第10話 閑話 霧の魔人
「また被害者が出たのか…」
警備兵からの報告を受けた役員はつぶやく。彼からの報告に寄ると今朝もまた女性が1人意識不明で倒れていたらしい。
「被害者から聴取はしたのか?」
「それが…気が付いたら倒れていたらしく」
またこれだ。警備小隊長は口惜しいと言いたげな苦い顔をする。これまで20数件の被害報告があるがその全てが正体不明なのだ。まるで雲をつかむように犯人の情報が欠片も得られない。
謎の凶悪犯。王都警備隊はこの犯人の事を暫定的に魔人の犯行とし市民に対して広く情報募集を行い、それに伴い警備の強化を行っている。が、しかしその成果は芳しくない。
被害者に共通点はなく、年齢・性別を問わずあらゆる人種の市民が被害に合っている。血を抜かれただけの被害者から殺された物まで様々なのだ。王都住民は皆この謎の事件に怯えている。
ではなぜ同一犯による犯行か分かるのか。それはその被害の際に必ず霧が生じるからなのだ。霧が出ている場所に近寄ったらそこには死体があっただなんて報告もある。被害者も犯人の情報は分からないが霧がでたという事だけは何故か覚えているのだ。
その手口から、かの犯人には『霧の魔人』という異名がつけられた。
「懸賞金の額を引き上げるべきかもしれん…賞金狩り達の動きはどうだ?」
「例の騒動がありましたから…」
「やはりあの影響は大きいか」
「彼らを頼るのは少し難しいと思われます」
「ギルドからの報告はどうなっている?」
「已然として有用な情報は…」
「そうか…」
既にギルド職員との会談により賞金首として謎の凶悪犯の逮捕を依頼している。有用な情報であれば情報提供だけでも一部の懸賞金が渡される事にもなっている。しかし未だにろくな報告がされていないらしい。
霧の如く現れ人々を襲う脅威は確かに恐ろしい。だがその脅威に屈してはならない。この王都に魔王群の侵攻を許しては行けないのだから。
その為にも魔人は排斥しなければならない。
堅い決意を抱き警備兵は更なる防備を強化する
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