使わせていただいた絵:Lazy afternoon with Toki and Ulf / snattiさん

夏、今日も痛い程に陽がジリジリと地上を照らしている。


皆自宅で引きこもりになっているか、外出している人は涼しい場所を探してハンカチを額に当てながら歩き回っているようだった。



街から少し外れた場所にあるこの家でも、人間はエアコンの効いた車で涼しい観光地へ向かっていった。


家に残された犬はしばらく散歩にすら連れて行ってもらっていなかった。



Ulf「僕も外に行きたいなぁ」



犬は尾を下げながら玄関前をぐるぐると歩いている。


この家にはまだ取り残された動物がいたが、彼は犬とは正反対な楽天主義であった。



Ulf「そうだ、彼はどこだろう」



犬はいつも彼に頼る。


自分の臆病さ、自立心の無さは自覚しているが、それでも誰かに頼らずには生きてゆけなくなっていた。


彼は犬のように居場所が決まっていない。いつもいつも違う場所でくつろいでいる。


家をしばらく探し回って、見つからない。と不安になりながら窓を覗くと、ペンギンが浮き輪を使って自宅プールに浮かんでいた。



ペンギンの彼は飼い主に与えられた赤いハットをいつも身につけている。彼自身気に入っているようだし、何よりも考えが読めない飄々とした彼にはすごく似合っているのだった。


プールにすらそのハットを持ち込み、ぷかぷかと浮きながら陽を浴びているようだ。


犬は少しだけ驚かそうとサメの背びれのようなおもちゃを、背中に付けてプールに向かった。



水に足をかけた時に静かにぽちゃっと音が響いたが、彼は全く気付いていない様子だった。


ぽちゃぽちゃと音を立てながら彼の元へ向かうがそれでも気付かない。彼は寝てしまっているのかもしれなかった。


背中のおもちゃに気付いて驚いてほしかったが仕方ないと思い、犬は彼が乗っている浮き輪へ前足をかけた。


浮き輪が傾き、彼はようやく目を開けて、重心を崩しながら・・・

Toki「うわぁっ、ど、どうしたのUlfくん」



彼は片手でハットを支えながら、何とか体勢を整えて見せた。



Ulf「ご主人出て行っちゃったよ~」


Toki「そりゃ休日だもの。人間は普段は仕事で忙しいからね、気晴らしにどこか遊びになるもんなのさ」


Ulf「でも僕たちもうずっと散歩できてないんだよ・・・」


Toki「そうだね。でもこうやってのんびり陽に当たってるだけで心地良いものだよ。


   君なんか水だけじゃなく陽まで浴びて最高じゃないか?」


Ulf「違うんだよ~。今は散歩がしたいんだよ~・・・。もっと広い所で思いっきり走り回りたいなぁ」



Ulfがくぅーんと喉から寂しい声を出す。すると、見かねたのか彼は陽を仰いでいた体勢を変え、うつ伏せになりながら浮き輪を泳がせ始めた。



Toki「じゃあそんな君に良い案があるよ。ついてきて!」



彼はプールから上がると浮き輪をおもちゃ置き場に放り投げ、ペタペタと家の中へと歩いて行った。


犬は不思議に思いながら、彼についていくようにプールを上がった。犬だけ濡れていたため全身を振り、近くにかけてあるタオルに体を擦りつけた。



彼について行くとそこはキッチンであった。


彼はキッチンに乗り、両手を腰に当て誇らしげにしている。



Toki「知ってたかな?ここの窓、いっつも開いてるんだよ」



そう言うと彼は腰に当てていた手を窓に当て、手を擦るように窓を開けた。



Ulf「えぇっ!?良い案ってそういうこと!?」


Toki「大丈夫、無事に戻れば問題ないから!帰宅ルートも用意してる。ほらさっさと行くよ」


Ulf「ちょ、ちょっと待ってよ!」



彼はそういうとこちらを一切振り返らず、窓から外へと身を投げた。


犬は焦りながらその場をクルクルと回っていた。が、彼が無事かどうか気になり、更に外への興味を抑えきれずキッチンへ飛び乗り、勢いで窓から飛び出した。


飛び出す前、犬の尾は散歩直前のように歓喜を隠しきれていなかった。

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絵からストーリーを想像して文章にしていく 縁側紅茶 @ERG_Engawa

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