8 しろくま杯三角ベース
今北極では三角ベースが流行っています。今日は「北極」対「南極」の一戦、しろくま杯が行われます。
三角ベースとは、ベースの形が△なのではなく、まあ、野球でいうところの2塁をなくしたようなもので、3つの塁を結んだ形が▽なのですね。
色々ローカルルールがありますが、北極ルールでは、体のどこで打ってもいいことになっています。
場内アナウンスおよび実況はわたくしペンギンでお送りします。なにせ北極と南極、両極のメンバーを知ってるのはわたくしだけなので。こほん。
南極からはペンギンが続々と詰めかけました。9羽のペンギンたちです。
オーダーは、1番バッター、アデリー。怒りっぽく攻撃的です。ちょいと目つきが悪く、白目をむくのがコワイです。
2番マゼランも、けんかっぱやい攻撃型です。3番イワトビもガンつけてきます。
ここまでのペンギンは強面ばかりですね。いやだ、ペンギンは愛くるしいイメージなんですからお願いしますよ。
4番は王冠をかぶったキング。そして5番は黄色の飾り花をのせたロイヤル。
6番白いヘアバンドのジェンツーは泳ぎは速いのですが、走るのはどうでしょう。
7番黒いあごひもつき帽子のヒゲ。8番寒がりのフンボルト。9番はいつもは森に住んでいる絶滅危惧種キガシラ。以上です。
ちなみに僕はエンペラーペンギンなんです。みんなに好かれたくて、ついいつも愛想よくうなずいてしまうので、陰では「あいつは皇帝じゃなくて肯定ペンギンだな」などと言われています。
よくキングとどっちがエライかで争うのですが、大体そこにロイヤルがやってきて「ふっ、こどものけんかかい?」と笑われてしまうので、決着がつきません。
そもそも「エライ」とは何を定義しているのか。いちばん寒さに強いことじゃないでしょうか。それなら、やっぱり僕です。イエス!(自己肯定)
あ、余計なことを解説しているうちに、試合がはじまるようです。
アンパイアのジャコウウシ氏の「プレイボール!」の声が響き渡りました。
*
使用するボールは、あざらしのあっくんお手製のまんまる氷です。(ハイボール用の2倍サイズ)
今日はしろくまマスター&しろくま事務員さんたちが祝勝会の準備(どっちが勝っても宴会)でBarにいるので、あっくんはほっとした様子です。ベンチでしっぽぱたぱたするなど、のんびり応援しています。
しろたしろみはいても大丈夫なんだ、あっくん。
さあ、先攻は北極チーム。
1回の表、1番バッターの一角さんは、自前の鼻先ドリルで素早いセーフティバントを打ちました。お、速い! セーフ!
セイウチ監督が、2番のラッコ君に何かサインを出しました。ラッコ君、上手に貝でバントを打って、走者を2塁に送りました。パチパチパチ。
3番は大型バッタートナカイさん。初球をツノでカキーンと打って、なんと2ランホームラン。北極がいきなり2点を先制しました。ピッチャーのキングペンギンは悔しそうです。
そのあと、しろたとしろみが空振り三振で3アウト。おこちゃま相手にキング本気の投球です。はぁはぁ白い息が上がっています。
*
1回の裏、南極チームの攻撃ですが、北極のピッチャー、パフィンの投球に手も足も翼も出ません。くるくると目を回しています。なんと強面ペンギン三者凡退!
ひよこ隊のパフィン、小さな巨人か? あなどれません!
2回の表、ホッキョクウサギが塁に出ました。そして次のホッキョクギツネがヒットを打ちました!
おっと? ホッキョクギツネが1塁走者のホッキョクウサギに追いつきそうだ。いや、ホッキョクギツネはスピードを落としてホッキョクウサギに……。って、ああもういちいち面倒ー。ホッキョクいらなくない? ギツネとウサギでいいよね?
はっ、取り乱しました。失礼いたしました。
結局、ギツネがウサギを追い抜いてしまい、アウトになりました。やれやれ。
何が難しいって、ベースにタッチすることがね、地上と氷上では圧倒的に違うんです。折角ヒットを打っても、ベースをさわれずに滑っていってしまったり、今のようにベースにいる走者を抜かしてしまったり。どんまい!
2回の裏、さすがのキングがヒットで出ました。次のロイヤルもクリーンヒット。これは同点に追いつけるか。ピッチャーパフィン、やはりひよこなので体力が持たないのか。
よし、ジェンツー打ちました。ああ、しかし内野ゴロ。ランナー動けません。
しかもジェンツー、遅い遅い。両足揃えてジャンプしてしまってますね。
次のヒゲもゴロで残念2アウト。
そしてこの時、驚きの展開が! なんと2塁を守っているハジロウミバトが隠し玉だぁー。ポケットにそっと入れていたらしい!
(隠し玉を知らない読者さんに解説しますと、さっきのゴロを取って、本来はピッチャーに返す玉を、ハジロウミバトちゃんがこっそり持っていて、塁を離れたランナー、キングにタッチしたんです。)
これで3アウト! なんという策士のやんちゃバト。
結局、これが相当ショックだったらしく、3回裏まで試合をして、ペンギンズの体力が限界を迎え「コールドゲーム」となりました。極寒だけに。
みなさん、お疲れさまでした。
さあ、「ヒヤシンス」に行って、打ち上げをしましょう。確か今日はみんなのすきな「氷おでん」ですよ!
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