第3話 生徒会 始動!
昔のことに浸る内に家の前に戻ってきたことに気が付いた。小一時間走って、現在、朝の6時4分。時期的にはかなり明るいし、家が少し高いところにあるので朝焼けが非常に綺麗である。少しの爽快感を持ち、家に入る。すると、小走りでエプロン姿の可愛らしい人がお出迎えをしに来た。
「お疲れ様です。もう少しで朝ごはんが出来ますので、あっ、一応お風呂の準備もしています。」
俺はどこの貴族だよと思うことが幾度となくあったが、それに慣れてしまう自分も怖いものである。
「ありがとう、じゃあ、そうしようかな。相変わらず気が利いているね。」
と零の頭を撫でる。イケメンがやると効果絶大なのは知っているし、自分はフツメンと自負しているが、ついやってしまった。
「そんなことは………。」
と言葉とは反対にとても喜んでいるようである。
そして、朝風呂に向かう。もう慣れてしまったが、風呂もまぁデカい。そこらの温泉施設より上をいっている、その上、俺好みの石タイルで和のテイスト。うーん、たまらない。
「あぁ~、これはやっぱりいいわ~。ずっと入っていられる。」
なんとも年齢不相応な事を口にするのも何度目か。朝風呂には否定的な意見もあるが、今はその一切を無視して堪能することを優先する。すると、零も入ってきた。
「朝ごはんの準備が出来ましたので、私も来てしまいました。よろしいでしょうか?」
同棲を始めて少しした頃から一緒に入ると聞かなくなってしまい、「いや、それはまずい」と言うと爺さんを召喚、涙目で「私とお風呂は不快なんですか?」とか色々あった。結果、一緒に入るようになった(まぁ、その後、理性が崩壊して色々とヤることをヤッてしまったが………だって、タオルとか持たずに来るんだもん)。二人で入ってもスペースはかなり余裕がある。しかし、湯舟ではずっとくっついたままであるのは、察しが付く?だろう。一応、「よろしいでしょうか?」と聞くが、俺のコメントの前に体などを早々に洗って、湯舟に入り俺にくっついてくる。
「朝に入ってくるのは珍しいね、どうかした?」
夜に入ることが主なので気にかかった。まぁ、朝で一糸まとわぬ姿の零を見て、俺の愚息も正直になってしまい、そちらの心配もあるが。
「今日からまた学校ですし、学年も変わるので色々と………。」
「色々と?」
「浮気などされない様に私の匂いなどをつけておこうかと………。」
赤くなりながら言わないでね。浮気とかしないし、まずできないから。
「大丈夫だよ、んな事しなし、第一モテないから。」
「いえ、そんな事はありません。私のクラスでも涼さんの事を話しているのがいましたし、お爺ちゃんと会食などした時に、好意的な視線を送る方もいました。あと~~。」
かなり続いた。俺がそろそろ出ようとすると、一度洗ったのに零から全身をまた一から洗われた(洗い方は想像におまかせします、理性がまた崩壊するところでした)。
朝ごはんもどこの料亭だよという物で美味しい。白米とみそ汁、焼鮭、ひじきの煮物などと一般的なものだが、なんでこんなに美味しいの、魔法使いなの。これは慣れることがない。
「さすが、うまいね。」
「涼さんのために作りましたので。」
この会話にも慣れることができないだろう。当初は俺を様としていたが、なんか心地良くなく、零は呼び捨てにはできないという事で「さん」とした。様と呼べない、旦那様感が消えると言う日が続いたが、「さん」の方がお嫁さんって感じするよねと言うと即座に「さん」で呼ぶようになった………チョロいな。
そんな食事を終えて、二階の自室へ着替えのために戻る。寝室は共通で、その他に俺の書斎(勉強用など)と零の部屋がある。まぁ、零は寝室と俺の書斎によくいるんだけど、着替えの時は自分の部屋にいくらしい。制服とか言いつつほぼスーツじゃね(まぁ、胸に校章ってのが唯一の違いかな)という服を着る。ネクタイとかにもなれたものだ。
「そろそろ、出るけど。」
現在7時20分、まぁ始業まではかなりあるし、学校も電車ですぐだからそんなに気にする必要もないが。零の部屋の前へと行き、声をかけた。
「あ、はい今行きます。」
と零が出てきた。女子の制服はネイビー系で襟元には赤いリボンと可愛らしい。スカートも短めであり、うーん絶景である。何度見ても見惚れてしまう。
そして、家を出る。学生バックのない腕は彼女の腕に包まれて幸せの悲鳴を上げながら駅や電車をこなして学校に着いた。そこには、葉山と小山内の姿もあり、ほぼ同時と言えよう。
「やぁ、朝からすごいね。もう新婚さんだろ、それ?」
「一年くらいしたから、新婚とは少し違うだろ、葉山。」
「あ~、零ちゃんおはよう。同じクラスだといいね。」
「おはようございます。雅さん」
と、互いにあいさつをした。それからは俺は葉山と、零は雅と会話しながら校門をくぐる。他に生徒がいるが、なぜかこちらに視線が集まっていた。校庭には、でかでかと白いボードにクラス表があった。俺と葉山がSクラス、零と雅がAクラスであった。この学校の序列制度でSクラスというがあり、スポーツや学力、人格などから選抜された5人がそれにあたる。教室はAクラスと同じだが、授業などとは関係なく自由に過ごして良く、付属の図書館やカフェテラスなど施設では専用スペースなどがある。まぁ、つまり全員同じである。
「Sなら遊び放題だな、ラッキー」
と俺が言うと、零は悲しい顔をした。
「私と授業を受けて頂けないのですか?せっかく同じ教室でしたのに………。」
「萩原君が零ちゃん泣かせてる~。零ちゃん、これ絶対他に女いるよ。Sだと他のBからHにも授業に入れるから品定めに行く気だよ~~(ニヤニヤ)。」
「こんな会長のもとで生徒会とは五十六氏には安く見られたものだ。自分が情けない(ニヤニヤ)。」
こいつら、揃いも揃って俺をいじめたいらしい。
「いや、違うからね。ちゃんとAにいるからね、品定めとかしないから。」
「本当ですか?」
「約束するから。」
となぜか指切りが始まり、零も落ち着いた。
「零ちゃん、甘いなぁ。もっと縛っておかないと………」
「これじゃ、書記が一番の権力者だね。」
「お前ら、言いたい放題だな。ほら、そこ零に変な入れ知恵しない。」
「あ、まずいまずい。」
とこれまた注目を集めていた。
「一応、始業式あるからな。あとでアリーナだか体育館だかに集合。始業式の後は片づけと生徒会室で方針決めるから。」
といい、Aクラスの教室へ向かった。300人以上いるが、窮屈とは無縁の校舎である。S以外は序列というのがないため、カーストは存在しない。しかしながら、Aクラスのメンバーを見ると驚いた。みんな、親が何らかの業界の著名人やら、部活でインターハイとか行った人間ばかりであった。完璧に俺が浮いている。
クラス担任は、一年の頃と同じく佐々木先生だった。若い女性の先生でよく話す合コン話や自虐ネタで人気を博している。黒髪のロングでスタイルもよく、見た目普通に美人なのに………もったいない。
「担任の佐々木友恵(ささき ともえ)です。一年間よろしくね。また先生合コンでお持ち帰りされなかったので、ちょっと欲求不満気味です。なんで、始業式終わったらまた別の合コンに行くから、みんなテキパキしてね。」
こういう先生、俺は心底大好きである。まぁ、みんなは少し哀れんだ視線を送っているのは見なかったことにしよう。そして、テンプレ的な自己紹介などを済み、始業式も無事終えた。あいさつは適当に嘘交えておいた。爺さんがえらく真面目な事言ってたのが印象的だったな、文武両道とか色々言ってたな。
始業式を終え、現在午後2時12分。生徒会室に集合した。生徒会室は今年度からということで最近完成したばかりで新しい上に、無駄に豪華である。会社のオフィスを思わせる作りに、重厚感漂う机に、専用のロッカー、透明ボードなどなどキリがない。
「あの爺さん、生徒会室にこんなに金かけてどうすんだよ。」
と俺は本音をこぼした。
「お爺ちゃんの趣味らしいですよ。最近読んだマンガの生徒会室を真似したそうです。」
「あ、さいですか。」
なんというか金持ちのすることはわからない、一応感謝はするが………。
「で、方針って具体的には何するの?、この学校の生徒に方針とか言ってもあんまり響かないと思うけど。」
「まぁ、それは思う。これから、爺さんが来るらしいからそこでわかるだろうよ。」
「五十六氏がここに!、面白くなりそうだ。」
「いや、絶対めんどい事持ってくるから。」
葉山はやる気があるが、俺は始業式終わりに生徒会室に行くとあの爺さんに言われてから少し不安であった。ビルの一件以降、俺を買っているのかなんなのか色々と学校以外で無理難題をもってくる。零のことや、東雲グループの内部調査や経営などなど………俺、まだ高校生だからね。
「お爺ちゃんは、涼さんの事をいつもすごく褒めていますよ。その証拠に、涼さんの事を「お主」と呼んでいますし、グループ内だとずっと「あの男」と言っているらしいですよ。」
「零ちゃん、あの男って呼び方は褒められている内に入らないと思うけど?」
「確かに、雅の意見には同意だな。」
「お爺ちゃんが本当に認めた人にしか言わないんですよ。小さいときから見てますけどそう呼ばれている人はめったにいません。」
「それは、どうも。」
褒められている気がしないのはなぜだろう。すると、ドアが開いて本人の登場である。
「みな集まっておるの、おぉ~勇人君久しいの~雅殿も」
「ご無沙汰しております、父や祖父がお世話になっております。」
「私も両親がお世話になっております。新たなシステム導入の際には色々と助けていただきありがとうございました。」
何回か見るけどこの光景はやはりすごい。今、改めて思う俺以外は住む世界が違うらしいと。雅殿ってなんだよ………。
そして、会議を行うということでそれ用の4人掛けのデスクに座った。俺の隣は零、対面は葉山、斜め向かいが雅という位置取りである。爺さんはというと、透明ボードの前に立ち、話し始めた。
「お主らには、一週間交代で部活に参加してもらう。」
「はっ?」
「お爺ちゃん、どういうことですか?」
波乱の幕開けである。
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