないんでな……。」
「冗談はさておき、これからどうする?明日から営業するんだろ?」
「あぁ、今はとりあえず、零の遊びに付き合って、夜に作戦会議だな。」
「オッケー。じゃあ、そろそろ行くか。俺の嫁がナンパされてるんでな。」
水遊びをしているであろう、零たちを見ると、雅が男数人に囲まれている。零は蚊帳の外であり、距離を取っている。あぁー、だよな。葉山が颯爽と海に繰り出し、男どもに割って入る。俺はその様子を眺めつつ、ゆっくりと歩き、零のもとへ行く。
「零、大丈夫?零は絡まれてない?」
「はい、ですけど雅さんが……。」
「あー、どうせ葉山がなんとかするでしょ。」
零を傍に引き寄せて、葉山と雅の様子を観察する。まぁ、呆気なくナンパ軍団は去っていった。
「もう、勇人来るの遅いんだけど…。」
「ごめん、涼と話してて……、でもなんで東雲さんは絡まれてないんだ?」
「そんなのは簡単だ……零にこれを付けさせたからな…。」
そして、俺は零の左手を葉山や雅に見せる。零はほのかに顔を赤くしている。いつもであれば、首にあるのだが、海という場所などを考慮して本来の位置である左手の薬指に指輪がある。そう、男除けである……まぁ、指輪を見て諦めてくれる程度のナンパであれば良いのだが……。
「あーー、零ちゃんいいなぁ~。指輪しててーー。」
「えへへ、涼さんに部屋で今日からは指につけろって言われて♡」
「あーー、私も欲しいなぁ、ね、勇人!」
「うぅ、今度にしような、うん」
苦しい顔をする葉山を俺と零は静かに観察する。さて、この二人はいったいどのような指輪にするのだろうか……。
その後、俺たちは色々と海や砂浜で遊び、日も暮れてきたため、ホテルに戻り、夕食を取り、また風呂に入るために一旦、男女別行動である。なんでも、スイート限定の大浴場があるそうで……。
~男湯~
「久しぶりに遊んだなぁ~」
「確かにな、サッカー部って休み少ないだろ。色々、練習試合とか雅から聞いてるぞ。」
「そうなんだよ…、まぁこれからは、サッカーの方はセーブして、親とかの手伝いしないとって思ってるんだよ……。」
「それはありがたいな。爺さんの事だから、色々と仕事が来るぞ。」
「だろうな。」
~女湯~
「零ちゃん、水着どれくらい持ってきた?」
「私は、一応10セットくらい持ってきました。」
「えー、そんなに、私4セットなのに……、どうかしたの?何、もしかして男漁りとか始めるの?」
「もう違いますよ。涼さんと、その……どこでも……、毎日違う水着だと……その襲ってくださらないかな~……って思いまして……」
「零ちゃん、可愛い。じゃあ、もしかして、今日この後、作戦会議終わったら、するの?」
「えーと、その……できれば……。」
俺たちの方が早く出たようなので、脱衣所を出てすぐの共有の大広間で待っていると、女性陣も出てきたために、作戦会議をするべく、なぜかの俺と零の部屋に向かう。部屋は広いため、向かい合わせのソファに座り、議論を始める。もちろん、俺と零、向かいのソファに葉山と雅という構図である、間にある机には、議事録のようなものを取るらしく、零が筆をとる。
「じゃあ、まずは店名からだな。零、一応メモしておいて。」
「はい、わかりました。」
「じゃあ、海の家でいいんじゃない?」
「いや、まんまだろ、それは。」
「えー、分かりやすくていいじゃん、萩原君のケチ。」
「おし、分かった。じゃあ、葉山は何かあるか?」
「うーん、グランドブルーってのは?」
「カッコいいですね。私、それに一票です。」
「オッケー、じゃあそれに決定だな。」
「えーー、ちょっと、萩原君、零ちゃんに甘くない?」
「こんなもんだよ、いつも、んで、今度はメニューだな。零が厨房だから、まぁ焼きそばとお好み焼き、んで飲みものってところだな。飲みものはあらかた用意したから。」
「萩原君、なんで零ちゃんが厨房なの?売り子とかサービス係の方が良くない?」
「誰、料理するんだよ?、零が作れば、他の店のなんて食えなくなるほどに美味いのが出来るだろ。」
「でも、その前に店に客呼ばないといけないじゃないか?、だとしたら、雅と東雲さんに宣伝してもらった方がいいじゃないか?」
うん、確かに雅や葉山の言いたいことはわかる。だが、俺の考えは違う。
「確かにそうだが、少し違う。葉山や雅には宣伝と給仕をやってもらう。んでだ、零には厨房に入ってもらって、たまに給仕してもらう。零が作れば、美味いのは間違いないし、こんな可愛い子が作ってくれていると知れれば、もっと客が入る。女性客には基本的に葉山が給仕、雅は男性客だな。」
「じゃあ、涼は何するんだ?」
「俺も基本は給仕だ、んで客の回転にもよるが、厨房のヘルプだな。あんまり、零に無理をさせるわけにもいかないからな。そんなわけでよろしく。」
「「オッケー」」
「零もそれでいいかな?」
「……はい。」
少し零の顔が赤いようだが、どうしたのだろうか。まぁ、いい。とりあえず、作戦会議は終了である。葉山と雅は帰ろうと席を立つ。だが、雅は俺に近づく。
「どうかしたか?」
「ちょっとね。今日ね、お風呂で見たんだけど、零ちゃん、すんごい下着だったよ。」
「……っ。」
俺の耳元で小声で何を言うかと思えば、そういう系統かよ。
「ちゃんと、抱いてあげた方がいいよ!」
不敵な笑みとともに葉山とともに部屋を後にした。二人の姿が見えなくなると、途端に隣にいた零が、俺をまたいで抱き着いてきた。
「ん、どうした零?」
「いえ、少し今日、海でナンパしてた人を思い出してしまって……あの人たちは去りましたけど、海の家だともっと野蛮な人が来るかもしれないと思うと怖くなってしまいまして……。」
「大丈夫だよ、俺がずっとついてるから。」
零の背中を優しくさすり、あやす。零が不安な感じで俺に抱き着いてくるのは珍しいな。
「指輪だけじゃなく、私が涼さんのモノだっていうのを示してほしいです。」
零は、いつの間にか、自分の手を俺の股間に忍ばせていた。俺もその意味が分かってしまった。
「そうか、じゃあ、ベットに行こうか。」
そして、俺は、雅からの助言もあるが、零をベットまで運び押し倒した。とても面積の少ない赤色の下着を脱がせ、その狭いところに俺の愚息を押しこむ。いつにも増して、煽情的な表情に俺は我を失った……。
「零ちゃん、いつもゴム持ってるけど、それってこのため?」
下着のみならず、零のポーチも脱衣所で見てしまった雅は思った。
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