中心

ピピピピッピピピピッ


「ん~、ねむ……」


朝、携帯のアラームの音で目を覚ます。

まだ眠たくて閉じそうになる目を擦り、

重たい体を起こして、ゆっくりと動き出す。

カーテンを開けると、いきなり入ってくる強い光に思わず目を閉じる。


少しすると光に目がなれてくる。

学校めんどくさいな、と思いながらため息をひとつついてリビングへ向かう。


「おはよう。」


リビングへ行くと母がいた。

朝ごはんをテーブルへ並べて、笑顔で私に声をかける。それに私も「おはよう」と返す。


「さっさと顔洗って食べちゃいなさい。」


「はーい」


気だるげに返事を返し、洗面所へ。

冷たい水で顔を洗うと一気に目が覚めた。

制服に着替えて、髪を軽く解かしてから結う。


軽めの朝ごはんをお母さんと食べてから、お父さんに挨拶。仏壇の前で手を合わせて、今日も一日頑張るねと声をかけてから

「おはよう」と「いってきます」の挨拶をする。

写真の中で笑うお父さんに私も笑いかけて、ソファーに置いてあったカバンを引っ掴み、お母さんにも「いってきます」を言い家を出る。


玄関の扉を開けると、思っていたよりも暑い気温とジリジリ照りつける太陽に、思わず顔の前に手をかざし目を細める。


今日体育外だっけ?やだなー。日焼け止めちゃんと塗らないと日に焼けるー。

とか思いながら、足を学校へと進める。



朝起きて、顔を洗い、ご飯を食べて、お父さんに挨拶して、家を出る。


今日もまた、いつもと変わらない1日が始まる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ガヤガヤ


「おはよー」


人が大分来て騒がしい教室の扉を開ける。

すると、仲のいい女子、男子がバラバラと挨拶を返しながら、数名こちらに来て話しをする。


自分で言うのもなんだが、クラスでは中心的な位置にいる。特になにかしたりしている訳ではないけど、周りからは性格が良く明るくノリが良い子という風に思われているらしい。らしいというのは、実際にどう思っているのかを聞いたことがないから。

勿論、自分ではそんな風に思わないし、クラスの中心になるのはそんな感じの子なのかなというイメージだ。


やがて、チャイムがなりみんな席につく。

先生が教室に入ってきて、朝のHRが始まる。

窓の向こうに広がる青い空を、外を、ぼーっと眺める。


中心、その位置にいるといろいろ厄介なこともある。まず、悩みを相談されることがある。聞くだけならいいけども、私の意見を求められると困ってしまう。特に、恋愛の話については。生まれてこの方1度も人を好きになったことがない私に恋愛相談をされても何もアドバイスができない。

周りは私に1度も彼氏が出来たことがないなど思っていないみたいだ。これは実際に聞いた話。


親友が「みんな噂してるよ」と言ってきた時には心の底から驚いた。何をどう見てそんな噂が立ったのか。男子と登下校をしたことも、二人きりで何かしていたなんてことも私の記憶には無い。親友に聞いても肩をすくめて「わからない」と言うし、探ろうとも思わないので未だに理由は分からないままだ。


それはいいとして、私に恋愛経験がないことを知らないクラスメートは相談してくる。

まさかこの歳で「恋愛経験ないんだよねー」なんて恥ずかしくて言えず、ベタな王道の答えを返し続けている。それでも、真剣に聞き納得して「ありがとう」なんて行って去っていく姿を見ると少し申し訳なくなる。



いつの間にかHRが終わり、皆が授業の準備を始める。私も準備のために教科書を取り出す。準備が終わると、また外を見てぼーっとする。


今日も、なにも変わったことは起こらない。




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