使わせていただいた絵:沖田オルタ / helgaさん

女剣士は紅い鞘を胸まで持ち上げ、天へ向け刀を鞘から抜き出した。


鞘からヌルリと抜かれる刀身は、鞘や女の紅い衣装に照らされ怪しく紅潮していた。


見とれてしまっているこちらのことなど眼中にない様子で女は構えに入る。


長い白髪が逆立ち、揺れ、体を半身にした状態で刀を後方に下げ、刀身に左手が添えられている。


一切外すことを考えてない一撃必殺の突きの構えだった。


刀の切っ先が紅く煌めき、今にも僕の喉元を貫こうとしている。


なのに僕は、これから自分に起こる災難から思考だけでも逃げるように、必死に見とれてしまっていた。



女「ここで私と出くわしてしまった、己の不運を呪うがいい」



女の体に僅かな霊力を感じた。恐らく数秒と経たずに、目で追うことのできぬ速度の突きで一閃されることだろう。


だがここに死にに来たのではないのだ。更に為す術がないわけではなかった。



僕「・・・」



女がここにいることは知っていた。何より、女がここにいると知っていたからこそこの死地へ赴いたのだ。


数度戦っている姿を見たことがある程度だったが、この女がどれほどの強敵かは戦うまでもなく理解できた。


だからこそ対策はもう完璧にできている。


女から見て左後方にいる男と目配せをする。女には丸わかりなくらい男が持っているライフルのスコープの反射光は目立っていたが、今の僕達にそれは全く関係のないことだった。



僕「くっ・・・」



これから起こることを想像するととても足が動きそうになかったが、先の道へ行くために覚悟を決める。



一度息を飲み、死ぬ瞬間を想像して心臓が跳ねた。


その瞬間、勝手に足が動き出していた。


一歩踏み込む。男はライフルを撃たない。女は必中の間合いを待っている。


二歩踏み込んだ。撃たない。撃たれない。対策を実行する前に喉元を貫かれているイメージが湧き、心臓が止まった。


三歩・・・金属が破裂したような重低音が響いた。と同時に踏み込んだ右足が激痛と共に後方へ弾き飛ばされた。


重心を崩し、頭から地面へ倒れる形になった時、後頭部に轟という異音が響き、空気が焼けている音が聞こえた。



僕「ぐぅぅっ・・・!」



瞬間、地面へ手を付き体を跳ね上がらせる。


空中で反転して女に向かい合う。


女は突きの動作からまだ戻せておらず、僕を目を見開きながら凝視し、恐怖に染まりきった表情をしていた。


僕は背筋に微量の電気が走った気がした。思わず頬が上がりニヤけていた。



女の頭を両手で掴み、思い切り体重をかけながらのしかかった。


思い切り後頭部から倒れ込み、女は喉に血を絡めたような不快な呻き声を上げた。


女が体制を整える前に、女の頭を夢中で両手で潰そうとする。



女「ぎぃぃぃ!!がああぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」



目玉が飛び出し、あらゆる穴から血が漏れ出し、叫び声も血で溺れているかのようだった。


バチンという高音が響き渡ったと同時に女の体が思い切り持ち上がった。


女の頭は消え失せ、血が花火のように弾けていた。

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